カナダの生まれの小説と詩

カナダの生まれの小説と詩

 カナダで生活するのであれば、時間があるときなどにカナダ生まれの小説や詩に触れてみるのもいかがだろうか?優しい言葉や浮かび上がる景色はきっとあなたのライフスタイルに彩りを与えてくれるに違いない。
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Anne of Green Gables

L.M. Montgomery

 言わずと知れたカナダを代表する名作小説『赤毛のアン』。小学生の頃に教科書で読んだ方も多いのでは? 決して、恋愛小説のくくり一つに収められる作品では無いが、主人公「アン」と「ギルバート」の成長していく愛情はまさに読みどころのひとつだ。シリーズを通して、1880年代のプリンス・エドワード島を舞台に、独身の「マリラ」とその兄「マシュー」に孤児院から男の子だと勘違いされ、養子に迎えられたアンの半生が描かれている。

 特におすすめはシリーズの三作目の『アンの愛情』だ。アンとギルバートはついに恋人になり、彼女が通うレドモンド大学での4年間の青春生活を中心に物語は進んでいく。そして二人の恋愛模様と変化していく周囲との友情関係が描かれている。それまでは恋愛に一切関心を持っていなかったアン、そして一途に彼女を思い続けるギルバート、二人は真実の愛に結ばれるのだろうか?

The Blue Castle

L.M. Montgomery

 『赤毛のアン』を読んだ後に、同じく、L・M・モンゴメリ作の『青い城』を読んでみることをおすすめしたい。何度も読み返したくなる本の一つになること間違いなし。この小説はモンゴメリの数少ない成人向けフィクション作品の一つと見なされていて、1920年代を生きる女性のヴァランシーの勇気とロマンスを描いた物語になっている。

 主人公のヴァランシー・スターリングは29歳で、未婚そして恋すらしたことがない。威圧的な母親とお節介な叔母と共に暮らす彼女は、想像上の「青い城」とお気に入りのジョン・フォスターの本に唯一の安らぎを見つけます。ある日、余命一年という衝撃的な知らせを受けた彼女は、家族に反抗し、周りの目を気にすることをやめ、愛と冒険の道に進み新しい世界を発見していくことになる。

Dance Me To The End Of Love

Leonard Cohen

 レナード・コーエン氏はカナダのシンガーソングライターであり、詩人そして小説家であり、彼の作品は宗教、政治、孤立、鬱病、セクシュアリティ、死、そして恋愛などについて探求している。

Adolescene

P.K.Page

 P.K.ペイジ氏はカナダの詩人、小説家、エッセイスト、ジャーナリスであり、多くの詩を出版してきた。1954年に発表した詩『Adolescene』は、愛を通して自己同一性を見つけるというテーマを持つカナダ文学の著名な作品と見なされている。『Adolescence・青年期』は成人期への移行期であり、新しい変化に対する強い感情で満たされている。この詩は、愛と自己実現の初期段階を表現している。

The Hope Of My Heart

John McCrae

 ジョン・マカレ氏は第一次世界大戦のカナダの詩人、医師、作家、芸術家、兵士であり、戦争記念誌を書いたことで最もよく知られている。そんな彼の詩の一つ『The Hope Of My Heart』は墓の向こうに存在する愛と、地球上に置いてくことを余儀なくされた「Little Maiden Fair」への心配の声が表現されている。死後の世界から目線で描かれているこの詩は、人を思う愛の強さを繊細に表している。

When Calls the Heart

Janette Oke

 カナダ人作家ジャネット・オーク氏のベストセラー『カナディアンウェスト』シリーズ。ジャネット・オーク氏は現代のインスピレーショナル・フィクションのパイオニアであり、開拓者時代に生きた女性を中心にした物語を多く手掛けている。

 『カナディアンウェスト』第一作目のこの小説は1983年に出版され、カナダの東海岸で裕福な家庭で育った主人公エリザベスの人生を描いている。兄に西カナダへ旅して野生で自由な子供達の教師になるよう頼まれ、「安定した仕事と愛情」か「未知への大胆の旅」の選択に直面する。カナダのフロンティアで世話している子供達と触れ合う中、王立カナダ騎馬警察のウィンと恋に落ちる。人間関係、セルフ・エンパワーメントそして「愛」にルーツをもつとても美しい物語になっている。

 2014年にはドラマ化もされたこの作品は、愛情についてだけでは、カナダの西部開拓時代の歴史についても学べる。

Reproduction

Ian Williams

 名の知られたカナダの詩人でもあるイアン・ウィリアムス氏。多くの詩人賞をもつ彼は、カナダの人種と階級に物申す小説『リプロダクション』で作家デビューを果たす。2019年に出版されたこの小説は複数の視点をジャグリングし、クラシックなラブストーリーになっている。

 この小説は、まだ10代のカリブ海の移民フェリシアとドイツ人の祖先をもつ裕福且つ怠け者な30代のエドガーの出会い、その後の人生を描いている。二人は1970年代のトロントの病棟で、お互い重病の母親の世話をしながら不幸にも出会う。そしてフェリシアの母の死後、二人の間に一人息子のアーミーが生まれる。物語は数十年跳び、アーミーの成長とともに、その周りの人々との関係を繊細に描いている。

 2019年度のカナダのギラー賞を受賞したこの小説は様々な愛の形だけでなく、家族の定義とは何かについても考えさせられる物語となっている。

Selected Poems・Habitation

L.M. Montgomery

 2017年にドラマ化までされた『侍女物語』などで有名なマーガレット・アトウッド氏はカナダの作家かつ詩人で、彼女の手掛けた多くの作品は世界各国で翻訳され、カナダ国内のみならずヨーロッパなどでも数々の文学賞を受賞している。そんなカナダを代表する作家の一人であるアトウッド氏は多くの詩集を発表しており、1976年に出版された『Selected Poems』の「Habitation」はアトウッド氏自身の結婚論が表現されている。

 「結婚」は人間にとって自然なものではない。詩を通し、夫婦の一体感を作るのは仕事であり、ゼロから構築する必要があると伝えている。そして、「結婚」とは「愛」だけを根元にしていると表現している。

Skim

Mariko Tamaki & Jillian Tamaki

 悲痛なほど面白く、感動的、そして活気に満ちた絵で描かれているグラフィック小説の『スキム』。日系カナダ人の従姉妹、マリコ・タマキ氏とジリアン・タマキ氏の共同で制作されている。物語は16歳の主人公キンバリーの日記からの抜粋のように語られ、彼女の人生を記録している。各エントリーはDear Diaryで始まり、テキストとアートでその日を描写し、即時性と親密さを生み出している。

 1993年、トロントの田舎にあるカトリックの女子高に「キンバリー」はタロットカード、占星術、哲学などに夢中の10年生の女の子。彼女は自分が同性愛者であるかどうかについて悩み、高校の先生に恋心を抱く。言葉と絵の両方を通して、初恋の苦味が痛々しいほどリアルに表現されている。

The Wound is a World ・Love and Heartbreak are Fuck Buddies

Billy-Ray Belcourt

 ビリー・レイ・ベルコート氏はDriftpile CreeNation 出身の作家であり学者で詩人だ。アルバータ大学で博士号を取得し、2016年にはCBC Booksの「注目される六人の先住民作家」の一人に選ばれている。2018年にデビュー作の詩集『The Wound is a World』がGriffin Poetry Prizeに入賞した。先住民が未来をあきらめることなく、自分たちのような悲しみや痛みをどのように抱えているかを理解するために、愛に目を向けるよう呼びかけている。『Love and Heartbreak are Fuck Buddies』は恋と失恋についてユーモラスに語っている。