思い出の一作「ある人のロボットの静止画」VFXアニメーター・堀脇健史さん (鹿児島県出身・モントリオール在住)

 人生には起点というものがある。プロサッカー選手のあの人はアニメ「キャプテン翼」をみてサッカー選手になることを目指したのかもしれないし、ペットシッターのあの人は、心温まる犬の映画に心を動かされ、その仕事を選択したのかもしれない。ここでは、カナダで多種多様なジャンルで活躍されている方に「今の自分を作った」または、「思い出深い」作品を聞いてその人の核となる部分を掘り下げていきたいと思う。

 記念すべき第1回目のゲストは鹿児島県出身で現在モントリオールで3Dアニメーターとして活躍されている堀脇健史さんです。

3Dアニメーターとしての仕事

ー3Dアニメーターとは制作でどのような役割を担っているのでしょうか?

堀脇氏 わかりやすく説明すると3Dアニメではモデラーと呼ばれる3次元モデルを作る人たちがいて、それにリガーと呼ばれる人たちが関節を作って、そこに僕らアニメーターがパソコンで動きをつけていきます。例えばそのキャラクターがパンチをするシーンでは腰から動かしていくなど、人間の身体の動きにできるだけ忠実に沿ってキャラクターの動作を作り上げていきます。

ーすでに創られたものに息を吹き込んでいくような作業ですね。

堀脇氏 そうですね。具体的な作業の流れで言うと、演技のシーンをやるときは、まずこういうアニメーションにしたいというものをプランし、その後実際に自分が演技しているところを撮影したり、ユーチューブで探してとってきてつぎはぎしたり、それらを参考にしながら、よりリアリスティックに、時にはカートゥーニーに作り上げていくという感じですね。

絵を描くことが好きだった

ー子供のころから絵を描くことやクリエイティブなことをされていたのですか?

堀脇氏 絵を描くことは子供の頃から好きでした。ポケモンのキャラクターを合体させた絵を描いて遊んだり、図工の授業も好きで木やダンボールなどを使って物作りすることが好きでした。

ある作品との出会い

堀脇氏  高校ではShadeという3Dのソフトを触れられる環境にいたので、こういうソフトもあるんだ、と、少しずつ触るようになっていきました。そんな中、たまたまある人のロボットの静止画を発見してそれがすごくかっこよく見えて心惹かれたんですよね。その作品にインスパイアされてより3Dで色々なものを作るようになっていきました。ちなみに、その方とは光栄なことに僕がプロのアニメーターになった後にお会いすることができ、すごく嬉しかったですね。

自身で作成した初めての3D作品が道を開いた

堀脇氏  それから1年後の2006年に自分で1から全て手掛けた初めての3Dムービーを制作しました。ロボットが車のドアを開けようと試みるも開かず、挙句の果てにドアノブが外れてロボットが激怒するという数十秒ほどの短いムービーだったのですが、卒業発表で提出したところ、笑ってくれる人もいて、みんなの反応をみたときに「僕は3Dアニメをやっていきたい」と思い、その道に進むことにしました。振り返ってみればこの初めての3D作品が僕の人生の道しるべを作った作品になったのではないかと思います。

これから目指すところは

堀脇氏 1つのことに縛られずに色んなことに挑戦したい性なので、3Dアニメーションのほかに、2Dアニメーションや、ブレンダーという違う3Dソフト、それに歌うことなど、色々なものにチャレンジしてみたいですね。あとは、やはり居住地も一箇所に絞るのではなく、世界中、興味を惹かれる地を点々としながら仕事をしていきたいです。好奇心に従って知らない文化、まだ未知のものを求めて人生の旅をしていきたいです。

https://twitter.com/horiken1209
https://www.linkedin.com/in/k-horiwaki/

【堀脇健史さんプロフィール】
 カナダ在住歴4年。原田学園キャリアデザイン専門学校卒業。日本では2012年にダンデライオンアニメーションスタジオでアニメーターとしてのキャリアを開始。その後日本で大小数社でアニメーターを経験し、2017年にバンクーバーへ渡航、2018年からカナダでのアニメーターとしてのキャリアを再開。以降バンクーバーとモントリオールを行き来しつつ、現在はモントリオールで「Mr.X」に所属しVFXアニメーターとして活躍中。