パンデミックにおけるカナダと米国の対応と成果の違いを探る|アメリカ現地報道からみるCOVID-19

パンデミックにおけるカナダと米国の対応と成果の違いを探る|アメリカ現地報道からみるCOVID-19

トランプ・米大統領の横暴さ

医療現場へのサポートについても相違がある。カナダでは連邦政府が保護具・用品の購入を中心になって行い、そこから各州の需要に合わせて配布をしている。しかしアメリカではこの点において計画性は見られず、政治的な贔屓が目立つという。メリーランド州知事で共和党のホーガン知事は、何千ものウイルス検査キットを韓国から購入し、公にしていない場所で州兵によって警備し保管しているという報道もあった。

これによってトランプ大統領と知事の間で溝が生まれたが、知事は検査キットが国内で入手不可能であったことや連邦政府が没収するのではという心配からの行動だったそうだ。実際に民主党のコロラド州・ポリス知事が500個の人工呼吸器を要請したが、その出荷途中で連邦政府によって妨害されポリス知事は返還を要求した経緯もあるほどだ。その後トランプ大統領はこのうちの100個をコロラド州共和党下院議員のガードナー氏に与えたとし、これはガードナー議員が今年の選挙で敗北する可能性が非常に高いとされていることから、トランプ大統領による贔屓的な対応であると指摘されている。

検査面においてもその相違が顕著

カナダは連邦政府は、3月中旬には専門家とともに検査実施を大規模に拡大する方針を決め、実施を開始している。アメリカでは医療や疫学的な経験に乏しい大統領の義理の息子でもあるクシュナー大統領上級顧問がウイルス検査実施拡大のための担当に任命され、4月初旬にドライブスルーの検査場を全国で5箇所設立されたほかは、存在しないグーグル上の検査ウェブサイトを勧めたり、迅速な検査の不足から医療対応と選択を困難にしたとされる。

州レベルでも両国のリーダーシップの違いが鮮明に

連邦レベルのリーダー性だけでなく、州レベルでも二カ国間でリーダーシップの違いが大きく出た。カナダとアメリカの政治システムは違うが、州政府が地域レベルでパンデミックのための物理的距離や規制を決定することができ、大きな権限を握るという点では類似しており、そこから州政府によるイデオロギー・派閥中心の政治が垣間見ることができる。

カナダの細かい規制や政策対応の質のレベルは州政府によって多岐にわたるが、ウイルスに対する見解は、どの党でもほぼ同等に深刻に捉えられ、厳しく一貫した対策などが取られてきた。一方でアメリカは、その見解が党やイデオロギーの違いによって異なり、そこから州政府の対応も様々で対策に遅れが生じるなどの結果を招いた。

多くの政治学者や医療関係者がカナダの州政府の迅速な対応と一貫性を評価

規制や対応について、多くの政治学者や医療関係者がカナダの州政府の迅速な対応と一貫性を評価している。カナダでもアメリカ同様、都市と地方の隔たりははっきりしており、政治的思想も異なるが、政治的な派閥はアメリカに比べると決して固定されていたり、力があるわけではないという。

パンデミックによる危機の中、各党の間で比較的一致した見解を持つことで、各指導者がともに機能することを簡単にし、それによって医療最前線などの現場はあらゆる面でプラスの効果があった。トロント大学とマギル大学の学者によると、カナダの国会議員や国民の新型コロナウイルスに対する姿勢をデータ分析した結果、アメリカとは異なり、自由党が深刻で保守党は懐疑的であるなどといったウイルスに関する政治的二極化は、カナダでは見られないとし、ウイルス対策は党派によって構成されていないと述べられている。

オンタリオ州のダグ・フォード州首相のリーダーシップ

興味深い例として、右派ポピュリストでオンタリオ州のダグ・フォード州首相が挙げられる。フォード氏はトランプ大統領の経緯と同様、カナダ最大の都市トロント近郊の出身だが、地方や郊外の有権者から支持が厚い。オンタリオ州の高齢者介護施設でのパンデミックの大打撃は全国的に見ても大きく、フォード州首相はこの措置では批判されていることは事実であるが、全体的な対策を見るとポピュリストのリーダーとして自身を位置づけるというよりも国民全体の同意に協調したリーダーシップをとっている。

さらに政府によるウイルス対策の規制に対するデモを行った抗議者らについて、無責任で無謀、自己中心的であると批判したことも話題になった。右派ポピュリストにしては移民政策にオープンな姿勢を示すフォード州首相だが、隣接するアメリカの深刻なパンデミックを受けて、アメリカからオンタリオ州に人が入ってくることを懸念し、両国の国境を引き続き閉鎖するべきであると強調している。

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