カナダには勤勉な女性がたくさん居る。女性の起業率としては世界でもトップクラスを誇るカナダは、起業に興味がある女性も多いという。その道は決してなだらかではないが、自分のやりたいことで夢を叶え、世間の常識を変えていく女性の姿は輝かしい。今回は、カナダをベースに活躍し、同じ女性たちにインスピレーションを与える4人の女性を紹介したい。
トロント人気トップのお菓子を生み出す
ステファニー・ズオンさん – Roselle Desserts
2015年にトロントで看板を上げてからその確実なスキルから作られるペーストリーは人々を恍惚させ、人気が衰えることを知らないベーカリー、Roselle。ジョージブラウンカレッジで、ベーキングの基礎を学び、トロントのレストランで腕を試したのち、スイーツの本場でさらに入り組んだ技をマスターするためフランスに旅立つ。
サン・ボネ・ル・フォワでは、ミシュラン三ツ星獲得レストランであるRégis & Jacques MARCON、パリではChocolatier Jacques Geninといった名高い人気店で修行する。2013年には、香港に移り、さらなるミシュラン三ツ星獲得レストランL’Atelier de Joël Robuchonで経験を積んだ。確実なスキルアップを果たしたステファニーさんは、2014年にトロントに戻ってきてからKeo Cakes & Confectionsでリードシェフとしてキッチンを引っ張り、フランスで出会ったライフパートナーでもあるLeeさんと共に2015年にRoselle Dessertsをオープンする。
同店では、ローカルの材料を使い、フランスの本場の味をベースにステファニーさんの幼少期の思い出の味や、そのときそのときにインスピレーションされた味の融合が楽しめる。その中でも、TORJA3月号でも紹介したマーマレードや、キャラメルキャンディーは、丁寧に作られる贅沢なフレーバーにどこか懐かしいテイストが混ざりたくさんの人に愛される。テイクアウトのみの同店だが、開店時にはいつも行列ができている。
また、ステファニーさんのその技術と人気の噂は瞬く間に広がり、カナダのフードネットワークの今年3月から放送が開始した新しいエピソード、「Wall of Bakers」では数いる有名シェフが並ぶ審査員の一人として選抜された。
カナダ最大のブックストアIndigo創設者兼CEO
ヘザー・リーズメンさん
本を読まない人も1度はその名を聞いたことがあるだろうカナダ最大のブックストアIndigo。1997年に一店舗目をオープンしてから事業拡大をし、今ではカナダ国内に200を超える店舗を構えている。
モントリオールで生まれたヘザーさんは幼い頃から本を読むことが大好きだったそう。11歳の頃、お金を貯めて月間ブッククラブに入り、いまでも幼少期に読んだ本を全て保持しているのだとか。
マギル大学を卒業し、若者をサポートするケアワーカーとして働いたのち、彼女はビジネスコンサルタントを設立する。そこで、清涼飲料会社の責任者として短期間勤務するが、どうせなら自分の情熱を注いでいるものを販売したいと思っていることに気づいたのだとか。
彼女は同社を去り、1997年にオンタリオ州バーリントンに一店舗目をオープンする。カナダ製の商品に重きを置き、「Heather’s Picks」と呼ぶ彼女のオススメの本を紹介するなどして本屋としての人気を博した。
2001年にはライバルのChaptersを買収し、おもちゃ、室内装飾、ギフトなどラインナップを多様化し、2018年にはアメリカ市場に進出した。彼女はまた、電子書籍会社「Kobo」の共同創立者でもあり、リテラシーと読書に関して北米で最も有名な人物の一人である。彼女は成功の鍵として1度もプランなしで行動したことはないという。
北米で人気のレストランGusto 54グループ 創設者兼CEO
ジャネット・ズッカリーニさん
