知れば知るほど面白い! 駅と鉄道トリビア|特集「歴史とロマン、カナダの鉄道・駅物語 」

知れば知るほど面白い! 駅と鉄道トリビア|特集「歴史とロマン、カナダの鉄道・駅物語 」

190年もの歴史をもつカナダの鉄道。駅は人と人が交わり、文化が融合し、駅を舞台に様々な物語が生まれている。歴史の中に生まれたトリビアをお届けします。

VIA Station, Photo by VIA Rail

【TRIVIA01】 ユニオン駅の建築スタイルは世界的に有名

©Spring Morris Photo

トロントにおいて最も代表的なボザール(Beaux-Arts)様式の建築物という理由で国定歴史建造物に選ばれたユニオン駅。ボザール様式とはフランス・パリのエコール・デ・ボザールという高等美術学校で教えられていたことで広まった。古代ローマとギリシャの建築のようにシンメトリーや列柱、格天井などが用いられているとても華やかなデザインだ。世界中で有名なボザール建築といえばニューヨークのグランドセントラル駅やパリのグラン・パレ。

トロントで有名なのはユニオン駅のほかにもHockey Hall of FameやRoyal Alexandra Theatre、Canada Life Buildingがある。日本でも東京の三井本館、明治生命館などの建築デザインに取り入れられている。

【TRIVIA02】 ユニオン駅の地下2階分は営業中に掘られた

2021年に完成しオープンしたユニオン駅の新しい地下エリアは11年越しの大プロジェクトだった。GO TransitのYorkコンコースが完成し、BayコンコースとVIA Railコンコースが改装された。PATHへのアクセスも改善し、自転車駐車場も2ヶ所増えた。これらを全て実現するにはユニオン駅の地下を掘る必要があった。

この高度な技術を生み出したのはカナダの大手建設事務所「NORR Architects」。シルビオ・バルダサラ会長が自らデザインやエンジニアリングの指揮を取った。彼は今までにもRogers Centreやピアソン国際空港第2ターミナルの改装工事など難易な工事に何度も携わっている。ユニオン駅では地下に既存していた280本もの柱を一旦切断し、地下3メートルを掘ってから柱を新しい床に届くよう長さを伸ばした。

この作業は全て列車が通常運行している間に行われ、振動で安全性に異常が起きないか24時間体制でモニターされていた。11年間にも及ぶ作業で1度も異常がなかったのはなんとも素晴らしい技術だ。

【TRIVIA03】 駅と郵便局は切っても切れない関係だった

1代目のユニオン駅ができた当時、郵便は全て汽車で運ばれていた。そのため駅の南側には郵便局、そして東側には事務室があった。郵便局ビルの地下には汽車へつながるトンネルがあり、社員がアクセスできたという。カナダの郵便システム自体はイギリス領だった頃の1763年に始まり、郵便局長はケベックシティとモントリオールの間を毎週行き来し配達をしていた。1851年にカナダ州に初めてイギリスから独立した郵便局が創立され、汽車を頼った配達は1971年まで続いた。創立時にカナダ初となる切手をデザインしたのはインターコロニアル鉄道に関わった土木技師で世界標準時を提案した多彩なサンドフォード・フレミング。丁寧に可愛らしくビーバーが描かれていた。

【TRIVIA04】 列車の中に学校があった

©City of Toronto Archives

「School Train」または「School Cars」、「Schools on Wheels」とも呼ばれる列車は1926年から1967年に存在した。親が鉄道で働く人や猟師、林業に関わる人の場合、学校がない街に住んでいることが多かった。列車が家の近くに到着すると子供たちは歩いて「登校」。当時1回の停車期間が6日ほどだったので月曜日から金曜日まで学校に行くことができた。週の最後に宿題をもらい、また1ヶ月後に列車が同じ駅を通る際に1週間登校した。一回に3人から4人生徒がいる日もあれば、15人くらいの時もあったという。

生徒の人種は様々で、カナダ生まれの白人に限らず先住民もいればヨーロッパからの移民もいた。読み書きのできない大人もスクール・カーの夜間学校で学ぶことができた。教師とその家族は列車に住み、自らの子供を育てながらオンタリオ中の人々に教育を与えた。

【TRIVIA05 】TTC駅名標のデザインの裏話

どれも似ている様で実はひとつひとつ被らないようにデザインされたトロント地下鉄の駅名標。1950年代にトロントで初めて地下鉄の開通が準備されていた頃、今も誰だか分からぬデザイナーが全く新しいオリジナルフォントを用意し、チーフエンジニアがタイルの色を選んだそうだ。
だが希望されていたタイルが売り切れだったことや値段が高すぎたことからアラモ・タンとジェイド、シェル・ピンクの3色だけが残り、なんとかそれだけでユニオン駅からエグリントン駅までの駅名標のデザインを被らない様に作った。枠組みに使われた他4色がそのプロセスを救ったと言われている。

病院や刑務所、またはトイレの様なデザインだと批判されてきたが、実は人が騒がしくならないような落ち着いた色合いを目標に選んでいるため批判はまさに褒め言葉なのだ。

【TRIVIA06】カナダで乗れる日本の車両

©Metrolinx

ユニオン駅とピアソン国際空港を結ぶUnion Pearson(UP) Expressでは「日本車輌」という日本の鉄道車両メーカーのディーゼルカーが使われている。

アルバータ州エドモントンにはハイ・レベル・ブリッジ・ストリートカーと呼ばれる観光用路面電車があり、その路線を走っているのは大阪の元阪堺電気軌道の車両。1921年に作られた歴史ある車両に乗って北サスカチュワン川を渡れる。

最後に、来年開通予定のミシサガとブランプトンをつなぐGO Transit路線では「日立」のLRT(次世代型路面電車)が使われる。