世代論・バズワード・経営論、本質はどこに?|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第52回

世代論・バズワード・経営論、本質はどこに?|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第52回

モノ消費・コト消費、イミ消費・トキ消費

 子育てをしていると、10歳の娘と8歳の息子の性格の違いに気づかされることがあります。
 娘は誕生日やクリスマスなど、特に欲しいものが見つからず、悩んだあげくにお金を貯めるなど、Z世代やにわかに耳にするようになってきたα世代の特徴を持ち合わせているなと感じます。

 一方、息子は物欲のかたまりのような性格で、あれも欲しいこれも欲しいと日々頭を悩ませています。時代はモノ消費からコト消費に移りつつある、というような言説にはまったく当てはまらず、モノがあふれる時代において、消費が幸福そのものであるかのような昭和的な価値観をもって彼は日々を過ごしています。

 そもそも、多様性が重んじられる時代において、世代に名前をつけてくくって本質を捉えようとする試み自体が野暮ったいのかもしれません。実際、この世代はこうだ、という画一的な理解があふれる一方で、趣味や価値観の細分化がすすんだ若者世代を、企業はとらえきれずにマーケティングに苦労している、というような話もまたありふれています。

 また、モノ消費、コト消費とググっていただければわかるように、それに続いてイミ消費、トキ消費といったプチバズワードが続きます。

逆・タイムマシン経営

 タイムマシン経営とは、既に未来を実現したシリコンバレーなどの成功モデルを持ち込むという戦略ですが、楠木建氏が提唱する逆・タイムマシン経営とは、過去に起こった事象が、当時どういった受け止められ方をして、どのような思考や考え方、行動につながったのか、と過去を吟味することで、本質を見据えるセンスと大局観をもって世の中をサバイブする、というような経営手法です。

 彼に言わせると、いつの時代も「いまこそ激動期」と騒がれていて、メディアの中では毎年、新たな産業革命が起こっており、100年に一度の危機や戦後最大の危機が頻発していると厳しい指摘をしています。

お店のキッチンに立って、お客さんに面と向かってラーメンを作っていると…

 逆・タイムマシン経営論?結局バズワードじゃないか笑、という声が聞こえてきそうですね。そして、かくいう私も、これまでさまざまな言葉や考え方をこのコラムで紹介してきたので、お前が言うか、という厳しい突っ込みは甘んじて受け入れるつもりですが、お店のキッチンに立って、お客さんに面と向かってラーメンを作っていると、ラーメンの味とサービス以外に、ラーメン屋の本質があり得るわけがない、と創業10年を間近にして感じるようになってきました。

 だいぶ遠回りをしてしまったようにも感じますし、腹に落ちるまでに必要だった期間のようにも感じます。いずれにしても、いまこのタイミングでこういう考え方が出来るようになったことを嬉しく思います。

 とある米国在住の臨床心理士のもとには、年収数千万円のテックカンパニーの社員や経営者が大勢カウンセリングに来て、「幸せではない」と言われるそうです。

 物質的に満たされ、何不自由ない暮らしを望んでいる人は大勢いるでしょうし、人の価値観や幸福感は様々ですが、少なくとも、娘や息子にはこうなってほしくはないなと願います。

 それから、世代論やバズワードについても、少なくともしがないラーメン屋のコラムのネタくらいにはなっています。否定するつもりはありませんので、悪しからず。