世界最大の地下塩鉱がゴデリッチに！

　キンカーディン（Kinkardine ７月号）を後に21号線を南へ走ること約40分、高台にあるゴデリッチの町に入る。全長200メートル級の貨物船が塩積みに入港する。そう、ゴデリッチには世界で一番大きい地下塩鉱がある。アメリカ、カナダ東部の塩の需要を十分担う量を埋蔵している。専門家の予測では今の供給レベルを持続すると120年は持つそうだ。塩の用途は食品用、科学工業用、商業用と多種多様だが、最大の需要は冬の道路の凍結防止。道路用の塩は細かくかき砕かれた岩塩そのままだが、他は岩塩に水を加えて乾燥させ、さらに精製されてお馴染みSifto Saltの名で商品化される。

　塩鉱のサイズは地下約550メートルの深さから始まり厚さにして平均約250メートル、長さおよそ３キロメートルもあると言われ、ヒューロン湖地下に伸びるトンネルの長さは７キロメートルにもおよぶ。残念ながらツアーは今のところない。

塩鉱を見つけたのは誰？所有権は？

　19世紀、誰もが石油で一儲けしようとあちこち掘っていた。野心に燃えたアイルランドの移民、サム・プラット（Sam Platt）もその一人。彼はゴデリッチ・ハーバーの下を掘っていたところ岩塩にぶつかる。がっかりはしたものの北米で初めて掘り当てられた塩鉱と分かる。彼の発見後、いく人かのビジネスマンを経由し、Sifto Canadaの手に渡る。塩鉱を掘り当てたプラット氏は製粉工場、ビール工場を手がけ、政治家としても活躍しトロントで亡くなっている。

　Siftoは1990年から米国カンサスの大規模鉱物炭鉱会社コンパス・ミネラル社（Compass Mineral）の配下に入る。オンタリオ州産の塩は南米から塩を輸入する米国にとって輸送にも経費が少なくて済み、岩塩１トンあたり58ドルの相場。陸路でラブラドールを含むカナダ東海岸全域にも輸送されている。ところで、ゴデリッチの名前は19世紀に英国の首相を１年務めて早死にした１代目ゴデリッチ子爵、フレデリック・ジョン・ロビンソンに由来する。本人はカナダに来た形跡はないが。

鉄道廃線のあとがハイキング・トレイルに

　20世紀はじめ、グエルフ（Guelph）とゴデリッチ（Goderich）を結ぶCPR（Canadian Pacific Railway）の鉄道が敷かれたが、内地とヒューロン湖を繋ぐこの線路は80余年後に廃線となり、それをオンタリオ州が環境保護のため路線近遍の土地を買い上げ、今はG-2-G Rail Trail – 127キロメートルの長距離ハイキング・コースとしてNPOらによって整備されつつある。何日間かに分けて歩いてみるのも健康の目標になるかも。ゴデリッチ旧駅舎は2013年に三ヶ月かけて無事ヒューロン湖岸に移動された。

お洒落なベイフィールド（Bayfield）のメインストリート

　ちょっと趣向の違う町がゴデリッチの20キロメートル南、ベイフィールドだ。観光客のために開発されたような大通りをまたぐ商店街ーというと語弊があるが、かつて人々が馬車で往来した19世紀の目抜き通りだ。時代の変遷とともに、昔の商店がカフェになり、高級レストランになり、ブテイック、アートギャラリー、アイスクリームショップ、ギフトショップ等に変化していった。

　19世紀に建てられたホテル、Little Innは今も健在だ。ブテイックでは都会に負けないデザインの服や小物が並ぶ。元はオランダの貴族が19世紀前半にこの土地を購入したのが町の始まりだが、10年後には五大湖測量士として著名な英国のベイフィールド提督みずからここをベイフィールドと命名。

ベイフィールドの小さな漁港

　朝の漁を終えてリラックスしている漁師とおしゃべりした。沖で捕獲できるのは主にホワイトフィッシュ。制限があるので１日に捕る量は決められているようだが、魚の値段が上がっているので文句は言えない、と満足気に話す。朝の水揚げ時には氷の中でピチピチした魚の跳ね上がる音とともに市場へ輸送するトラックの往来で狭い港も業者の掛け声で賑わうに違いない。釣りも盛んで、ヒューロン湖に注ぐベイフィールド川の下流はスポーツフィシングで人気がありトラウト、サーモン種、パーチなどが釣れるという。

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