【11月1日~4日】 日本の駅ナカが ユニオン駅に登場!「駅を中心とした街づくり」を再現・紹介するイベント「Next Stop:Japan」が開催 |在トロント日本国総領事館・佐々山 拓也総領事に聞く「日本の優れた鉄道インフラ技術とソフトパワーでトロントの発展に貢献へ」|特集「わたしはTIFFも楽しんで就活も頑張る!」

【11月1日~4日】 日本の駅ナカが ユニオン駅に登場!「駅を中心とした街づくり」を再現・紹介するイベント「Next Stop:Japan」が開催 |在トロント日本国総領事館・佐々山 拓也総領事に聞く「日本の優れた鉄道インフラ技術とソフトパワーでトロントの発展に貢献へ」|特集「わたしはTIFFも楽しんで就活も頑張る!」

今年11月1日から4日、トロント市内最大のユニオン駅において、「駅を中心とした街づくり」という日本の都市開発の経験および駅利用のあり方の一部を再現・紹介するイベント(Next Stop:Japan)が開催される。

イベントは、日本に関心を持つ市民を対象に、日本ファンのコミュニティーを形成し、日本の文化、観光情報、そして日本製品のプロモーションを行うことを目的としており、総領事館、ジェトロ、ジャパンファウンデーション、JNTOが協力しオールジャパンでの4社共催となる。

日本政府は在外公館を通じて世界各国のインフラ整備・鉄道プロジェクトの事業支援に力を入れており、長年に渡りカナダ・オンタリオ州でも様々な取り組みが行われている。SDGsなどの観点から持続可能な都市開発が求められる今、日本が推し進めるTOD(公共交通指向型開発)は世界のモデルケースになっている。

佐々山総領事

日本国は欧米に先んじて進んだTODを各国に推薦・推奨しておりますが、インフラ支援というものは5年、10年といった長期的ビジョンでの取り組みになります。これまでもロンドンやニューヨークなどで駅を利用したプロモーションは度々行われてきましたが、ここトロントでは実績がなく、多くのトロント市民の人たちがまだ体験したことがないといった背景から、日本ならではの駅ナカを紹介することで、TODの認知やさらなる支持に繋げていってはどうかと考えたことが、今回のイベントのきっかけになっています。

カナダの経済首都とも言われる最大都市のトロントは、積極的な移民受け入れによる人口増加を背景に、今後の成長とそれに伴う交通渋滞・既存インフラの整備が重要課題とされている。

佐々山総領事

人口が急増するオンタリオ州では新たなインフラ・都市開発の必要が広く認識されています。トロントは300万人を越える人口を擁し(トロント圏は約700万人)、毎年約10万人規模で人口が増加しています。今後も中長期的に人口増加は継続すると見込まれているほか、トロントは、ニューヨーク、ロスに次ぐ北米第3の都市であり、こうした人口増加も相まって、オンタリオ州およびトロント市ではインフラ・都市開発が喫緊の課題になっています。

オンタリオ州政府もメトロリンクスによる「GO Expansion」というプロジェクトを推進しています。このプロジェクトは、駅の改築や拡張のほか、ラッシュアワーの通勤サービスのため、より高速な電車や多くの駅、多くのサービスを提供し、地域の生活を変える交通サービスを構築することを目指しています。

実際、ヴィック・フェデリ州経済大臣はここ1年で複数回にわたり日本を訪れており、地下鉄や新幹線も体験しています。また、今年1月末には、キンガ・サーマ州インフラ大臣が訪日し、「みなとみらい」など都市型コミュニティーを視察しました。みなとみらいは、もともと造船所や倉庫、貨物鉄道の駅があった場所で、長い時間を経て今の形に再開発されています。今年2月に行われました天皇誕生日祝賀レセプションのスピーチに立ったキンガ・サーマ州インフラ大臣は、日本視察を振り返り「私の人生を変えた」とお話されていました。実地で視察いただくことで、ぜひ「みなとみらい」のような再開発をトロントやオンタリオ州でも取り組めないかというイメージにつながったのではないでしょうか。

日本には駅や鉄道を中心にコミュニティーを形成してきた歴史があります。駅を中心とした街づくりは、日本の近代化とりわけ地域社会の発展に大きな役割を果たしてきました。トロントのような大都市一極集中ではなく、郊外にある地方の駅で、地元産品を活用しながら地域経済の活発化を促すというような考え方もできます。

