【特別インタビュー】日本茶祭り主催者 吉田桃代さん|特集「インタビューで綴る、文化の交差点 マンガ・アート・茶の世界」

【特別インタビュー】日本茶祭り主催者 吉田桃代さん|特集「インタビューで綴る、文化の交差点 マンガ・アート・茶の世界」

日系コミュニティーが文化祭のような気持ちで
盛り上がれたら嬉しい。日本茶文化を発信して
日本とカナダのお茶の架け橋になることを目指します

日本とカナダの橋渡し、日本茶の今後の発展という信念のもと、第一回目となる今回のイベントに合わせて設立された「Nihoncha Canada」。カナダ人で日本茶に魅了された人、これから魅了される人にとって窓口になる組織にしていけたらという志のもと活動している。

―イベント開催のきっかけは?

お茶の魅力をカナダの人にも伝えたいという思いからです。私は「MOMO TEA」というブランドで、2015年からオンラインで日本茶を販売していますが、当時トロントで日本茶は今ほど主流ではありませんでした。日本茶を皆さんに正しい飲み方でおいしく飲んでほしい、その方法を伝えなければと感じたことが最初のきっかけです。

その後、日本茶のワークショップを始めたり日本茶アドバイザーの資格を取ったりしたことで、お茶文化や魅力をカナダで伝えられるイベントがあればいいなと考えるようになりました。日系文化会館にも共感していただき、2020年にイベントを開催しようと準備を進めていましたが、パンデミックの影響で開催できず開催することは断念することになりました。それから3年経って今年1月、日本茶輸出促進協議会の方が日本から いらっしゃるタイミングがあり、お手伝いさせていただく機会がありました。

そのご縁を通して、一度眠っていた私の思いがまた強くなってきて、是非 協議会の方々へ、再来加していただき、日本茶に特化したイベントを開催したいと思ったのです。今回様々な方の賛同と協力を得て、開催できることになり、嬉しく思っています。

―イベントではどんなことが楽しめるのでしょうか。

Hojicha Co.

テーマは「日本茶を飲み尽くす。知り尽くす。楽しみ尽くす」です。日本人やカナダ人が経営するお茶ベンダーがいくつか出店するので、来場者には、「お茶の飲み比べ」を楽しんでほしいです。日本茶専門店だけではなく、紅茶や中国茶を扱っているお茶専門店が、日本へ直接旅行して選んだ抹茶だったり、ほうじ茶に魅了され、ローストの違いでバリエーションあるほうじ茶を提供するお茶屋さんなど、こだわりをもったお茶屋さんばかりです。

日本茶にも力を入れている「TaoTea」

ワークショップではお茶体験コーナーを設けています。静岡から煎茶道のお家元 が提供して下さるお茶席、手揉み日本一に輝いた実績のある職人さんによる手揉みデモンストレーションで、お茶ができる工程を実際に見学できるコーナーなど、日本にいてもなかなか遭遇することのない貴重な体験ができるので、是非皆さんに楽しんでいただけたらと思っています。

お茶以外の販売コーナーでは、トロントに店舗を構える雑貨ベンダーさんや地元の陶芸家の作品販売の他に、日本から 伝統工芸の技術を生かした侍ペーパナイフや、手ぬぐいの老舗など、魅力的な商品を扱うお店が出店します。


その他、書道カナダさんの協力を得て、お茶にふさわしい掛け軸の展示コーナー、裏千家トロントによる茶道の呈茶席など、トロントの日系コミュニティーがひとつになり、文化祭のような気持ちで盛り上げられたらと願っています。

―そもそも、吉田さんが日本茶ビジネスをすることになった経緯は?

