ノバスコシア州で起きた「カナダ史上最悪」の銃殺傷事件の衝撃

 カナダ・ノバスコシア州で4月18日未明から19日にかけて起きた、多数の被害者が出た銃殺傷事件。カナダ史上最悪の銃殺傷事件とされているこの事件では、22名が犠牲になった。トルドー首相は即座に銃の規制強化を施行したほか、全国各地ではコロナ禍の中で追悼式が行われ、深い悲しみに包まれている。

 当初は、事件現場の多さとその範囲の広さもあり、事件の全容を掴むのに多くの時間を要した。しかし、目撃者が多数いたこともあり、その全容は徐々に明らかになっている。13時間にも及んだ事件の詳しい時系列を始め、明らかになってきた犯人像や被害者の声、そして警察の対応に落ち度がなかったかなど、幅広く取り上げていく。

犯人の足取り・警察の対応

4月18日

夜22時ごろ:
 犯人、ガブリエル・ウォートマン(51)がポルタピケ(ノバスコシア州)にて、ガールフレンドに暴行。彼女は森の中へ逃げ、そこで一夜を過ごすことに。

 警察にポルタピケにおける銃撃の通報が寄せられる。

22時26分:
 警察がポルタピケの現場に到着。複数の死者と火事の現場を確認。銃撃によりけがを負った被害者の一人からパトカーの目撃情報が寄せられる。

23時12分:
 犯人はポルタピケよりおよそ26キロ離れたデバートの産業地帯に場所を移し、そこで一夜を過ごす。そこでは6時間以上過ごしていたとみられている。

23時32分:
 ノバスコシア州の連邦警察は、ツイッター上で「ポルタピケ地域において寄せられた銃関連の苦情に対応している」と説明。住民にはポルタピケ地域に近づかないように、そして家のドアに施錠をするように呼びかける。

*連邦警察はこの事件について同日これ以降、事件に関する更新や警報の発令などを一切行わなかった。

そこから7時間:
 連邦警察はさらに複数の家が放火されていることを確認する。ウォートマンを連続銃撃事件の容疑者として特定し、彼の家や車庫が燃えていることも確認。また、ウォートマンがパトカーを模した乗用車を複数所有していることを確認する。

*ポルタピケ地域における事件現場は7つあり、それらの現場で合計13名の死者が確認されている。

4月19日

午前5時43分:
 犯人は寝泊りしていたデバートを夜明け前に離れ、ウェントウォース(ポルタピケよりおよそ60キロ)へと北上。

6時30分:
 森の中に隠れていた犯人の彼女が911に通報。森から出たのち、犯人が連邦警察の制服を着用しており、パトカーを模した乗用車に乗っていることを報告。また、複数の銃を所持していることも明らかにする。この情報をもとに、連邦警察はノバスコシア州の全ての警察署に犯人の捜索を依頼。乗用車の情報も公開する。

8時2分:
 連邦警察は、ツイッター上で初めて州内に銃撃者がいることを公表。住民へ外出を控えるように呼びかける。同じ頃、ウェントウォース地域で家が燃えているという通報が何通も寄せられる。また、新たに死者も発見される。

8時54分:
 連邦警察は、ツイッター上で犯人の写真を公開。「被害者も複数いる」と加えたものの、事件の詳細は明らかにされなかった。

RCMP Impala / Photo by Bobby Hildy
RCMP Impala / Photo by Bobby Hildy

9時から10時:
 犯人の犯行により、新たに三人の死亡者が見つかる。

10時17分:
 連邦警察は、ツイッターで犯人が着用している服と運転している車が連邦警察のパトカーを模しているとの情報を初めて公開する。

10時25分:
 犯人は車を一時停止させ、着用していたジャケットを脱ぎ、反射材がついたベストに着替える。

10時49分:
 連邦警察官二人が、エンフィールド(ポルタピケよりおよそ92キロ)近くで合流を計画。うち一人が、近づいたパトカーをもう片方の警察官だと思ったものの、犯人だと気付く。警察官は犯人に撃たれたものの、死には至らず、撃たれたことを報告。犯人はそのまま逃走。もう片方の警察官のパトカーに正面衝突し、中にいた警察官を殺害。

 現場近くを運転していた男性が撃たれた警察官を助けようと現場に近づくが、彼も犯人に撃たれ死亡。犯人は男性の車に乗り換える。

11時6分:
 連邦警察は、犯人が乗っている車の情報とその道のりを公開。
 一方、犯人は近くに住んでいた知人の家に侵入し、その知人を殺害。その後、着ていた連邦警察の服を脱ぐ。被害者の知人の車に銃を移し、自身も同じ車に乗り換え再び逃走。

11時23分:
 犯人がガソリンスタンドに到着。待ち伏せしていた連邦警察と居合わせる。

11時26分:
 犯人が連邦警察により射殺される。

Pages: 1 2 3

Pages: 1 2 3