景気は悪くなるの?金利は上がるの?家は今買うべきなの?|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

景気は悪くなるの?金利は上がるの?家は今買うべきなの?|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

 何処に行っても物価の大幅上昇で生活しづらくなったなーと実感する日々だと思うが、いったいこの先どうなるのか、心配な方も多いだろう。家を買う予定だったのに、あるいは家を売る予定だったのにこのタイミングはどうなのと思う方もいらっしゃるだろう。専門家に聞いても都合のよい答えしか返ってこないのが正直なところ。ではどうなるのか、皆さんと一緒に考えてみよう。

 今年1月から6月のアメリカの株価指標は歴史的な下げだったと言われても「?」という方が多いだろう。理由は真綿で首を絞めるような下げだったからだ。例えば2008年のリーマンショック、2020年のコロナの時は一気に崩壊するような下げに見舞われたのだが、今年前半はじわじわと期待を持たせながら下げ続けるという嫌な下落を見た。この違いを考えることで少しずつ解きほどいてみよう。

懸念の物価高は落ち着くだろう!?

 コロナから解放されたとき、人々の行動にどんな違いが起きたのだろうか?コロナの2年間は自宅に閉じ込められた感が強く、人々は消費へのフラストレーションをためた。結果としてアマゾンなどオンラインショッピングや室内でエクササイズが楽しくできるペロトンの自転車を購入したりして一定の消費をできる範囲で楽しんだ。

 ところが、コロナからの解放が近づくにつれ人々はレストランに行き、小旅行に行き、人々が集まるイベントなどに参加するようになる。これを小難しい言葉でいうなら消費者行動の変化という。

 その間、北米の小売業者には在庫が積もりあがってしまった。そのため、この夏は在庫調整で一部ではバーゲンを行っている。では感謝祭とクリスマス商戦の見込みだが個人的には例年並みだろうとみている。つまり、中国やアジア地区からのコンテナ船の状況はコロナ特需から平常に戻るはずで、事実、この6〜7月の西海岸の港湾事情は大きく改善している。

 コロナからの解放により人々の消費行動に変化が現れたことでサービス業ではスタッフが不足する事態が生じ、労働賃金を引き上げないと従業員が集まらない事態になった。これを労働のインバランスと称し、労働者が適材適所にいないことを言う。ただ、これもいずれ沈静化するであろう。

 これは人々の行動が環境変化に対して一時的に強い反応が出やすいもののピークから一定時間のちに必ず落ち着くことは様々なデータで検証できるからだ。とすればここだけ見れば、皆さんが懸念している物価高は落ち着くと想定できる。

利上げは秋にはスローダウン、年末から年始には止まる!?

 だが、問題はアメリカやカナダの中央銀行だ。彼らは「物価高はシリアスでこのまま放置すればもっと厳しい状況になる。よって金利を上げ、消費活動を少し抑制しなくてはいけない」と考えている。本稿が皆様の目に留まるころはアメリカもカナダももう一段の利上げをしているはずだ。そして中央銀行は強気の姿勢を崩さないだろう。これが実は景気の腰を折る最大のリスクとなっている。

 コロナで政府などからもらった支援金は富裕層ではまだ使い切っていないものの一般大衆ほど使っているという統計がある。事実アメリカではクレジットカードローンが急拡大しており、一般的な家庭では一時的に貯蓄していた支援金はほぼ使い切るところにある。その上、金利が上昇すればカードローン金利は極めて高いものになり、家計は痛む一方になる。

 個人的にはアメリカ、カナダの利上げは早ければ秋にはスローダウンとなり、年末から年始には利上げは止まるとみている。

 超長期の経済を見ると国家の成熟度が増せば増すほど金利は低めに抑えられる傾向がある。よって今回の利上げも中央銀行が言うほどアグレッシブにならず、物価は安定し、労働コストは落ち着くであろう。これは成熟国家は経済振れ幅に対する吸収度合いが新興国に比べはるかに高いことも一因だ。

不動産は長期トレンドでは右肩上がり

 では家を買おう、売ろうという人たちはどう考えたらよいのだろうか?私は既にこの分析を自身のブログで紹介しているが、カナダに於いて過去の経済危機の際、概ね15%程度の価格調整が起きているが、その後、数年で回復しており、長期トレンドでの右肩上がりに変化はない。

 理由はカナダの安定的な人口増加と環境や建設資材の高騰による新築物件の価格上昇傾向が変わらず、中古物件はその価格に引っ張られる形で上昇するからだ。よって今回、一定の価格調整があるとしても数年で元に戻り、そのあとも安定的に上昇基調を辿ると分析するのが正しい解となる。

番狂わせは!?

 では番狂わせはないのだろうか?ここが誰にもわからない最大の問題だ。1つはウクライナ問題がいつどうやって終結するか、そしてその場合のウクライナ復興に要する100兆円規模の資材と人材をどう工面するかにある。2つ目はロシアが進むべき道だ。もしもロシアがBRICKSを中心とした世界グループと結託し、地球ベースのグローバル経済を完全に二分するなら世界の経済規模と供給能力は大きく縮小し、消費を支えきれなくなる。この場合は厳しいインフレを覚悟しなくてはならず、金利が高いのに物価も高いというスタグフレーションのリスクが起こりうる。

 また、混とんとするアメリカやフランス、英国などの国内事情も安定的経済というお題目からはネガティブ材料になろう。米中関係の行方はサプライチェーンに於いて最大の注目事項になろう。

 それらを考え合わせるとこの秋に物価問題とは別次元の荒れ模様の一幕があっても驚きはしない。シートベルトはしっかり締めた方がよさそうだ。