第45回トロント国際映画祭の楽しみ方【2020/9/10(木)~19(土)】

第45回トロント国際映画祭の楽しみ方【2020/9/10(木)~19(土)】

コロナ禍での開催はどうなる!?

 例年なら、世界各国から出品される数百本の新作映画が上映され、街中が映画で盛り上がるトロント国際映画祭(TIFF)。今年は、コロナ禍により映画祭の本拠地である映画館TIFF Bell Lightboxも春先から長らく休館が続いていた中、規模を大幅に縮小して開催されることになった。

 ここでは今年のTIFFについて、8月中旬までに公式発表された情報をもとに、初の試みとなる上映形態の詳細や、チケット情報、注目作品などを紹介。ただし、8月中旬以降のトロント周辺地域の状況次第で、TIFF開幕時の状況はさらに変わっているかもしれないので、詳しくはTIFF公式サイトで最新情報をチェックしよう。

TIFF公式サイト https://www.tiff.net/

上映作品は、長編映画50作品、短編映画5作品の厳選された出品作のみ

 上映形態が、例年とは大きく異なる。10日間の会期のうち前半日程だけ劇場での上映を行い、10日間を通して行われるオンライン上映と並行して実施される。例年なら6月頃には発売されるチケットは、8月中旬にようやく発売予定の詳細が発表されるという異例づくしの様相となっている。

 また、昨年までのTIFFでは、トロント中心部の多数の劇場で、1作品につき3回前後の上映が組まれていた。「Roy Thomson Hall」や「Princess of Wales Theatre」を中心にGala Presentations 部門やSpecial Presentations部門の話題作がプレミア上映され、劇場前にはレッドカーペットが設けられて、次々に訪れる監督や出演者等の豪華ゲストとファンとの交流もTIFFの目玉の一つだったが今年は実施されないことが決まっている。

劇場での屋内上映は「TIFF Bell Lightbox」と「Isabel Bader Theatre」の2館のみ

 今年は、感染防止対策や安全開催を何よりも優先させなければならない状況から、例年のような劇場での屋内上映は、「TIFF Bell Lightbox」と「Isabel Bader Theatre」の2館のみで実施予定だ。屋内上映のチケットは、通常上映が19ドル、プレミア上映が26ドル。近年のTIFFでは、一部劇場で座席により金額に幅を持たせたチケット料金が設定されていたが、今年は全席均一料金とのこと。なお、距離を保つために座席数を減らし、全席指定で販売される。

 例年なら劇場内のロビーから劇場の外まで入場待ちの長蛇の列ができていたが、今年は人の密集を避けるため、入場待ちの列はすべて屋外に設けられる。天候にかかわらず入場待ちの列は屋外で、上映の1時間以上前には来ないようアナウンスされている。なお、身体が不自由で列に並ぶことが困難な人を対象に、待合エリアへ入ることができるLobby Passの発行が用意されている。

2箇所のドライブインシアターと野外劇場での屋外上映が新登場!

 例年にはなかった上映形態として、今年はオンタリオ湖畔での屋外上映が用意されている。「Skyline Drive-in」と「Lakeside Drive-in」の2箇所のドライブインシアターと、「West Island Open Air Cinema」の野外劇場の計3箇所が予定されている。ドライブインシアターのチケットは、乗員1~2人の車は49ドル、乗員3人以上の車は69ドル。また、野外劇場のチケットは、2人用の区画が38ドルとなっている。

オンライン上映(デジタル上映)はカナダ国内からのアクセスに限定

 今年初の上映形態として、オンライン上映もある。「TIFF Bell Lightbox」の休館中にオンライン上映を実施するプラットフォームとして立ち上がった「Bell Digital Cinema」で、チケット販売から配信上映まですべて行われるという。このオンライン上映は、カナダ国内からのアクセスに限定されている。作品ごとに設定される上映開始日から視聴可能となり、いったん再生を始めると、そこから24時間視聴が可能という仕組みだ。チケットは屋内上映と同じで、通常上映が19ドル、プレミア上映が26ドル。

ニコール・キッドマンやナタリー・ポートマン、日本からは是枝裕和監督など豪華な面々がアンバサダーとして登場

 今年のTIFFでは、50人の著名な監督や俳優などが「Festival Ambassadors」となり、その多くがデジタルイベントに参加すると発表されている。アンバサダーの50人には、昨年『ジョジョ・ラビット』が観客賞を受賞したタイカ・ワイティティ監督や、一昨年の『ROMA/ローマ』が大人気だったアルフォンソ・キュアロン監督、さらにはマーティン・スコセッシ監督に女優のニコール・キッドマンやナタリー・ポートマンなど、TIFF常連の豪華な面々がそろっている。日本からは是枝裕和監督が入っており、アンバサダーの映画製作者が何を語るのかも今年のTIFFで楽しみなところだ。

