ワーホリ・留学生の健康トラブルデータ〜みんなこんな理由で受診しています

ワーホリ・留学生の健康トラブルデータ〜みんなこんな理由で受診しています

今年も多くの日本人の学生・ワーキングホリデーの皆様がカナダに渡航されています。渡航前の心配事と言えば、英語が上達するか?仕事は見つかるか?友達はできるか?住む場所は見つかるのか?などなど。渡航前から体調を崩したり、事故に巻き込まれる心配をする人はあまりいないでしょう。しかし、海外生活が長くなればなるほど、身体の不調が現れたりするものです。

そこで今回は、留学生・ワーキングホリデーの皆様がどんな理由で医療機関を受診されているのかをご紹介します。

来院理由のダントツ1位は、急性気道感染症。気道感染症と言っても、やはりウイルス性の上気道感染症(風邪症候群)がトップです。症状としては、発熱、鼻水、咳などの症状で、今年は咳だけがなかなか治らないという患者様が多く来院されているのが特徴です。鼻カゼが長引き副鼻腔炎や、咽頭炎、気管支炎などの発症も少なくありません。肺炎などを患うケースもあるので、あれっ?と思ったら、早めの受診をオススメします。

昨冬も12−2月にかけてトロントでもインフルエンザが流行しました。トロントではインフルエンザの予防接種は、ビザや加入している保険の種類に関わらず誰でも無料で接種することが可能*です。しかし、実際に受けたという人は少なく、1月上旬は高熱・倦怠感で受診する人が多発しました。お話を伺うとシェアハウスや学校、バイト先に同じような症状の人がいたという人が多いため、インフルエンザの感染力を甘く見てはいけません。インフルエンザには抗ウイルス薬が処方されますが、この薬は発症後すぐに服薬を開始することで効果が期待されます。症状が出始めたら、すぐに受診してください。

*毎年10月から12月頃にかけて、トロント市による集団接種が行われます。無料の接種はこの集団接種のみ。

次に多いのは皮膚疾患。環境の変化やストレスから皮膚炎を発症してしまう人、飲食のお仕事に就くことの多いワーキングホリデーの方は、手荒れの症状に悩まされる人が多いです。痒みを抑えるお薬でまずは症状を抑え、保湿と手袋でとにかく悪化・再発を防ぐことが大切です。保湿剤も多く薬局で販売されていますが、医者に処方してもらうことで、保険が適用される場合もあります。薬局で複数のハンドクリームを購入して試す前に、医師の指示を仰ぐことで、時間もお金も節約できます。

その他、比較的多いのが、骨折や捻挫などの整形外科疾患。特に視界が悪くなる冬に交通事故に巻き込まれたり、転倒するケースが多いよう。整形外科疾患の特徴は治療が長引くということ。専門医による定期的な診察やレントゲンやCTスキャンなどの費用が嵩むだけでなく、リハビリにも時間とお金がかかります。キャッシュレスサービスを利用することで、診察費や交通費の立替だけでなく、理学療法治療なども保険期間内で受けることが可能です。

納得と思う方も多いはず、婦人科系疾患。慣れない環境で月経不順や不正出血を患う女性が多く、月経困難症や月経前症候群と診断される人も多数。ストレスや生活の変化で生理が遅れているだけと、しばらく放っておいたという人で、実は甲状腺異常が見つかり内分泌専門医にかかるという人もいます。特に女性に多い疾患。普段の体調管理には気を付けましょう。

そして、忘れてはいけないのが性感染症。バリアなしの性交渉をしてしまってから、もしかしてと心配になり受診する人、相手の方に症状が出てから初めて検査を希望するという人が多い。性感染症で一番多いのはクラミジア。無症状という人が多いのが問題点です。知らない間に次々に感染が広がる可能性があります。クラミジアのように服薬だけで完治が期待できる性感染症もありますが、根治が困難な性感染症もあります。性感染症はバリアなしの性交渉を1回でもすれば、感染する可能性があります。後から後悔しないように、自分の行動には責任を持ちましょう。なお、症状が出たら、必ずパートナーも一緒に受診するようにしましょう。

また、コンタクトレンズ装着の不調による眼科受診も多い症状。限られた予算の留学生活で使い捨てレンズを少し長めに使用してしまったり、長時間勤務などの理由でかなり長い間コンタクトレンズを装着してしまったことによる結膜炎などの患者様が多数いらっしゃいます。

その他、キューバやメキシコ旅行中に発症した胃腸炎で、カナダ帰国後に受診される方、女性に特に多い尿路感染症(膀胱炎)もよく見られる疾患です。尿路感染症は「友達に貰った抗生剤を服用してみた」とおっしゃる方が少なくありません。抗生物質は日本でもカナダでも処方薬です。余分に所持していることがそもそもの問題点ですが、人から薬を貰う前に、医師の指示を早めに仰ぐようにしましょう。また、妊娠・中絶の相談も受けることがあります。虫歯や詰め物が取れてしまったなどの歯科の相談も多く寄せられます。特に海外旅行保険適用外の妊娠関連や歯科治療。不必要な出費を抑えて、必要な治療のみを行うように、日本人スタッフがサポートしています。

渡航前に「自分は大丈夫、医者にかかることはないだろう」と思っていても、海外生活が長くなれば、身体の不調は避けられません。無理して我慢し、症状を悪化させる前に医師の診察を受けるように心がけましょう。

そして、多くの人が使う事はないだろうと加入している海外旅行保険。キャッシュレスで受診できれば心配する事はないが、一体どれくらいの治療費が発生しているのだろう?キャッシュレス+日本語受診サービスをあまり受けることが出来ない国内保険に入っている人は要注意。

カナダでは多くの総合病院が、「保険会社との会計やりとりはしない」というポリシーを実施しています。高額の治療費でも一旦自身で支払い、後日保険金申請するという流れがほとんどです。後日支払われるとは言え、高額の治療費を一旦支払えないという人は、キャッシュレス対応可能な海外旅行保険に加入する方が賢明かもしれません。

Wellness Kizuna調べ(2017年1月〜7月)
Health One Medical Centre、その他トロント近郊総合病院での受診

鶴 慶子さん(RN-日本、RPN-オンタリオ州)

日本で9年看護師経験を積んだ後、渡加。ジョージブラウンカレッジナーシングコースを卒業後、オンタリオ州看護師免許を取得。現在はトロント市内の医療機関で看護師として勤務する傍ら、日系コミュニティー向けの医療サポート会社WELLNESS KIZUNAのクリニカルディレクターとして活躍中。