ポストコロナの世界|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

ポストコロナの世界|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

 季節的要因もあるのだろう、世界的にコロナの感染者数は1月初旬を直近のピークとして数字上は改善の方向にある。この後、ワクチンが一般の方にも出回るようになるといよいよ本格的な終息と各種制限からの解放が少しずつ見えてくるかもしれない。いつかは来るポストコロナの世界は人間社会にとってどのようなタイムマシーンとなるのか考えてみよう。

 コロナが終わったら何をしたいか、そんなネット検索をするとその内容に全くサプライズ感はなく、旅行、飲食、買い物と出る。つまり、今まで制限されていたことの反動が来るというわけで巷で言われる「コロナ後は元に戻らない」なんていう大げさな話はやや声を潜めた気がする。

 パンデミックが引き起こしたもの、それは人々のマインドや常識観を一時的に制限し、我慢を強いることに他ならない。例えは悪いが、刑務所に入っていた人が出所した時、一番にすることは何か、と言えばタバコを吸う、酒を飲む、旨いものを食う、が概ね相場だろう。つまり元に戻る、これが基本だと考えている。

 だが、刑務所に入っている人は自由が利かないし、クリエーティブな発想も限定されるが我々人間社会は一定の枠組みの中でより発展的な創造力を生み出した。その一つがオンライン会議、もう一つがフードの宅配でこれがコロナで生み出された二大チェンジかもしれない。

 この二つの新たに生み出されたツールを軸に考えると少し面白い展開ができる。

コロナで生み出された「オンライン会議」と「フードの宅配」

 まず、オンライン会議だが、これは技術的には別に珍しいものではなかったし、動画にこだわらなければ電話会議は20年前でもやっていた。なぜ、オンライン会議が突如目覚めたかと言えば使いやすいアプリが登場し、そのマーケティングが極めて優れていたからであろう。オンライン会議のアプリはたくさんあるが、ZOOM現象は無視できなかったし、多くの人のディバイスにZOOMのアプリが入っていて既に何度も使っていることからハンディさで優位にある。もちろん、用途や業界によって使う会議ツールはそれぞれのようだが、オンラインでかなり違和感なくやり取りができるようになったのは人々の行動規範を変えたと思っている。

 振り返ってみれば、インターネットが普及し、国際電話もアプリで無料、日本の固定電話にかけるにもアプリ経由ならば1分2〜3円ぐらいとなった。そうすると長話をしてもお財布は痛まず、国際間の移動の頻度は落とせるようになった。ビジネスマンが不要不急の出張をしなくなったのはコロナのはるか前からやっていたことでオンライン会議アプリでいよいよ、ビジネスの移動は減るのだろうな、というのがポストコロナで予見できる一つ目。

 もう一つは飲食店の価値観ではないだろうか?1年以上、レストラン内でゆっくり食事をすることを忘れ、かといって家で作るのもどうかという人のために宅配ビジネスが大沸騰した。しかし、私はこれはブームであっていずれ沈静化した時、生き残れる飲食店とそうではない飲食店が生まれるだろうとみている。

 例えばラーメンを含む汁物は出来上がった瞬間からの鮮度の落ち方は尋常ではないペースだ。誰か数値化したら面白いと思う。出来てから30分経ったラーメンを食べる勇気は私にはない。もちろん、麺とスープと具材が別々に分かれていても、だ。私は四国の高松が第二の故郷で幼少時からうどんを食べまくっていた。あの讃岐うどんは打ってから最大2時間が限界。マクドナルドで注文が入らないと数分から20分程度で廃棄しているのと同じだ。つまり、売り手が鮮度が落ちた商品を売るのは本質的には正しくない。

 一方で私は中華の持ち帰りをよくしている。持ち帰ると当然冷めているのでチンをするわけだがレストランで食べる味には程遠いものの普段の食生活なら問題はない。つまり受け入れ可能の妥協がどこにあるかがポイントだ。

 私の予見する飲食の世界は二極化だと考えている。例えばフランス料理や懐石のコース、鉄板焼きは宅配では食べられまい。つまりそこに行かないと品質やプレゼン、サービスを受けられない囲い込みができるビジネスは生き残れる。一方でいま、宅配で潤っているレストランは「やむを得ず、宅配に頼っている」という客層が落ちることを懸念した方がいい。つまり中途半端が一番厳しくなり、コロナ後に本当の淘汰があると思っている。

ポストコロナで変わるもの、変わらないものはいろいろある

 例えば住宅に関して郊外に住むのは不動産価値だけを捉えれば不正解。理由はヒトはオンライン化ぐらいで人間との接触関係を割り切れる動物ではないのであって群れることは動物的本能だと考えている。だから高くてもより人が集積するエリアの不動産価値が中期的に上昇するのは間違いない。

 一方、フィットネスは自宅でするようになるだろう。それをサポートするのが数々のフィットネス系アプリとスマートミラーとみている。汗くさいヨガスタジオに誰が好き好んで行きたいのだろう。自宅にいながらヨガスタジオにいる状況が生み出せるテクノロジーは既に紹介されつつある。既に音や画像で臨場感を出すようになってきているがスマートミラーは用途が様々あり、すさまじい発展を遂げ、一家に一枚の時代が来そうだ。

 こうみるとポストコロナで変わるもの、変わらないもの、ダメになるものなどいろいろ出てきそうだ。我々が間もなく「出所」した時の第一声はなんというのだろう。私は案外、人里離れたところをハイキングでもしながら「よかった、よかった」と笑っている気もするが。