四国ってどんなところ?―(1)まずは四万十川へ|紀行家 石原牧子の思い切って『旅』第72回

四万十川と岩間沈下橋。四国観光パンフにのる写真の撮影スポット
四万十川と岩間沈下橋。四国観光パンフにのる写真の撮影スポット

先延ばしにしない旅行

 豪雨による土砂崩れやコロナ禍で四国行きを断念したのは記憶に新しい。旅行が解禁になって数ヶ月が経つが、四国は感染者数が全国でもかなり低いのとホテルは全て接種済証明の提示を課しているなど、受け入れ態勢を確認後、出かけることにした。もちろん殺菌スプレーやマスクは手放せない。国の旅行援助金が出るホテルもあり、高知県のように独自の援助金を出す県もある。
 コロナはそうすぐには消えない。あとは自分がどんな決断をして行動するかで生活の質も変わるのではなかろうか。私は四国を先延ばしにしないことに決めた。一緒に行くのは瀬戸内海を目指していた友。秋晴れも私たちを後押ししてくれた。

四国と横浜?

 北海道、本州、九州、四国と4つの島からなる日本国土の中で一番小さい島が四国だが、四国全土4県の総人口(366万人)は横浜市の人口より少ないのは驚きだった。瀬戸内海に面して本州との繋がりの強い愛媛県、香川県、徳島県に比べ太平洋側の高知県は商業的に一番遅れた県だが、瀬戸大橋(1988年・全長13㎞)やしまなみ海道(2006年・全長60㎞)ができてから高知へも本州から人や物資の行き来が増えるようになった。とはいえ平均年収は47の都道府県中45番目と低い。人口も四国4県のうちで最少の68万人。私たちの四国旅行はこの高知県から始まる。

四国といえば四万十川

 と言われるほど四万十川は一度写真を見ればその美しさに心を奪われる。下流の川幅が広くゆったりと蛇行している様は緑に囲まれて点在する民家を優しく包み込み普通の田舎風景とは一味違う。西日本で最長(全長196㎞)のこの川は高知県の不入山を源流点とし、テレビで「日本最後の清流」と紹介されてから一躍有名になった。文化庁で「重要文化的景観」に指定されている。

 私たちは早朝の新幹線で東京をたち岡山から四国を縦断する特急南風に乗り継ぎ、瀬戸大橋の鉄橋を渡って高知駅へ直行した。レンタカーで約2時間半南下すれば四万十川市へ夕方には到着できる。高知県は幕末の坂本龍馬、明治維新の板垣退助など歴史的人物を生み出したことで有名だが最近の人気スポットは四万十川へと推移しているようだ。ユニークなのは沈下橋とよばれる欄干のない橋。台風や豪雨など増水時には水が橋の上を流れ、橋が沈む。

自然とおり合う「沈下橋」

 沈下橋に欄干がないのは増水の際、流木やゴミがひっかかって橋に無駄な圧力を加えないようにするためだという。これが「自然に逆らわず、折り合って生きていく」、という四万十川地域の人たちの生活心情となっているのだとか。それと欄干がないため建設費用も安い。もちろん沈下しない普通の橋もある。

 全部で48ある四万十川の沈下橋は川の景観の重要構成要素になっているため生活文化遺産として後世に残すべくメンテされている。川下の佐田沈下橋が一番行きやすく駐車場もあるが、観光スポットというより一般の生活道なので通行の邪魔にならないように観光する。水量が少なかったので川原に降りて下から眺めることができた。他の沈下橋は指定された駐車場はないので車の置き場には要注意。

下流に近い佐田沈下橋。欄干がない。1車線
下流に近い佐田沈下橋。欄干がない。1車線
水量が少ないので川原から佐田沈下橋を見る
水量が少ないので川原から佐田沈下橋を見る

四万十川で遊ぶ

 屋形船に乗るのもいいが、晴天なら川遊びをしたい。上流の小さな部落、江川崎の「カヌー館」へGPSを設定。二人乗りのカヌーを期待していたのだが、あるのは一人乗りのカヤックだった。私はカナダで家族とカヤックを体験していたので気にはしなかったが、初回の友は不安を抱えながらも勇敢に覚悟を決めた。カナダでは出発する前に、ロールの練習をさせられる。つまり水中に転覆して逆さまになり自力で元に戻る練習だ。

四万十川でカヤックを楽しむ筆者
四万十川でカヤックを楽しむ筆者

 ところが四万十川は流れも緩く川底が見えるせいか、ロールはやらなかった。ガイド役の男性が、集まった五人に装備のつけかた、オールのさばき方などを教える。初心者、年齢にかかわらず誰でもできる、が四万十川の売りだ。

指導員がオールさばきを教える。川底が見える
指導員がオールさばきを教える。川底が見える

 江川崎から岩間沈下橋まで2時間かけてゆっくり四万十川を満喫する。岩間沈下橋は四国の観光パンフに必ず写真が載るほど四万十川が一番映える撮影スポットだ。つぎは愛媛県の内子へ。

カヤック川下りの最終地点、岩間沈下橋
カヤック川下りの最終地点、岩間沈下橋