Gusto 101.、Gusto 501、Trattoria Nervosa、Chubby’s Jamaican Kitchen、Pai Northern Thai Kitchen、どうだろう、聞きなれたお店もあるだろうか。実は、この有名なお店は全てジャネットさんが設立したレストラングループGusto54の傘下にあるレストランなのだ。カナダで最初にエスプレッソマシーンを輸入し、トロントに初めて窯焼きピザオーブンと暖房付きパティオを紹介したGiacomoさんを父に持つジャネットさんは、彼の起業家精神を見事に引き継ぎ、最上級の料理と、サービス、デザインを通じて顧客に感動的な体験を提供することを目標にこのレストラングループを設立した。彼女が1996年に記念すべき一店舗目Trattoria Nervosaをオープンしてから実に26年経っている。
飲食店というのは実に競争率が高く、大変な職業だ。彼女が同店をオープンした当初、飲食店の半分は1年以内に店を畳んでしまうほど厳しかったそう。また、パートナーシップにも恵まれず、最初の4年は1日16時間働く生活だったという。身体的なハードさに加え、男女差のバランスが取れていない飲食業界では、男性のビジネスパートナーと対等の立場をキープするために一生懸命戦っていたと言う。
飲食業界に入ったきっかけだが、ヨークビルの通りを歩いている際に見つけた工事中のロケーションが角のパティオ付きのレストランに好条件な場所だったことからすぐさま関係者と会話を交し、2週間後には同店をオープンして飲食業界に仲間入りを果たしたのだとか。起業に一番大切なのは、どこに落ちているかわからない機会を見逃さないことだと言う彼女は、世界のわずか7%の女性レストラン経営者を代表する成功者だ。いまだ、男女差の激しい飲食業界での彼女の成功は多くの女性にインスピレーションを与えている。
世界最大級の動画コンテンツネットワーク Broadband TV Corp 創立者兼CEO
シャザード・ラファティさん
BBTVという会社を聞いたことがあるだろうか?BBTVは世界最大級の動画コンテンツネットワークを運営するグローバルメディアカンパニーでYouTubeの動画配信をしているユーチューバーにチャンネルを有名にするための色々なノウハウを教え、サポートする会社だ。
どんなサポートをしてくれるのか詳しくみると、YouTubeの基本的な使い方から、動画作りのノウハウ、撮影機材の選び方、撮り方など中級者にも有難いアドバイスがもらえ、本来有料BGMサイトの無料使用、著作権管理などをサポートしてくれるのだという。
イラン出身のシャザードさんによって設立され、性別、国籍に関係なく誰もが活躍できる「ボーダーレス」を体現した会社としても有名。彼女は、10代後半にテヘランからバンクーバーに移るまではコンピュータに不慣れで、英語も初歩的な会話しか出来なかったという。コンピュータに不慣れなことを克服するためにブリティッシュコロンビア大学でコンピュータサイエンスを勉強し、最初はとても大変だったというが習得するのに長くはかからず、卒業と同時にBBTVを設立した。設立した当初は早期の投資者を探していたのもあり、たくさんのミーティングを通して学んだことは、自分が何が出来るのか、何が得意なのかをクリアに強調してプレゼンすることの大切さをだという。
またBBTVは設立してすぐに失敗を経験しており、失敗はするものだと認識して、その失敗から学び、すぐに調整して立ち直すことが大事だという。彼女の目標はいつも変わらず、財務実績だけでなく、人、環境、社会の4つの視点からみての成功だった。彼女はそれを有言実行し、現在BBTVの社員は北米を始め、イラン、インド、韓国、日本、メキシコ、モロッコ、フランスなど世界各国から社員が集まり、性別による賃金格差は0%で、マネージメントを含めたビジネスの40%は女性のアイデンティティをもつ社員で構成され、地球にやさしい完全カーボンニュートラルな運営をしている。
起業を目指している女性立ちに向け、彼女は「どのくらいあなたがその会社に尽くし、責任感があるか、またあなたのインテリジェンスなところを常に証明すればあなたは周りから無視できない人物になる。彼女が出来たんだから私も出来ると思って欲しい」と述べている。