最悪な状況で、のらりくらりと幸せを見つける|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第43回

最悪な状況で、のらりくらりと幸せを見つける|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第43回

今年はのらりくらりと立ち回る

 昨年から年明けにかけて、従業員でコロナの陽性者が出たり、濃厚接触により出勤できなかったりと、たいへん混乱しておりました。とてもお店を開けられる状況ではなく、2週間ほどクローズしましたが、再開したのも束の間、陽性者の急増によりレストランはまたダインインが禁止となり、あげくの果てに大雪でお店が開けられず。そして冷凍ラーメンのデリバリーにも行けず。一年分の混乱が一挙にやってきたのかと思うほど、目まぐるしい一ヵ月でした。

 年明けから飛ばしていこうと思っておりましたが、完全に出鼻をくじかれた形になります。先月号で、今年は変化と挑戦の年にすると抱負を掲げましたが、今年はのらりくらりと立ち回る、という抱負に変更いたします。決して冗談でも自暴自棄になっているわけでもありません。

 というのも、順調に行けば1月31日には店内営業が再開しており、2月21日、3月14日と段階的に規制を緩めていくとオンタリオ州は発表しておりますが、過度な期待をしない方が精神衛生上よっぽど良い、というのがコロナの教訓かと思います。

 思えば、コロナ以前からいつだって問題は突発的に訪れるし、目標や予測はいつだって不測の事態によって修正を余儀なくされます。ビジネスにおいても、綿密なスケジュールを立てて、がちがちに固めたプランを元に実直にオペレーションを回す、というスタイルは過去の産物のように思います。それよりも7割ぐらいの段階で動き始め、常にプランB、Cを念頭に置きながら、走りながら考えるという方が今の時代にあっているのではないでしょうか。

『ビジョナリーカンパニー』の教え

 ビジネスの教科書としてよく知られる『ビジョナリーカンパニー』で、ジム・コリンズは、大量のものを試してうまくいったものを残す、という手法の重要性を説いています。

 末永く生き残り続けてきた企業は、ダーウィンの進化論よろしく、大量の突然変異を意識的に生み出し、うまくいったケースに集中して次なる時代を席捲していく、という趣旨になりますが、我らがラーメン雷神も、お弁当やラーメンのサブスクリプションなどたくさんの挑戦と失敗を重ねて、現在は冷凍ラーメンの自社デリバリーにたどり着いて、今後は他の飲食店さんと積極的にコラボレーションするなど、飲食店の枠にハマらずに進化していきます。

どうやらコロナを断ち切るのは難しい

 冒頭に話をもどすと、昨年でコロナを断ち切って、今年は変化と挑戦を、と思っていたのですが、どうやらコロナを断ち切るのは難しいようです。というわけで、自分のコントロールが効かないところに苦心して落ち込んでいてもしょうがないので、今年はのらりくらりと立ち回っていく所存です。

 先述したように、冗談でも自暴自棄でもありません。お店が開けられなければ子供とマリオカートをして遊べばいいし、大雪が降ってくれてようやくスノースケートボードを思いっきり試せるし、宇多田ヒカルの新譜は過去最高の出来でサム・シェパードは本当に良い仕事をしているし、日々の幸せはいたるところに見つけられます。

 もしかしたら、コロナがなかったらこういう価値観にも辿り着かなかったでしょう。ウィズコロナ時代を生きるヒントは、自分の内側にあるのかもしれません。