ノバスコシア州で起きた「カナダ史上最悪」の銃殺傷事件の衝撃

追悼の意を表し、赤くライトアップされたナイアガラの滝
追悼の意を表し、赤くライトアップされたナイアガラの滝

新型コロナを受け、追悼の形に変化も

 事件により帰らぬ人となった22名の犠牲者を追悼するための通夜が4月24日に行われた。しかし、新型コロナの感染拡大を受け、一般向けの通夜はオンラインで行われた。フェイスブックやユーチューブを通して配信された今回の「バーチャル追悼」では、カナダの総督であるジュリー・ペイエット氏やノバスコシア州のスティーブン・マクニール州首相、さらにはトルドー首相がビデオメッセージを通して犠牲者の死を悼んだ。

小さな街だからこそ、良い時も悪い時も私たちはお互いを助け合ってきた

 さらに、事件が起きた地域周辺の住民によるメッセージも含まれた。「このように小さい街だと、良い時も悪い時も私たちはお互いを助け合ってきた」と地域のコミュニティーがいかに結束したものであったかを感じさせる言葉が印象的だった。

 また、「このようなことがあれば、私たちは共に悲しみ、弔い、お互いを慰め合う。しかし、今の状況ではそれが不可能だ。だからこそ今回はこのような形で犠牲者を追悼しようと思った」と述べ、今回の状況が極めて特殊であることを強調した上で、そんな状況下でもお互いを思いやる心を忘れない強い意志をあらわにした。

 2時間に渡った追悼には、ミュージシャンも参加。配信であるにもかかわらず、まるで大勢が集まって行う通夜のように、国・州・地域の要人からのスピーチの他に、地元のミュージシャンによる音楽演奏などが行われた。中には、犠牲者の一人が演奏していた曲を、犠牲者が演奏している映像と「共演」をするなどの演出も見られた。

 また、フェイスブックには地元の人々や今回の事件により影響された人々が参加し、共に体験や感情を共有する場が設けられた。さらに、遺族を支えるためにクラウドファンディングを受け付けるページも設立。フィジカル・ディスタンシングの中でも共に支え合う、新たな追悼の形が見られた。

トルドー首相、銃の規制へ

カナダで殺傷能力のある武器が使われる意味や場所はどこにもない

 5月1日、事件を受けトルドー首相は銃の規制を施行。殺傷などに使われる軍事用の銃の売買、輸送、輸入、使用を禁止した。この規制の対象になる銃はおよそ1500種類にも及ぶという。「これらの武器は可能な限り大人数を短時間で殺すために作られたものであり、それ以外の何物でもない」とした上で、「カナダにおいてこのような武器が使われる意味、そして場所はどこにもない」と断言。現時点で、カナダにおける銃の所持率は世界的に見ても高く、100人あたり34・7丁ほどだと言われている。一方、銃の所持率が世界一高いアメリカでは100人あたり120丁だそうだ。

 連邦警察によると、犯人は半自動式ライフルを二丁、半自動式ピストルを数丁所持していたという。また、犯人は銃所持免許を持っていなかったこと、そしてこれらの拳銃はカナダやアメリカで違法に入手されたものであったということがわかっている。

 今回の規制に加え、トルドー首相は銃の所有者から銃を買い戻す法律を近いうちに制定する旨も明らかにした。制定されるまでは、該当する銃をすでに所持している人に対し、二年間の猶予が与えられた。この間、所有者は銃を使用することはもちろん、銃所持免許を持っているカナダ国外の人以外への売買などが禁止されている。

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