People. 17「どうせ重すぎる責任を負うなら、人生 ボロボロでもいいからやりたいようにやろう」Tatsuya Kusabaさん BC Beer Trading LLC/CEO|カナダワーホリを超えた今

きっかけ

 トロント・バンクーバーでワーホリを経た後に、カナダ産クラフトビールの輸入会社の経営者という、記事のトピックにおあつらえ向きすぎる経歴の現在。個人的には当初の目的とは大きく乖離したキャリアですが、計2年のカナダ滞在が現在の自分の原点なのは間違いないでしょう。

 渡航のきっかけは大学卒業後の新卒で入った医療機器会社での業務に付随する社会責任が重すぎたこと。サボったりミスをすれば誰かが物理的に死ぬ可能性があるという、半端な人間が背負うには重すぎる責任が伴うものだったことでした。仕事への考え方を強制的に自他の命懸けになる環境に置かれたことで「どうせ重すぎる責任を負うなら、人生ボロボロでもいいからやりたいようにやろう」と自分の人生に変な覚悟と諦念が固まり、一年足らずで会社を辞め海外渡航先を探しました。

まずは何より違いを知る

 なぜカナダだったかといえば、そこそこ大きな音楽カルチャーシーンのある海外であればどこでもいいというのが本音でした。当時の目的は、「本場は凄い」とか「海外では今こんな感じで」みたいな話はどこまで本当なのか確認したかっただけ。というのも、学生時代よりロックバンドの手伝いやテクノ音楽のトラックメイカーをしていて、日本では有名なカルチャーシーンですら演者もお客も変わらない内輪ノリが多いことにちょっと失望していました。

 コンテンツのクオリティーが高く、公共性と独自性の高いカルチャーシーンを体験できるのかできないのか。その確認の為だけに海外に行くというのも気が引けていましたが、今思うとこの確認作業が一番大事なことだったと痛感しています。

得られた確証と、いい意味での自信喪失

 結果から言えば、計2年の滞在(1年ずつ滞在で間の2年は日本帰国)で、トロントだけでなく目的であった音楽カルチャーシーンは体験できました。確かに息づく文化も違ったし、内輪ノリにならない独自性も公共性も存在して可能性を再確認した反面、途方もないやるべきことの内容の多さに打ちのめされる結果にもなりました。

 私個人の現在としては、クラフトビールという完全なる別の分野に行ってしまいましたが、何をするにしてもトロントでの紆余曲折がなければ今の自分もないかと思います。次回ではトロントで経験したこと。打ちのめされた内容について触れることができればと思います。