コロナの後、ビジネスは変わるのか?|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

コロナの後、ビジネスは変わるのか?|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

 新型コロナの出口が見えてきた今、人々の目線は「コロナ後の世界」だろう。変わる、変わると言われる中、何がどう変わるのか思いつく方はいるだろうか?先月号は「我々はこの困苦を乗り越え、次の新たなる英知に向かう」と述べたのだが、もう少し、具体的に掘り下げてみようではないか。

塾や教育のやり方を根本から変える発想

 私は現在、日本で塾の関係の案件を2つ抱えている。当然ながら新型コロナの時は塾は閉鎖せざるを得ない。子供たちは学校もなく、授業の遅れも気になり、受験生を抱える親御さんは試験勉強の遅れにやきもきし、7割の親御さんは「コロナでも塾をあけてほしい」と懇願していたのが実情である。

 それもかなわず、多くの学校や塾が対面教育を中断し、オンライン化を進めている。だが、私から見ればこれは過渡期のシステムだと思っている。「オンラインと対面の併設型」の塾は私どもでも既に7年も前から事業展開を進めており、オンラインの良さと弱点は十分に分かっており、試行錯誤を進めている。

 今、私の関与するその2つの塾の案件で誰も思いつかなかった最新のテクノロジーを投入することを考えている。なぜそう思ったかと言えばコロナが背中を押したからだ。コロナによって人の集積を避けるためというより、ようやく塾や教育のやり方を根本から変えるモチベーションが高まったと申し上げておこう。

 実はこの発想の前提には恐ろしい可能性を含んでいる。それは学校の先生が基本に不要となるからだ。先生はその代わりにファシリテーターとしてクラスを運営するのだ。つまり、教育を2つの部分に分ける。純粋に学問を教える部分と学校を通じて覚える道徳教育や人格形成である。そしてIT技術が前者を、先生は後者を担うのだ。具体的なプランはここでは詳述できないが、既にある技術を流用する形で、半年か1年もあればプロトタイプとしては実行可能だろう。世界でも類を見ない新しいアプローチかもしれない。

 これぞ、新たなる英知であるが人々はそれではあまりにも破壊的であると感じるかもしれない。しかし、我々の知っている30年間だけでもコンピューターが席巻し、タイプライターがなくなり、ワープロがなくなった。カメラの世界ではフィルムがなくなり、デジカメもなくなり今はスマホで写真を撮るのが当たり前になった。飛行機の予約を旅行会社ですることはなくなり、飛行機の搭乗券すらなくなった。手紙はなくなり、電話は鳴らなくなり、Eメールも減り、テキストやSNSがコミュニケーションの手段となっている。これらの変化に誰か破壊的変化だといったことはあるだろうか?否である。

飲食店はどう変わるだろうか?

 我々は何を求めて飲食店に行っていたのだろうか?腹を満たすか、食事のクオリティか、人と会うための媒介としての食事か、非日常的雰囲気を楽しみたかったのかのどれかであろう。飲食店に行く目的をそのように分類して考察したアプローチはあまりないと思うが、こう考えるとコロナ後、それぞれの店はどの部分が強みで弱みなのか、おのずと答えが引き出せるのではないだろうか?

 日本のせまっ苦しい家ならともかく、カナダの家は基本的に人をお招きできるサイズがあり、インテリアを大事にする国民性を見て取っている。ならば、コース料理ならいざ知れず、レストランにわざわざ出向かず、プロが作ってくれた料理を家で食べて皆で好きなワインを飲むのが当たり前になっても何らおかしくはない。とすれば中途半端な店ほど生き残れなくということだ。

 大型レストランのように不特定多数の客が大勢来るところには抵抗が生まれるかもしれない。コロナという伝染病が派生的に生み出す人々の行動変化とはそこにいる他の客への抵抗感のみならず、お店のお手洗いであったり、お金の支払いを通じた接触への懸念であったりする。

ビジネスは変わるのか、と言えば確実に進化するのだ

 ひと昔前まではクレジットカードによる払いは一旦お店の人が客のカードを触り、処理していたのにいつの間にか自分の手から離れることがなくなっているのだ。これも進化なのに誰もそれを指摘しないだろう。

 ビジネスは変わるのか、と言えば確実に進化するのだ。電車やバスに乗るより自分のクルマが欲しくなるという動きは今後、急速に進むはずだ。環境に優しくない論理だが、車社会が再び始まるとみている。それは人との接触など三密を避けるという大義の下、相手を詮索しながら自分の中で承認した人だけを受け入れる時代がやってくるいう意味でもある。

 例えばちょっとした店ではアポイントメントを要求するかもしれない。店のそばで順番を待たれるのを嫌い、順番待ちアプリで呼び出されるまで近くによるな、という店は確実に増えるかもしれない。となれば順番待ちアプリなり待たせる場所を提供するのもまた新たなるビジネスになるだろう。

ビジネスの世界では新陳代謝と考えるべき

 コロナは旧来のビジネスをステップアップさせるのでその進化についていけない会社や事業主は当然振り落とされる。だが、それはビジネスの世界では新陳代謝と考えるべきである。ビジネスには全員勝者という発想はない。勝ち抜きだとすれば自分が先頭に立つ知恵と先読みのセンスを磨かねばならない。その答えは何をどれだけ読んでも、あるいはどんな人に何を聞いても答えは出てこない。自分で考えつく自信に溢れたその知恵こそ、あなたを勝利に導くはずだ。

 トロントの再生を期待したい。そしてより活発で先進的な街に育ってくれることを願っている。