トロントの本屋さん2023年6月『収容所から来た遺書』『美少女戦士セーラームーン』『いま、映画をつくるということ 日本映画の担い手たちとの21の対話』

トロントの本屋さん2023年6月『収容所から来た遺書』『美少女戦士セーラームーン』『いま、映画をつくるということ 日本映画の担い手たちとの21の対話』

今月は日本映画関連の本をご紹介します。サブスクリプションのおかげでカナダに居ても邦画を観る機会が増えましたね!

2022年12月に日本で公開された『ラーゲリより愛を込めて』の原作が辺見じゅん著『収容所から来た遺書』(文藝春秋)です。

1945年の第二次世界後にソ連のラーゲリ(強制収容所)に俘虜されダモイ(帰国)の願いを持ち続けた山本幡男の抑留生活や遺書が遺族に渡るまでを克明に描いています。

山本旗男はロシア語に精通し、満鉄調査部やハルビン特務機関での勤務がソ連に対するスパイ行為と見なされ戦犯として重労働20年の刑を下されたため、ダモイの点呼で名前が呼ばれることはなく病気で亡くなったそうです。過酷な労働生活の中でも希望を捨てず日本や日本語を忘れないように、衛兵と密告する日本人俘虜の目を盗みながら勉強会や句会を主催し仲間からは尊敬され慕われた様子が伝わります。世界情勢が与える生活の変化も詳細に説明されているので当時の歴史を学ぶこともできます。

6月に前編・後編が公開される『美少女戦士セーラームーンCosmos』は、誕生30周年を迎える武内直子著『美少女戦士セーラームーン』(講談社、文庫版全10巻)が原作です。

ドジで泣き虫でおっちょこちょいだけど、明るい中学生の月野うさぎが、ある日人間の言葉を喋る黒猫・ルナと出会うことで運命が変わります。うさぎはセーラー戦士で、地球を脅かす妖魔を倒す使命にあると!慣れない戦いに苦戦しつつも、同じセーラー戦士に出会い妖魔退治をしていきます。新シリーズが始まるごとに魅力的なキャラクターが続々と登場してファンにはたまりませんね!メディアミックスも幅広く展開されています。20周年記念には新作アニメが放送され記念Bookも出版されました、グッズも新商品が続々と発売されているようです。

ブラジル出身の方とセーラームーン談義をした時に、変身前のタキシード仮面はDarienと呼ばれているそうで、地場衛(ちばまもる)という名だと知ったのは最近と言っていました。海を渡ると呼称が変るのも面白いですよね!

是枝裕和編集、著『いま、映画をつくるということ 日本映画の担い手たちとの21の対話』(フィルムアート社)は早稲田大学にて、映像制作者をゲストに教員と学生との対話で語られる講義「マスターズ・オブ・シネマ」が文章化されたものです。アドリブを入れちゃった俳優さんの話や、日本映画ってダサくて映画と言えばアメリカ映画だったと振り返る監督さんに、テレビドラマから映画化の流れが出てきた日本映画界の変化、オリジナルアニメ「おジャ魔女どれみ」が出来るまで、等々制作の裏側や作り手の方々の思考を垣間見ることができます。

恥ずかしながらNHKドラマの『ハゲタカ』、『龍馬伝』の監督が『るろうに剣心』も撮っていらしたとは知りませんでした。他にも、えーそうだったんだと思う所が満載で映画通ではない方でも楽しめる一冊となっています。それでは、また次回お会いしましょう!