私は体質的にお酒が苦手で飲めないのです。なので昔から飲み物といえば「お茶」で、常に飲んでいました。自分が好きな「お茶」のことをもっと詳しく知りたくて、会社帰りにカレッジへ通い、ティーソムリエの資格をとりました。2010年のことです。ティーソムリエのコースを通して、出会った友人達は当然のことながら、お茶が好きな人たちばかりでした。世代や性別を超えて同じ趣味の友人ができたことは今でも私の財産になっています。

私はいつも日本への一時帰国の際にたくさんの日本茶を購入していたのですが、新しくできた友人たちへも、よくお土産で日本茶をプレゼントしていました。その際にいつも、「これ美味しい!カナダでも買えたらいいのに。高かったでしょう?」といったコメントを聞くことが度々ありました。実際はそんなに高価な値段はしていなかったので、そこで気づいたことが、その当時、カナダには手軽に、でも良品質で新鮮な、美味しい日本茶が不足しているということでした。そんなマーケットがあったらいいのに、という気持ちがお茶屋をはじめるひとつのきっかけになりました。ただ、日本茶ビジネスと言っても、そんなに大げさなことではなく、副業で細々やっていけたらいいと思っています。本業は日系企業で貿易事務をしています。

11月は昔の日本人 特に茶人にとっては大切な月でした。それは春につまれたお茶を茶壷に大切に保管させ、夏の間熟成させて 、11月はその壺を開ける儀式が行われるからなのでした。茶人にとって「お正月」の月なのです。この特別な月に、日系文化会館でこのイベントを開催できることを幸せに思います。

―趣味で茶道もされているとか。

私の実家は母が琴の先生なこともあり、伝統文化を大切にする家で、茶道も身近な存在にありました。ですがきちんと習ったことはなかったのです。

ところがティーソムリエのコースを終えて卒業する際に、卒業セレモニーで、日本のティーセレモニーを皆の前で披露してくれないか。と頼まれたのです。もちろん戸惑いはあったのですが、けっこう強引に頼まれた経緯もあり、断れない日本人。結局お引き受けすることになりました。そこから慌てて実家から本を送ってもらったり、叔母からアドバイスを受けたりして、数か月間猛特訓し、真剣に向き合い、何とか当日のティーセレモニーを無事に終えることができました。

この体験を通して、「自分のルーツ」を確信したような気がしました。これまでの全てが繋がったような気持ちになりました

その後 、長年トロントで茶道を教えられている、新宗楓先生の教室へ入門し、現在も学びを続けています。もう10年以上たちますが、お茶の世界は深く、魅了されるばかりです。これからも一生をかけて学び続けていきたいと思っています。

―2015年と比べると最近は日本文化がカナダで浸透していると思いますが、日本茶の受け止められ方は変わったと感じますか?

もともとありがたいことに、2015年当時も「日本からのもの」に対して、好意的にみてくれる方が多かったです。今は当時よりも日本食や日本のスイーツの存在感が高まっていて、日本茶も相乗効果でよく知られるようになったと感じています。抹茶の認知度が高まったのはもちろんですが、ほうじ茶アイスクリームなど、2015年の時点では存在していませんでしたが、今ではところどころで見かけるようになりました。

―日本茶祭を通して期待することは?

日本茶の知識を深めて、日本茶ファン、日本文化のファンを増やしたいと思っています。日本茶の周りには魅力的な日本文化で溢れています。茶道、煎茶道、書道、着物、陶芸、和菓子、金継ぎ、、それぞれの素晴らしい文化にふれていただけたらと思います。

お茶を淹れている時には静寂と安らぎがある。と私はいつも感じていて、そこに最大の魅力を感じているような気がします。皆さん日々お忙しくしていると思うのです。だからこそ、お茶が私たちに与えてくれるメリットは大きいような気がします。ぜひお茶の魅力を探しにきて下さい!

日本茶祭りカナダ 2023

開催日時: 11月26日(日)
時間: 10時から18時まで
場所: 日系文化会館 6 Sakura Way, Toronto
入場料: 15ドル (エコバッグとミニカップ付き)

チケット、事前購入はこちらから
www.nihonchacanada.com

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