カナダの農業・食品市場を数字で考察「数字で見るカナダ食学」|特集「カナダ食学」

数字で見るカナダ食学

 新型コロナ・パンデミックによるフードサプライチェーンの影響が長引き、さらにロシアによるウクライナへの侵攻、中国のコロナ感染再拡大によるロックダウンなどにより世界じゅうで食糧危機問題も叫ばれている2022年。今回は、カナダの代表的な産業として挙げられる農業・食品市場にスポットを当てて、カナダの強み・社会問題・ヒストリーなどを紹介する。

カナダに「寿司」がやってきた年 1967年

 生魚を食べるということが定着するまで時間はかかったものの、1960年代にはアメリカの高級レストランで寿司が定番となった。その後、米国全土、そして世界的に寿司の人気が広まり、カナダにやってきたのはその後1967年。移民法が緩和され、日本からの移民の第二波がやってきた時とされている。

 寿司の人気は、バーガーやピザなどに比べて胃への負担が少ないこと、かつ満足感が得られることや、他の料理にはない独創性にあると言われている。また、寿司はテイクアウトする際にも便利だという面でも人気があり、2020年には日本食のテイクアウトの需要が37%増加している。

一人当たりの豚肉の消費量 22.7kg

 2022年時点でカナダでの豚肉の消費量は一人当たり22.7㎏である。1980年の時点では32.2㎏であったため、かなり減少している。コロナのパンデミックが始まった時期である2019年から2020年の1年間だけでも、一人当たりの豚肉消費量は2.6㎏減少している。

 ちなみに牛肉の消費量は一人当たり27.5㎏とされており、こちらも1980年の時点での38.8㎏と比較してかなり減少している。この減少の背景には、近年のトウモロコシエタノールの使用により動物資料の価格が上昇し、多くの赤身肉製品の価格が上昇していること、そして赤身肉の消費に関連する医療リスクに対しての国民意識の高まりの結果があると言われている。ちなみに日本での豚肉消費量は一人当たり13㎏でありカナダでの消費量と比較するとかなり少ない。

一人当たりの米の消費量 13kg

 カナダでは一人あたり年間13㎏の米が消費されている。ちなみにアジア人の平均は80㎏とされており、比較するとかなり少量といえる。しかし、米は他の食品と比較して満腹感を長く感じられるため減量に向いており、さらに玄米は脳卒中、心臓病、糖尿病など様々な病気のリスクを下げられることが分かっており、近年は健康面への配慮から米の消費量も増えている。

 日本での米の消費量は一人あたり50㎏で、カナダ人と比べるとかなり多いが、これは10年ぶりの低水準。日本では小麦粉をベースとした食べ物がより身近になっているため、米の消費量は減少しているという。

食物アレルギーの割合 12.2%

 カナダ人の12.2%は食物アレルギーを持っていると言われている。世界的には食物アレルギーの人口は年々増えている。発展途上国ではアレルギーの発生率が低いこと、そして農村部よりも都市部でアレルギーの発生率が低いことも分かっており、医療が発達し食物アレルギーの診断の精度が上がったことだけが背景にあるのではなく、環境問題や欧米的な生活習慣が影響していると言われている。

 また、ビタミンDの不足が免疫システムに関与し、ピーナツアレルギーを引き起こす可能性があるという研究データもあり、現代の子供は屋内で過ごしがちであることなども原因として考えられている。

一年間に発生している食品廃棄物の量 3550万トン

 カナダで1年間に発生している食品廃棄物の量は、3550万トンと言われている。ちなみにトロントのみだと9万9,000トン。トロントの平均的な一軒家からは、年間200㎏を超える食品廃棄物が出ているとされており、そのうちの50%以上は廃棄を避けることができたはずの食品であるとされている。

