君は国際人になれるか?|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

これをお読みの方々はトロントなど海外で活躍されている方が多いと推測している。海外で暮らす以上、広く世界で活躍する「国際人」という言葉を意識したことはあるあろう。だが、どうしても思った通りにならないと悩んでいる方も多いのではないだろうか?そんな方に国際人の心がけをひも解いてみよう。これを読めばきっと気づきがあるはずだぞ。

新社会人時代

私が大学生の頃、世界を股にかけて仕事をしたいという漠とした思いがあった。なので就職活動は海外に行ける企業という切り口で商社、プラント会社、建設会社、メーカー、航空会社など傍から見れば見境がないアプローチだった。幸いにしていくつか拾ってくれそうな会社があったので熟考して海外志向が強いゼネコンに入社した。

だが、初めの3年間は日本の現場勤務。成田空港のそばで1年半ぐらい勤務していた時は頭上を飛ぶ飛行機が「近くて遠い存在」となり始めていた。そんな頃、会社のカリスマオーナーが現場視察に訪れた際、「海外に行きたい」と自己アピールをしたらその場で私を香港転勤させると人事部長に指示をした。人事部長が私の人事権を握っていた本社の部長に連絡すると「あいつはまだ青い。私が1年預かり、教育する」と言い、トップを説得してその場は収まった。

約束通り、ほぼ1年間本社勤務で「鍛えられた」のち、部長はカリスマトップに「そろそろ、よろしいかと思います」と報告したところ、「秘書室に上げろ」とのご下命がおりた。私はそれらのいきさつを全く知らないまま、秘書室勤務になる(この一連のストーリーが明かされたのは秘書になって大分たったころだ)。

秘書室勤務の時代

秘書室勤務の時代はカリスマオーナーと外部から新たに招へいした社長の両方にお仕えする形で厳しい教育を2年半受けることになる。多い年で年間出張が200日ということもあったし、その7割が海外だった。私は秘書というより「秘書官」だったのであらゆる実務や調整業務を行う立場にあり、海外の相当偉い方とのやり取りも業務の一環だった。その時、TPOとか国際プロトコル、更には外務省標準といった世界に通じるスタンダードを徹底的に教え込まれた。

ある出張でホテルをチェックアウトした際、オーナーから「お前、あのホテルにチップを誰にいくら渡した?」と問われ、「サービスを指揮したマネージャーに皆で分けてと言って100ドル渡しました」と答えれば「それじゃ少ない。300ドルは上げるべきだった」といった細かい教育も受けた。

ある時、シアトルで取締役会があった時、オーナーが「お前、アメリカ人を議論で打ち負かせる日本人を知っているか?この俺様しかいないぜ。今日はやっつけてやった」と言われたのは単なる自慢ではなく、論理展開し、論破するチカラがあればどんな相手でも追い込めると知らされ、強烈な印象となった。

国際人になるには何が必要か、といえば相手を知ることが最前提だ

相手とはビジネス、親善を問わない。例えば世界の歴史をあらかた頭の中に入れる。民族の歴史を理解する、宗教の基礎知識はマストで知るべき内容だ。その上で世界情勢を知る、あるいは各国の文化や社会情勢も理解しないとそもそもの会話が成り立たない。

海外に住む日本人の多くは英語でコミュニケーションが取れるので「国際人」っぽく見える。確かに言語は必須だが、それは単なるツールでしかなく、本当の会話、使う単語、議論は相手により戦略が完全に変わる。

私がバンクーバーの住宅開発事業をやっていた際、販売責任者を兼ねていた。販売担当者が持ち込む購入申し込みと諸条件を見ながら「購入目的」と「その人のエスニックやバックグラウンド」を確認していた。白人の居住目的なのか、中国人の投資目的か、それも香港人と台湾人でもまるで対応は変わる。イスラム系の方々との取引は別次元のレイヤーが必要だ。エスニックによる行動パターンを刻み込むことで国際人としての経験を積み上げることになる。

国際人としての冥利

テレビで国際会議のシーンを見かけることも多いだろう。そこに集まる人たちは世界中の民族の縮図だと考えてよい。それら違う常識観、価値観、観念を持っている人々が一堂に会し、一つの方向性を決め、結論を出す作業は並大抵ではない。だが、それこそ国際人の冥利だともいえるだろう。

エスニックを知識として理解するにはコミュニティーの集りに積極的に参加することだ。カナダ程それが充実している国はない。特に夏になれば様々な祭りやイベントが毎週どこかで企画されているだろう。バンクーバーでもインド人、イラン人、イタリア人、台湾人…といったコミュニティーのイベントがずらりと並ぶ。そこで見る絵図は極めて特徴的であるが、カナダという国際社会で通じるコモンセンスも垣間見ることができる。

常に気付きを自分にインプットする

国際人になるためには書物をひも解いてもよい。だが、それ以上に自分の感性を研ぎ澄ませ、鈍感にならず、常に気付きを自分にインプットすることが大事だ。その為にも外に出る、経験値を上げる、会話をする、行動を共にすれば見えてくるものが必ずあるはずだ。それこそ、一緒に食事に行けばどんなメニューを選択し、どう食べ、会話の展開、そして会計まで民族性を感じることができる。

我々はそんな素晴らしい環境の中で暮らしていることを忘れないで欲しい。そして誰でも国際人になれるチャンスがあることを胸に秘め、今日も街に飛び出しみよう。