【数字で見る】トロントの治安が 悪くなっている?!増える犯罪何が、どうして?|特集「トロント調査隊がいく!」

【数字で見る】トロントの治安が 悪くなっている?!増える犯罪何が、どうして?|特集「トロント調査隊がいく!」

4. 地域差の出る犯罪発生率 ダウンタウンはやはり多発地域

①エリアごとの暴行率(2017〜2021)

出典:Toronto Police Service

①暴行率(人口10万人あたり)ランキング

*件数は1年平均

トロントでどの地域が最も犯罪の起こりやすい地域なのか。まず2017~2021年の各エリアでの暴行率(人口10万人あたり)を表したマップで目立つのは、やはりダウンタウンの南側。CNタワーやケンジントンマーケット、トロント大学があるため人通りが多く、暴行事件が際立って多くても不思議ではない。他エリアより年間100件以上も事件が多発している。ダウンタウンほどではないが少し気になるのは、ヴォーン・メトロポリタン・センター駅以南。年間平均1000件ほど暴行事件が起こり、ダウンタウンに次ぐ治安の悪さと言える。このエリアには治安の悪さで有名な「ジェーン&フィンチ」があるので、納得はいく。

②2022年比のエリアごとの犯罪発生数(2023)

出典:Toronto Police Service

犯罪率上昇ランキング

次に2022年と比べて治安が悪化した地域を見てみよう。興味深いのは、暴行率の高いケンジントンマーケット周辺は約40%も犯罪率が上がっているのに対し、すぐ横のリトルイタリーから南は、昨年より50%犯罪率が減少した。ダウンタウンだからといって必ずしも犯罪率が高いというわけでもない。昨年比で最も犯罪率が上昇したのはロイヤルヨーク駅のあるキングスウェイエリア。昨年より290%犯罪率が上昇。そこと接するプリンセス・ローズソーンも240%上昇とすさまじく、どちらも自動車窃盗が増えたためと考えられる。東の方では、スカボロー・ブラフスパークのあるクリフクレストエリアが263%の上昇、さらに北にあるアジンコートエリアでは230%も上昇した。クリフクレストでは暴行が、アジンコートでは自動車窃盗が増えた。

5. ティーンたちも加害者側に 若年化は大問題

出典:Toronto Police Service

加害者の若年層化も大きな問題だ。まずは昨年起きた衝撃的な事件を2つ紹介する。1つは12月17日にダウンタウンで起きた殺人事件だ。59歳の男性が繰り返し刺され殺害されたのだが、なんと逮捕されたのは8人の少女たち。13歳が3人、14歳が3人、16歳が2人という少女たちはSNSで知り合ったといい、被害者と口論の末に暴行を加えて刺したとされる。もう1つは2月14日にスカボローの高校内で起きた銃撃事件。この事件で18歳の少年が死亡したが、容疑者は14歳の少年だった。月曜日の下校時間という、誰も危険が迫っているとは思わなかった時間帯に起きた事件だった。2つめの事例のように、教育機関が犯行現場になっている事件が2023年には289件ある(3月13日現在、トロント警察データより)。2019年まで増加傾向にあったが教育機関での事件は、パンデミック中に大幅に減少。2022年に再び大きく増加し、今年はパンデミック前と同水準に戻った。

パンデミックによる孤立やSNSの影響が、若者による凶悪犯罪を生んでいると分析している専門家もいる。また、カナダではメンタルヘルスサービスを必要とする子どものうち5人に1人しかサービスを受けられていない。オンタリオ州では396人の生徒に対してカウンセラーは平均1人しかおらず、心のケアができていないことも若者の犯罪関与が増えている要因の1つと考えられている。

6. 2019→2022 60%増のTTCでの事件 今年も増加中

出典:Toronto Police Service

TTCの駅やバス、ストリートカー付近での犯罪が大きく増えているのが2023年の特徴と言えよう。トロント警察によると、3月13日現在でTTCに関連した場所で発生した事件は355件。うち暴行281件、強盗25件、性犯罪29件だった。また2022年においては1年で1068件の暴力事件が発生し、前年2021年(734件)より46%増加、パンデミック以前の2019年(666件)より60%増えたとTTCのデータは示している。2019年は2022年よりもTTC利用者数が30%多かったことを考慮すれば、この4年間で60%アップしたというのは恐ろしい事実だ。

出典:TTC

TTCの治安悪化は2022年から続いているが、2023年に入ってからは特に駅構内に人を突き落としたり、人種差別による暴行をしたり、凶器で体を傷つけたり、凶悪化がますます進んでいる。1月末から巡回を増やした警察だが、巡回中に314人を逮捕したと発表している。増え続ける犯罪に一部専門家は、パンデミックで家や仕事を失うなど苦しい思いをして孤独を感じている人にとって、他人と接触することが簡単ではないからではないかと分析している。

TTCでの犯罪事例(2023年)

①バス内での職員暴行(ケネディ駅付近、1月23日)

被害者: TTCの職員2人
加害者: 13歳の少年4人(当初は約15人の少年が関与しているとみられていたが、逮捕者は4人のみ)
内 容: バスに乗車していたTTC職員2人に対し、少年らが集団となって殴ったり蹴ったりの暴行を繰り替えし切り傷や擦り傷を負わせた。

②ストリートカー内での刺傷事件(スパダイナ・アベニュー/サセックス・アベニューエリア、1月24日)

被害者: 23歳の女性
加害者: 43歳の女
内 容: TTCストリートカー内で、突然43歳の女が被害者の頭と顔をナイフで複数回刺し命に関わる重傷を負わせた。その場で女は逮捕。2人に面識なし。

③バス内での刺傷事件(オールドミル駅、1月25日)被害者: 16歳の少年

加害者: 不明(20~25歳の男、身長170cm程度との情報)
内 容: バス車内で少年が胴体と足を複数回刺され重傷。乗り合わせた2人が会話するうちに、男が理由もなくいきなり少年を襲った。

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