 日本政府によると、日本では年間600万トンの食品廃棄物が廃棄されている。そして、この食品廃棄物を処理するためのコストは年間190億ドルと言われている。日本の一人あたりの食品廃棄物の量はアジア諸国で一番多いことが分かっており、政府は2030年までに50%の削減を目標に掲げている。

1世帯あたりの年間の食費 10,311ドル

 カナダでの1世帯あたりの年間の食費は1万311ドルとなっている。
食費は年々上がっており、これは物価の上昇が背景にある。5月現在のカナダのインフレ率は6.8%であると言われており、カナダのインフレはしばらく続くと言われている。

 特に価格が高騰しているものの一つが肉類であり、ベーコンとハムの価格は1年で10.9%上昇しており、ベーコンの価格は過去最高値となっている。
 日本では、1世帯あたりの年間の食費は2021年時点で75万360円となっており、2020年と比較すると1年間あたり7,440円少なくなっている。

1年間あたりの平均外食費 2,789ドル

 カナダ人が1年間あたりに使う外食費は一人当たり2,789ドルと言われている。カナダ人の54%の人は週に1回以上の外食をし、39%の人は週に一回も外食をしていない。カナダでの外食費の一人あたりの平均は15ドルとされているが、これには朝食や昼食の平均額も含まれている。なお、朝食に費やされる平均は7ドルから15ドル、昼食では10ドルから25ドル、夕食では12ドルから40ドルとなっている。

 ちなみに日本人の1年間あたりの外食費は97,200円となっており、カナダ人と比較するとかなり安いことが分かる。言うまでもないが、日本では牛丼であれば500円前後、定食でも1000円前後で食事を済ませられることなど、飲食店の食べ物が安いことが理由としてある。

食品添加物の数 850種類

 カナダで使われている食品添加物の種類は850種類。食品添加物は様々な食品に使われており、食品に色を付ける際に着色料が使われているのはもちろんのこと、塩、砂糖などの粉状の物をサラサラな状態に保っておくための固化防止剤、ソースやドレッシングなどには、液体が分離するのを防ぐ乳化剤などが使われている。

 850種類の食品添加物も多いと感じるが、対して日本で使われている食品添加物の数はなんと1500種類。この中には、多くの国で使用禁止となっている着色料「赤色2号」も含まれており、海外では日本の食品添加物の検査基準を問題視する声もある。

グルテンフリーの人の割合 12.3%

 カナダに住む人々の12.3%、およそ430万人がグルテンフリーの生活を送っている。それでもカナダ全体で見ると、グルテンフリーの食品につき1~15ドルを費やすのはわずか11%とかなり少ない。グルテンフリーの生活を送っていない人々はかなりの小麦を消費していると考えられており、カナダでの一人当たりの年間小麦消費量は60.4㎏となっている。

 日本では近年小麦を使った食品が人気であるとはいえ、一人当たりの消費量は32㎏に満たないくらいであり、その値はカナダ人のおよそ半分ほどであることが分かる。ちなみにグルテンフリーの生活を送る人の3分の2は女性であり、これには男性に比べて女性のセリアック病の発病率が2倍であることが関係している。

ベジタリアン・ビーガンの割合 ベジタリアン230万人 ビーガン85万人

 カナダには230万人のベジタリアン、そして85万人のビーガンがいるとのこと。カナダ全体での割合でいうと、ベジタリアンは7.6%、ビーガンは4.6%である。カナダ、特にオンタリオ州やブリティッシュ・コロンビア州などの都市部では、ほぼどのレストランでもベジタリアンやビーガン向けのメニューを一つは目にするくらい身近にあり、実際にカナダのベジタリアン、ビーガンの多くはこれらの2州に住んでいるそうだ。

 ちなみに日本でのベジタリアンの割合は9%、そしてビーガンは2.7%である。以前の日本ではビーガンが外食をするとなると選択肢は少なく、おにぎりや大豆製品に偏りがちになっていた。近年は日本でもベジタリアン、ビーガンが身近になりきつつあり、外食の際の選択肢も増えつつある。