仕事の価値観ってなに?|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

「仕事の価値」とか「働き方改革」といった小難しい話題がよく展開されている。ではブラック企業って何なのだろうかと分析をしたことがあるだろうか?外から見て日本のこれらの話題をばっさり、切り口を変えて考えてみよう。今のあなたの仕事はやりがいがあるのだろうか、と。

X世代、Y世代、Z世代という言葉を聞いたことがあるだろう。

X世代は今の40代前半〜50代後半ぐらい、Y世代が30代前半から40代前半、Z世代が10代後半から30代前半までと言われている。あくまでも目安できっちりした区別があるわけではないので両方にかぶっている人もいるし、個々によりXなんだけどYっぽい人がいるとか、YなのにZの人がいることもある。

この区分けは育った世代の時代背景がその人の行動規範に強く影響したものだと考えてよい。例えばX世代は50代後半までというけれど60代前半まで入れてもたいして差異は少ない。一方、団塊ジュニアという1971年生まれから74生まれの人を差す特定の区切りもあり、特定の括りとみることもできるが団塊世代のような明白な特徴はないと思われる。

では仕事の価値観とか働き方改革がなぜ、今になって話題になるのだろうか?

私の超単純化した切り口はXとZでは交じり合わない、それだけなのだ。つまり、XとYは隣接しているので価値観は違うけれど言わんとしていることは理解できる。同様にYとZもそうだ。ところがXとZでは2廻りの差が出るので価値観を共有できないのだ。その考え方を展開するならばYとα世代(Z世代の後)とも合わないはずだ。ただα世代はまだ社会人になっていない。

私は今、61歳だ。仕事や社会生活を営む上で団塊の世代(1947年から49年生まれ)の人たちとの時間の共有度は半端なく濃かった。今の年齢でいう76歳から74歳の方々だ。何故なら日本の会社人生において彼らがその主導権を握り、彼らのやり方が社会の常識だったからだ。それは人との接点のみならず、文化や行動、考え方全てにおいて彼らの強い押し付けの精神と「高度成長期を勝ち抜いた自負」の塊が社会における圧倒的支配力となったのだ。

体育会系企業、いわゆるブラック企業の基本は「知恵のない者は靴底を減らせ」と言われた。頭がシャープでないならば外回りをして仕事を取ってこい、という意味だ。私の2級上の先輩が某証券会社に入社した際、朝、外回りに出かけ、10枚の新しい名刺をもらってこないと帰社に及ばず、だったそうだ。「どうしたのですか?」と聞けばひたすら飛び込み営業、ビルならば下から上まで全部舐めるように廻ったそうだ。

バブル崩壊とOwn Worldの萌芽期

団塊の世代が中心となり、社会や仕事の規範を作ったが、それが音を立てて崩れたのがバブル崩壊だ。一方、X世代はバブルを体験してない世代だ(知っていても社会人ではない)。彼らはそれまでのブランド志向、高級品志向、他人の物まね志向から個性を育むようになった。ルイヴィトンを捨てて街中の名も知れぬお店で見つけた自分だけのバッグを愛用するようになる。Own Worldの萌芽期ともいえる。故に彼らは会社が終わった後の飲み会は極力避けたのだ。

これを後押ししたのがウィンドウズ95の登場だ。ここから恐ろしいほどのコンピューター化、IT化、そしてスマホ社会が登場する。これで社会は完全に変質化し、感受性の高い若者がトレンドのリーダーとなり始めた。ここでXとY世代の共通点は発信力がある点だ。これはWeb2の世代に合致する。多分、Z世代もそうだ思うが、Web3の発想がα世代に急激に浸透してきているため、世代間に大きな断絶が起きるはずだ。

X世代が愛用するフェイスブックはα世代にとってはゴミだろう。Web3の世界の基本はDAO(分散型自立組織)であり、フェイスブックのように友達の数といいねの数よりも自分の世界を理解してくれる人たちだけのクローズドの世界感で内向的な社会形成となる。つまり、敵は初めから排除されるのだ。例えは悪いが大陸でいろいろな人と揉まれるより人が寄り付かない島で同胞だけが集まって仲良く暮らすことを好む社会だ。それが良いかどうかは私は判断しない。だが、それが事実だ。

働き方改革=世代間のすり合わせ

仕事の価値観とか働き方改革というのはこれら世代間の断絶をどう埋めるか、それだけに過ぎないのだ。例えば世の中にXとY世代しかいないとか、Zとα世代しかいないというならこれは断絶が起きない。だが、一つ飛び越えたXとZとかYとαでは断絶が起きるのだ。発想の基盤が相違するため価値観を共有できない。故に問題意識を持つ下の世代が社会に声を上げるということだ。

例えば私の世代では長時間労働は何とも思わない。それが楽しければ1カ月休みがなくても苦痛ではない。よってブラック企業という発想そのものが存在しなかったのだ。それが生まれたのはZ世代が社会に出始めた10年前ぐらいということになる。時間軸は合致しているはずだ。

働き方改革というのはある意味、世代間のすり合わせだと考えてよい。よってその言葉に固執するより自分は仕事を前向きに捉え、楽しくこなしているかという観点で見直した方がいい。こんな会社、こんな組織はクソくらえ、と文句を言う前に自分がその仕事を楽しんでいるかどうか、それの方が重要だということだ。そして上がすり合わせるばかりではなく、下が上を理解する努力もまた必要になってこよう。

皆さんの仕事が前向きになることを祈る。