「ロミオとジュリエットのような悲劇的な作品が好き」カナダ国立バレエ団 (THE NATIONAL BALLET OF CANADA) ・プリンシパル 石原古都さん(後編)|Hiroの部屋

アメリカ的な考え方が私の性格には合っている

ヒロさん(左)と石原さん(右)
ヒロさん(左)と石原さん(右)

前回前々回とお話を伺っているのは、バレエ団の中で最高位とされるプリンシパルに昇格した石原古都さん。石原さんは、サンフランシスコ・バレエ団で経験を積まれた後、トロントを拠点としたカナダ最大の国立バレエ団である「The National Ballet of Canada」にファーストソリストとして入団、昨年プリンシパルに昇格した。インタビュー最終回となる今回は、コロナ禍やケガについて、そしてそれを通じて見えてきた引退後のビジョンについて話を伺っていく。

ヒロ: アメリカの環境が合っていたということでしたが、性格的にもアメリカ人に近いと感じますか?

石原: 自分の内面を見てみても、性格の8割程はアメリカ人的だと感じますね。10代でアメリカに行ったことも影響していますが、もともと日本人の性格より、アメリカ人の性格が近かったと思います。一方で日本人の謙虚さも好きですし、その部分がバレエの世界で上を目指す時の良い心構えになっていると思うので、日本人としてのいいところも大切にしていきたいと考えています。

ヒロ: 若くして海外に出てきたということですが、日本の友達や家族は、海外で活躍する石原さんをどう見ていますか?

石原: 両親や友達はずっと応援してくれています。海外に出ることを引き止める先生も多いのですが、私の先生は後押ししてくれました。バレエをしたい気持ち、海外に出たい気持ちをプッシュしてくれたバレエの先生や、家を出させてくれた両親など、周りの環境があっての今なので感謝しています。

ヒロ: 一人娘の石原さんを15歳で海外に送ることは両親としても、とても大きな決断だったと思います。そして、周りの人も石原さんの活躍を誇りに思い、応援とサポートし続けてくれたのは大きいですよね。

ヒロ: どんな瞬間にお客さんとの繋がりを感じますか?アーティストとしてどのような世界観に石原さんは入り込めるのでしょうか?

石原: 自分が役の世界に入り込めこめた時、自分がオープンになれた時、日によって違いはありますが、その役のことだけを考えられた時には、観客の皆さんとの繋がりを感じられます。

 ロミオとジュリエットのような悲劇的な作品が好きで、得意としているのもそういうジャンルです。自分が悲劇の立場というわけではありませんが、舞台の上で全てをさらけ出せるのでしっくりきます。自分自身がドラマチックで、感受性があるから得意なのかもしれないです。

 

カンパニーに入って2年目に演じたストーリーバレエも強く印象に残っています。ロシア人が作った日本の話でした。日本人を演じたので、役についてもよく理解できましたし、忘れられない公演です。


 

ヒロ: 表現力はキャリア年数と共に変わってくると感じますか?

石原: 経験していくことも、年を重ねることに変わってくると思いますね。経験した分、表現力も豊かになってきていると感じるので、経験を増やし、さらに表現力を磨いていきたいと思っています。

ヒロ: コロナ禍で練習できなかった時間やケガをされたときはどう過ごしていたのですか?

石原: 最近は犬を飼い始めたので、犬と過ごすことも多いです。パンを作ったり、バレエ用のティアラ作るなど、創作活動も好きです。あとは、休みの期間を利用してファイナンシャルアカウンティングの資格をとりました。さらに将来的にもバレエに携わっていくために必要な勉強をしていきたいですね。

コロナ禍も、ケガの時間も、今まで経験がなかった時間でした。それまでは忙しすぎて感覚が麻痺し、自分がしたいことが分からないこともありました。時間ができたことで自分を見つめるきっかけになりましたし、時間を上手に使えるようになったと思います。

ヒロ: 私もサロンに出勤できない時間が人生を見直すきっかけになったので、よく分かります。コロナ禍があったからこそできたこともあり、今まで足りなかったところを補うことができました。バレエは一生現役は難しい世界だと思いますが、引退後の考えはありますか?

石原: 引退後はバレエを教えたいと思っています。どういう形で教えていくかはまだ模索中ですが、バレエに携わることをしていきたいです。何かを主催したいという気持ちもありますし、海外でできた色んな人との繋がりもあるので、海外から日本に人を連れていくこともできます。そういうことも視野に入れながら、今後考えていきたいですね。

ヒロ: 日常生活もだいぶ戻ってきました。今年はどんな一年にしたいですか?

石原: 早く舞台に戻りたいと思っています。7月から休んでいる私にとって戻ることは簡単ではありませんが、今回のケガを利用してさらに強い自分になって戻り、前の自分を越えたいと思っています。

(聞き手・文章構成TORJA編集部)
対談はサロンを貸切にし、撮影のため一時的にマスクを外して実施しています。

石原古都さん

 名古屋市出身。11歳よりクラッシックバレエを始める。2005年にThe Harid Conservatoryに留学。2010年サンフランシスコバレエ団にコールドとして入団。2015年ソリスト昇格。2019年カナダ国立バレエにファーストソリストとして移籍。

 サンフランシスコでのクラッシックバレエの主なレパートリーは“くるみ割り人形”金平糖、雪の女王、花のワルツリード、“眠りの森の美人”リラの精、フロリナ王女、ダイアモンド“ドン・キ・ホーテ”森の女王、キューピット、キトリの友人など。

 カナダ国立バレエでは1年目にAlexei Ratmansky振り付け“Piano Concert”、バランシン作品“Chaconne”、James Kudelka振り付け“Nutcracker 金平糖”、Jiri Kylian振り付け“Petite Mort”で主役に抜擢される。

 その他にもヌレエフバージョンの眠りの森の美人でフロリナ王女やジゼルのペザントパドゥドゥーを踊る。コロナの影響のためのオンラインシーズンでは眠りの森の美人のフィンガーフェアリーとバランシン作品のタランテラを踊る。