レッドカーペットは…

Courtesy of Getty Images
Courtesy of Getty Images

 今年は現地でのレッドカーペットやファンゾーンは設けられない。監督や主演俳優による現地での舞台挨拶は、渡航制限の影響によりトロントに来られない関係者が多数となるであろうことを受け、オンラインイベントが検討されている。昨年まで、各劇場の周囲に用意されていたレッドカーペットは、柵の外から観覧する分には無料だった。そう考えると、レッドカーペットで行われていたような監督や俳優へのインタビューは、無料でオンライン配信されるのだろうか、といったことも気になる。例年、公式サイトではゲスト情報や上映回の追加情報などが随時更新されているので、公式サイトをこまめにチェックすることをおすすめする。

今年、最も謎に包まれているバーチャルライブイベントに注目

 バーチャルライブイベントは公式サイトでは、「virtual live event」とだけ言及されていて、映画の上映と同様にチケット販売があること、チケット購入者はイベントに参加できるリンク先を受け取ることなどの説明がある。ただし、どんなイベントでチケットの金額はいくらなのかといった情報は、まだ出ていない。

 これまでのTIFFでは、新作映画の上映以外に、TIFFの司会者が著名な俳優に話を聞く「In Conversation with…」や、ジェイソン・ライトマン監督が配役した俳優陣が舞台上で脚本を朗読する「Live Read」といったさまざまなイベントが行われており、映画の上映と同様にチケットが販売されていた。こういったイベントを、今年はオンラインでバーチャルイベントとして実施するのだろうか!?もしくは、アンバサダーのデジタルイベントもバーチャルライブイベントの一部となるのか、続報を待ちたい。

チケットは争奪戦!販売開始は8月28日!

 多くのファンの一番の関心事であろうチケット販売については、現在分かっている情報を紹介するとともに、昨年までの状況を考えて今年はこうなるのでは?という勝手な予測を述べてみよう。

 今年は、8月28日に上映回ごとの個別の前売りチケットが販売開始となる。例年同様、まずはTIFF会員に対し販売が始まり、会員ランクに応じ、多額の年会費を払う会員ほど早期に購入できる仕組みだ。9月3日がTIFFの年会員へのチケット販売開始、9月4日がメルマガ登録会員(TIFF Insiders)、最後となる9月5日が非会員への販売開始、という日程になっている。

 一般枠で最も早く購入できるのは、9月4日のTIFF Insiders枠だ。例年、8月中を目途にメールアドレスを登録しておけば、チケット発売の1、2日前にパスワードの入ったメールが届き、TIFF Insiders向けのチケット購入が可能になる。

今年はパッケージ販売のチケットはなし!

 例年と異なるところは、パッケージ販売のチケットがない点。昨年までは、8月末に始まる個別チケットの販売前に、パッケージ購入者の上映回選択期間があった。6月頃から6枚とか10枚といった単位のパッケージ販売の前売りがあり、8月下旬に上映スケジュールが出た後に、パッケージ購入した枚数分を見たい上映回のチケットに引き換える仕組みだった。

例年、このパッケージ購入者の上映回選択期間に人気の上映回の座席はどんどん埋まり、個別チケットの発売日にほとんど残席がない状況になりがちだった。また、例年はひとつのアカウントで同一上映回のチケットは4枚まで購入できたところが、今年は2枚が上限となっている。この点、例年に比べると非会員でもチケットが入手しやすくなるかもしれないと推測できる。

劇場上映のチケットは意外と入手しやすい!?

 例年のTIFFであれば、カナダのトロント以外の地域からも映画好きがトロントを訪れていた。米コロラド州で8月末に開催されるテルライド映画祭に行ったあと、トロントに来た、なんて人もいた。しかし、今年はこのような状況で、遠方からトロントを訪れる人は多くないだろう。また、カナダ国内はともかく他国から渡航してくる人は、入国制限もあって極めて少なくなると思われる。

 そうすると、今年は上映作品が大幅に減少し、上映会場も非常に少なくなっているとはいえ、トロント在住者間でのみチケット争奪戦が繰り広げられると思えば、劇場上映のチケットは意外と入手しやすいかもしれない。逆に、オンライン上映のチケットは、カナダ全土からのアクセスが考えられることから、チケット争奪戦が激化するかもしれない。

歴史の目撃者に

 今年のTIFFは、あまりにも異例の状況や初の試みばかりで、一体どうなるのかまったく予想がつかない。ただ、人の移動が制限される中で今年トロントに滞在している読者の皆さんは、きっと貴重な歴史の目撃者になるのだろうなと思っている。

 今年、現地開催を断念せざるを得ない映画祭が世界中でたくさんある中、TIFFは規模を大幅に縮小しながらでも、なんとか現地での上映も実施する形で開催にこぎつけようとしている。半世紀近く続くトロントの街を挙げた映画祭のともしびを絶やすことのないよう、このような開催形態を選んだようにも思える。

 現地で今年の映画祭を目の当たりにできる読者のみなさんは、ぜひその目で今年のTIFFを見届けてほしいと思う。