また、駅周辺に住宅をつくりコミュニティーを形成し、高齢者の方は徒歩圏内で生活ができたり、学校や病院といった社会インフラが建設され、世代を繋げる社会の実現が可能になります。その時々の社会的課題に対して駅を中心とする地域コミュニティーで解決するといった日本型の課題解決型の都市開発に、オンタリオ州政府やトロント市の要人は高い関心を示してくれています。

州政府では「Transit-Oriented Communities」として開発を推進しており、直近では、地下鉄オンタリオ線沿線の開発が行われる予定です。駅・鉄道を中心にコミュニティーを形成してきた日本国の知見や、国鉄民営化等の経験はこれらのプロジェクトの後押しになるほか、日系企業の参画意義も大いにあると思います。

【事例01】
駅舎のアップグレードやさらなる収益力の向上を目指す集客方法について、日本の経験を踏まえたコンサルティングやアドバイスは日本ができる具体的な支援である

オンタリオ州においては州政府の鉄道は公社であるメトロリンクスが手がけており、通勤サービスなど拡充をしつつあるが、メトロリンクスの収益は乗客の運賃等の割合は多くはなく、州政府の補助金が使われている。

この点、JR各社始め日本の鉄道はエキナカや沿線の開発を通じて鉄道以外の事業でも、リテールやサービス業、不動産やホテル運営など事業を多角化した上で大きな収益を上げ、同時に利用者の利便性も高めている。

また鉄道インフラの整備や維持管理にあたっても日本企業の高い技術が活用されている。(佐々山総領事メッセージより)

【事例02】
昨年2022年には、日系企業の支援の一環としてメトロリンクスの幹部を公邸に招き、インフラ整備における鉄道プロジェクトの分野に関して日本の高い技術や知見に基づくプロジェクトの実例などを紹介

JR東日本は既存駅改良・エキナカ開発事例について紹介。

日立とヤマハミュージック、キヤノンからはそれぞれこれまでのインフラ整備の実績、駅ピアノなどの日本での取り組み、また駅全体や車両をラップアップしサイネージで駅全体を明るくするプロジェクトなどが紹介された。

また古河電工は、日本の高いリサイクル技術を利用し環境に優しく、且つ工期を短縮することでコストダウンにもつながる鉄道インフラプロジェクトの工法が説明された。(佐々山総領事メッセージより)

【事例03】
日本の優れた鉄道インフラ技術は、トロントの交通や環境にも貢献

日立製作所は、トロントで計画中の「オンタリオ線(Ontario Line)」の車両製造、運行システム、さらに開通後30年間にわたるオペレーションおよびメンテナンスを、グループ会社である日立レールを中心とするコンソーシアム「Connect 6ix」が受注。

日立グループの世界最先端のデジタル列車制御システム(運転間隔最短90秒という高度な輸送サービスを可能にする技術)が採用される。

このプロジェクトにより1日当たり2万8千台分の自動車交通量の減少および年間720万リットル分の燃料削減が見込まれ、渋滞緩和だけでなく、温室効果ガス排出量の削減につながることも期待されている。(株式会社国際協力銀行ホームページより)

日本が誇る都市交通型コミュニティー。少子高齢化、過疎、大都市一極集中、自然災害など日本がこれまで培ってきた知見が活かされる。

佐々山総領事

日本とカナダは同じ先進国でG7に属しており、高齢化社会、社会の多様性、環境問題などをいかに社会全体で共有していくか、社会的課題も共通している部分も多いです。

その社会的課題の解決策の一つとして公共交通指向型インフラ開発を進めコミュニティーを形成し、多様性を確保することなどが挙げられます。数ある課題の解決を政府が推進しているという意味でも、日本とカナダそして州政府も同じ方向を向いていると思っています。

鉄道というのは、北米では日本の遥か前から存在し発達していきました。ヨーロッパもまた違う独自の文化を持っています。なので、ここに日本式を持ってくるというのは、実は古いようで新しい取り組みになるのではないかと思っています。

