一歩踏み出す|東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い【第105回】

一歩踏み出す|東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い【第105回】

 2021年3月11日。東日本大震災から10年。あれから10年、あっという間の10年、まだまだ先の見えない10年。人によって感じ方は大きく違う10年。

 10年一区切りという言葉がありますが、震災の被災者の皆さんにとっては「一区切り」なんて無い。あくまで時間だけが10年経過したという事実だけで、悲しみや悔しさ、虚しさ、辛さはあの時と同じという人は多いです。最近東北ではとても地震が多かったです。地質学の専門家は東日本大震災の余震だと言っていました。10年も経過しているのに余震って、私たちはいつまでこの時折襲ってくる大きな地震と向き合っていかなければいけないのでしょうか。しかし、地球の時計からしたら10年なんて一瞬の時間で、地殻の変動など10年などは時間にすら感じていないのかもしれません。

 2021年3月11日は政府主催の東日本大震災追悼式が行われました。しかし、政府はこれが「最後」としています。10年だから区切りをつける、復興が進んできたから大丈夫だろう。色々な考え方がありますが、被災地は「終わったこと」にされることはとてもつらいです。政府にも予算があり、新型コロナがこれだけの猛威を振るい、日本経済がどん底にいる状況で、無理も言えないところもあります。

 10年という区切りの年に、本当ならばもっともっと亡くなった人を思い出したかった。その思い出に浸りたかった。たくさんの思い出をたくさんの仲間と分かち合い、みんなでまた泣きたかった。献杯もしたかった。

 しかし、これらは全て新型コロナの影響で行えませんでした。一人静かに故人を偲び、一人涙した人がどれだけいたことか。人と人との繋がりはとても大事で、それが断ち切られることがどれだけつらいか今回思い知りました。

 10年で東北は変わったか。10年前の東北よりも良い東北になっているか。私は毎日これを自問自答する日々です。亡くなった命は戻りません。しかし亡くなった命を無駄にしないために、10年かけて東北は発展してきました。建物などももちろんですが、「心」の部分で10年前とは違う東北になっていなければいけません。そしてあの悲劇を繰り返さないように、防災に関する学びや伝承はもっと深めていかなければいけません。

 もう10年、まだ10年。でも10年という月日は確実に経過しました。区切りではなくここを再度スタートに新たな東北に向けて歩みをまた進めていきたいと思います。

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