【有望な協業先が見つかる国・スタートアップ大国カナダ】ジェトロ・トロントの 山田あゆみ氏に聞く「Collision 2023」|特集「AI新天地カナダ 」

【有望な協業先が見つかる国・スタートアップ大国カナダ】ジェトロ・トロントの 山田あゆみ氏に聞く「Collision 2023」|特集「AI新天地カナダ 」

北米最大級のスタートアップカンファレンス「Collison(コリジョン)」。ジェトロ・トロントは、6月26日インキュベーターのDMZと連携し、スタートアップ・日本企業(カナダ企業とのオープンイノベーションを検討する大企業)を対象としたカナダエコシステムの勉強会、その後カナダのエコシステムプレーヤーを集めたネットワーキングを開催した。
今年はスタートアップ8社の出展をサポートし、自社出展する2社についても側面支援したジェトロ。日系スタートアップの挑戦を後押し、北米でコネクションの形成を促進に努めている。

ーコリジョン開催に合わせて「8社の日本のスタートアップ企業の出展支援」「日本の大企業のオープンイノベーション支援」という2つのプログラムを組まれましたが、反響や手応えなどいかがでしたでしょうか?

日本から海外への渡航を控える風潮が弱まり、日本のスタートアップ企業も大企業も、海外で積極的に活動をされているという印象を受けました。

昨年のCollisionでは日本からの渡航が叶わず、参加を見送ったスタートアップも多かったですが、今回の出展企業募集にあたっては定員を大きく上回るスタートアップからの申し込みがあり、優れた技術やサービスを有する8社を選定し、出展支援をすることができました。

大企業についてはなんと約30社が本プログラムに参加しました。数だけではなく、企業の参加理由が「カナダのイノベーション事情への一般的な関心」だけでなく、「カナダは有望な協業先の見つかる国で、具体的に今後の自社の事業にどうつなげるのか」という一歩進んだ段階の企業が増えたように感じました。
その結果、スタートアップ企業も大企業も今後の顧客獲得や投資、協業連携といった成果に繋がる可能性のある商談が多くなされたように感じています。

ーコリジョン2023における成果などを教えてください。

スタートアップ企業については、今年度からToronto Metropolitan系列の老舗インキュベーターであるDMZとパートナーシップを組み、Collision出展前からメンタリングやマッチングといった個別支援を受けた上で本番に臨んでいただきました。そうした支援の効果もあり、Collision期間中には参加したスタートアップ合計で約300の商談を行いました。その中で投資や顧客獲得の見込みがあるものについては、継続した商談が現在も続けられている模様です。

また、Collision内のピッチコンテスト「PITCH」では、法的文書に関する作業の自動化を支援する日系スタートアップ「Booth
Draft」が2千社以上が参加した予選を勝ち抜き、70社が参加する本選に出場することができました。

日本企業についてもCollisionを通じて多くの企業との商談を行い、複数の参加企業がCollisionで出会った企業・組織へのフォローアップを行っています。
イベント後のアンケートでは、「今回で出会ったカナダ企業との協業や出資を具体的に検討する」という回答もあり、これからの展開が楽しみです。

ープログラムではウォータールー地域エコシステム訪問ツアーも組まれていましたが、当日の様子や内容も教えてください。

ウォータールー地域は理工系大学としてカナダ屈指の「ウォータールー大学」を中心としたイノベーションエコシステムを形成する有名な地域です。ジェトロはCollision終了翌日にバスツアーを仕立て、同地域発のイノベーションや企業・人材に関心のある日本企業(23社27名)の皆様をお連れしました。

ツアー前にはトロント総領事館と連携し、同地域で活躍されるコンサルタントの山口哲さんを講師とした事前勉強会を催し、参加者の皆様に同地域の理解を深めていただくよう工夫をしました。

ツアー当日は、午前からお昼にかけて「Communitech」や「Accelerator Centre」といったスタートアップ支援機関を訪問し、各機関の支援プログラムについての発表を受けるとともに、Waterloo EDC(ウォータールー地域の経済開発公社)の担当者からは同地域の成り立ちや特徴などについての説明を受けました。

午後はウォータールー大学を訪問しました。同大学は大学を挙げての起業家育成の仕組みがプログラム化されていることや、「Co-opプログラム」という学生のインターン制度においてはカナダ国内で最大規模を誇っています。大学からはそうしたプログラムへの取組とともに、大学と民間企業との連携事例についての発表がありました。日本人は総じてセミナー等で質疑応答はあまり多くありませんが、参加者からは各訪問先で非常に多くの質問があり、皆熱心に発表を聞かれていました。

帰りの道中では「自社単独ではリーチできないエコシステム関係者とコネクトを持てた」という嬉しいコメントや「ウォタールー大学は日本の大学とは全く異なる取り組みが実施されており、大変刺激になった。ポテンシャルを感じる」という感想を多数頂戴しました。

またツアーを経て、複数の日本企業から「Co-opプログラム」のインターン受け入れを前向きに検討したいという問い合わせがあり、現在ジェトロから大学担当者に連絡をし、受け入れに関する制度情報の収集を行っているところです。

ースタートアップ界隈におけるカナダの立ち位置や注目度を教えてください。

カナダは世界的にも認知されるスタートアップ大国ですが、今までよく知らなかったという日本企業の声をよく聞きます。大手調査会社Startup Blinkの2023年のレポートによると、カナダはアメリカ、イギリス、イスラエルと並んで「世界で最も強力なスタートアップエコシステムを確立している国」としてランキングされるスタートアップ大国です。

スタートアップ育成への政府の手厚い支援、良質な人材、就労許可やスタートアップビザの取りやすさ、アメリカ市場へのアクセスのしやすさ等といった特徴を持ち、世界から注目を集めています。またカナダは国内市場が小さいため、創業時よりグローバル市場を志すスタートアップ企業が多いという特徴も持ち合わせます。

ーコリジョンは来年もトロントで開催することが決まりました。来年に向けての取り組みなどを教えてください。

もしかしたら今年がトロント開催の最後の年かと思っていたので、来年の開催が決まり、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。
具体的な計画はまだ先になりますが、まずは今回のCollisionプログラムに参加いただいた日本企業の皆様のそれぞれの成果に繋げられるように、個別にフォローアップを行っていきたいと思っています。

また、さらに多くの日本企業の皆様にカナダの魅力を伝えていく活動を続け、今年よりも更に多くの日本企業の皆様にCollisionにお越しいただきたいと思います。

ソーシャルシーン6月26日 @DMZ

DMZ・EXECUTIVE DIRECTOR Abdullah Snobar氏
斎藤健史 ジェトロ・トロント事務所所長
佐々山拓也 在トロント日本国総領事
イベント参加者たち