アメリカのニュースメディア「VOX」にCOVID-19パンデミックに対するカナダと米国の政府の対応と成果を比較した記事が掲載されていたので周辺情報を補足しながら紹介していきたい。
カナダとアメリカ、北米に隣接したこの二カ国は多分野において類似する点が多くあり、新型コロナウイルスにおけるパンデミックのリスク特性もほとんど同等だ。
例えば高齢者社会が進んでいたり、比較的早くパンデミックが勃発した東アジアやヨーロッパからほぼ同等な距離である。しかし、そのパンデミックの状況は二カ国間で随分違い、アメリカの状況の方がはるかに深刻だ。
カナダより深刻なアメリカの現状
アメリカはカナダと比べて一人当たり2倍ほどのウイルス感染件数率が確認されており、さらに死亡率は30％高いとされている。また、これまでのパンデミック期間で見るとアメリカは一人当たりの感染件数率と死亡率はそれぞれカナダの2倍以上にのぼる。
カナダの検査実施数率はアメリカに比べ一貫して高く、特にパンデミック初期の3月中旬で比べると、カナダが約5倍以上高かった。感染件数が増え始めたのは3月中旬とカナダ・アメリカともに同じタイミングだったが、その後のパンデミック状況はアメリカの方がはるかに大きくそして早く進行したのに対して、カナダはその曲線の平坦化が同タイミングで見受けられてきた。
政治的リーダーシップの相違
二カ国の状況を追跡しているカナダ保健当局の専門家らをインタビューを通して、パンデミックを受けて両国がどのような対策を取ってきたかという見解は様々であるものの、どの専門家もカナダの政策・対応の方が米国と比べて桁違いに良いという見解を示したという。
専門家によると人口や社会性の違いはもちろん、ユニバーサル・ヘルスケアシステムやウイルス対策のための公衆衛生機関への一貫した資金提供など要因はたくさんあるが、中でも二国間の政治的リーダーシップの相違による影響が大きいとした。
トロント大学の疫学者は、カナダ連邦政府は各州の対応をサポートしながら国全体として対策を取っているのに対し、アメリカでは大統領や政府が国民に対する医療対応を直接的に徐々に蝕んでいると述べている。
しかし、カナダのアプローチが完璧というわけではないことも事実だ。ドイツや韓国などに比べるとカナダは、ウイルスによる死亡率は非常に高く、特に長期高齢者介護施設と先住民社会への対応の落ち度が指摘されている。一方でアメリカの対応は派閥中心の政治と連邦政府の無機能性に大きく影響されており、それによって多くの命が犠牲になっているという。
カナダは隣国であるアメリカによっても大きな影響を受けるという位置にいる。現在カナダにとって国民の健康の最大の脅威は、アメリカからウイルスが持ち込まれることであると専門家は語る。
カナダ・トルドー政権の手腕が評価
カナダでは、トルドー首相の妻ソフィー夫人が比較的早い時期に新型コロナウイルスの感染が確認されたこともあり、トルドー首相自身が深刻にその恐ろしさを受け止めており、国民に対して規制も厳しく、物理的距離の維持も強調し続けてきた。また、連邦政府の中核的責任についても、専門家からトルドー政権の対応は比較的高く評価されている。