カナダにおいても、ウィンザー、トロント、モントリオール、ケベックをつなぐような日本では想像できない長距離の鉄道があり、日本とはスケールの違う規模の事業の潜在価値がG7の1国の最大都市にあるわけです。環境関連やリサイクル、水素・アンモニアなど次世代エネルギーなどの分野で日本企業やスタートアップの参入機会は大いにチャンスがあると考えています。今後、交通インフラ開発への参画なども始まっていき、実際に興味を示している日系企業もありますが、このようなイベントを通じてより多くの日本の企業にビジネスチャンスを知ってもらい、次の発展につながっていけば幸いです。

日本の鉄道の海外展開は技術が関わるハード面が主だったが、駅ナカや駅弁といったような日本ならではのカルチャーから生まれたソフトパワーにも注目

佐々山総領事

今回11月に開催するユニオン駅でのイベントは各地で行われている日本祭りとはコンセプトが異なります。大きな目的として、長期的な視点に立ってオンタリオ州の公共交通指向型インフラ開発を支援することの一環として、日本の駅ナカの様子を再現および紹介するものを目指しています。

例えば、ご当地グルメとして代表的な駅弁。地方の産品を使い特徴的な駅弁は多くの方に親しまれるだけでなく、地域活性化の一助にもなります。また、日本だけではありませんが、駅ピアノもその一つです。移動のためだけでなく、駅で時間を過ごし少しでも豊かな気持ちにさせてくれるという駅ならではの効用を訴求したいと考えています。

また、JETROとアマゾンがコラボして開設した「JAPAN STORE」からは、普段オンラインで販売されている日本の高品質でユニークな製品を手に取って体験することができます。

さらに、我々日本人ではなかなか気づかない、海外の人からすれば目を見張るような発見やツール、強みなどを紹介していく予定です。

一例として、日本の駅に行くとそれぞれのホームや、特急や普通車に応じて流れてくるメロディーが違ったりします。各駅ごとに独自のメロディーがあったり、利用者とのコミュニケーションを図るような細かいところにまでバラエティーがあります。

今回のイベントでは、鉄道オタクとして23万8千人ものフォロワーを持つトロント在住のユーチューバー・Reece Martinさんにも協力いただき、日本の発車メロディーの紹介動画をイベントまでに作っていただく予定で、このような取り組みを通じて実際のイベントに繋げていく考えです。

Reece MartinさんYouTubeチャンネル
「RM Transit」
https://www.youtube.com/@RMTransit

またJETROにも鉄道に大変詳しい方がいらっしゃるので、その二人を合わせてイベント中にトークショーを行うなど、我々とは違う視点で日本人が気づいていない日本の良さなどの再発見にも通じる企画になればと思っています。

カナダからの訪日観光客数はコロナ前をすでに上回る。新たなリピーター獲得のため日本の官民によるイベントを実現。

イベントは、日系企業の協力も得つつ、日本の駅構内で見られる小物、工芸品、駅弁、酒等を紹介・販売し、トロント市民に体験してもらう機会をユニオン駅のWest Wing等で提供します。現在、参加を表明している日系企業は、日本食・アパレル・雑貨等を中心におよそ数十社に上っています。また、日本の地方自治体からも岩手県や静岡市などからこのイベントに協力いただく予定です。

そして、広く文化紹介の観点から検討している文化事業については、当地の在留邦人および団体を中心に参加を打診しており、着物、生花、金継ぎ、茶道など多くの参加を見込んでいます。

JNTOの統計によると、カナダからの訪日観光客数は他の先進国を凌ぎ、すでにコロナ前を上回っており、高いポテンシャルを感じます。そういった観点から、今後は訪日観光客のリピーターをいかに増やしていくかということが課題になります。

日本の文化や慣わしを魅力に感じてもらい、何年か一度訪れてもらったり、新しいものを見つけにいくような取り組みが必要になります。

今回はトロントで伝統文化やまだ知られていない製品や我々でも知らないような日本のモノ・コトを体感してもらい、今後の訪日観光の促進とリピーター作りの施策にも繋げていきたいです。

今年は、日加修好95周年という記念すべき年でもあります。トロント最大のユニオン駅で日本の魅力を発信し、さらなる日本のファンを増やすため、トロントの人がまだ体験したことがないような体験や見たことがない製品なども紹介していくよう鋭意励んでいます。

読者の日本人の方々にもぜひ足を運んでいただき、日本が誇る製品や日本の良さの再発見をしていただければと思います。