ジブリ新作、宮﨑駿監督『君たちはどう生きるか』
邦画初&アニメ世界初のオープニング上映作品に決定
今年のトロント国際映画祭(TIFF)は、宮﨑駿監督の10年ぶりの新作『君たちはどう生きるか』が日本映画で初めてTIFFのオープニングを飾り、是枝裕和監督や濱口竜介監督の新作も上映されるなど、注目の日本映画が目白押しだ。
宮﨑駿監督 『君たちはどう生きるか』、是枝裕和監督 『怪物』、濱口竜介監督 『悪は存在しない』、近浦啓監督 『大いなる不在』、塚本晋也監督 『ほかげ』 など、日本の話題作ふくむ注目38作品!
注目の日本関連作品
注目#01 【オープニング上映作品】Gala Presentations
『The Boy and the Heron』原題『君たちはどう生きるか』
監督: 宮﨑駿
主演: 山時聡真、菅田将暉、柴咲コウ、あいみょん、木村佳乃、木村拓哉
戦時下の日本で、母親を火災で亡くした少年が東京から母の実家へ疎開する。そこで奇妙なアオサギに遭遇し、謎の塔へと導かれていく。宮﨑駿監督が少年時代に母親から手渡された同名小説の名を借りて描く自伝的ファンタジーで、『風立ちぬ』以来10年ぶりの長編アニメーション。日本映画初のTIFF開幕作品。インターナショナルプレミア。
注目#02 Platform
『Great Absence』原題『大いなる不在』
監督: 近浦啓
主演: 森山未來、藤竜也、真木よう子、原日出子
北九州の警察署から突然の電話を受け、20年前に家族のもとを去ってから疎遠になっていた父親の家を訪れると、父親は認知症を患い、後妻が行方不明になっていた。長編デビュー作『コンプリシティ 優しい共犯』(2018)がTIFFで上映された近浦啓監督の長編第2作が、TIFFコンペ部門のプラットフォーム部門に選出された。ワールドプレミア。
注目#03 Special Presentations
『Evil Does Not Exist』 原題『悪は存在しない』
監督: 濱口竜介
主演: 大美賀均、西川玲、小坂竜士、渋谷采郁
父と8歳の娘が暮らす自然豊かな村に、グランピング場の開発計画が持ち上がる。計画の不備を問題視する地元住民をよそに、事業主は形だけの住民説明で開発を進めようとする。『ドライブ・マイ・カー』(2021)の音楽を担当した石橋英子のライブパフォーマンス用映像制作の過程で、濱口監督が脚本を書き下ろして誕生した長編劇映画。北米プレミア。
注目#04 Centerpiece
『Shadow of Fire』原題『ほかげ』
監督:塚本晋也
主演:趣里、森山未來、塚尾桜雅、河野宏紀、利重剛、大森立嗣
終戦直後の日本。身体を売って稼ぐ女性、復員兵の青年、戦災孤児の少年が、半焼けの居酒屋で家族のように暮らすようになる。苦境を生き抜く少年の目を通し、戦争を生き延びた人々が痛みや闇と向き合う姿を描く。『野火』(2014)、『斬、』(2018)に続き、戦争を描き続ける塚本晋也監督の最新作。北米プレミア。
注目#05 Special Presentations
『Monster』 原題『怪物』
監督:是枝裕和
主演:安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、田中裕子
母子家庭で暮らす小学校高学年の男児の様子がおかしくなり、母親が問いただすと担任教師や学級内の友人関係に問題があることが分かる。母親が校長に問題解決を求めると、誠意のない謝罪を繰り返されるが、教師や子どもたちには別の言い分があった。カンヌ映画祭脚本賞、クィア・パルム賞受賞。北米プレミア。
注目#06 TIFF Docs
『The Contestant』
監督:クレア・ティトリー
主演:浜津智明(なすび)、土屋敏男
1998年に日本のバラエティー番組『進ぬ!電波少年』で、懸賞に応募して当選した商品のみで生活する企画がテレビ放送された。この番組で15か月間にわたりアパートの一室に閉じ込められて暮らし、一躍有名になった男性(なすび)の実話を、南アジアと東南アジアで育ったイギリス人監督がドキュメンタリー映画化。ワールドプレミア。
注目#07 Centerpiece
『Perfect Days』
監督:ヴィム・ヴェンダース
主演:役所広司、田中泯、柄本時生、アオイヤマダ、石川さゆり、中野有紗
東京・渋谷の公衆トイレ清掃員の男は、小さな家で植物に囲まれ一人暮らし。変化のない毎日を送るかに見えて、音楽や書物を愛し、日々を豊かに暮らしていた。『パリ、テキサス』(1984)や『ベルリン・天使の詩』(1987)のヴィム・ヴェンダース監督が、日常生活に見出す美を描く。主演の役所広司が今年のカンヌ映画祭主演男優賞を受賞。カナダプレミア。
注目#08 Wavelengths
『Light, Noise, Smoke, and Light, Noise, Smoke』
監督:西川智也
日本の夏の花火大会で撮影された台詞のない6分間の映像で、『Wavelengths 2: Sundown』の短編6作品のうちの1本として上映される。短編『Amusement Ride』が2019年のTIFFで上映された西川智也監督の新作短編。
TIFF今年の注目作品
今年は、昨年までのContemporary World Cinema部門がCenterpiece部門に改められ、世界中からの多様な映画を上映するTIFFの中心的部門と位置づけられた。Gala Presentations部門やSpecial Presentations部門は例年と変わらず豪華だが、今年はハリウッドスターが監督を務める作品が目立つ。そんな今年の上映作品の中から、注目の30作品を紹介する。
All image credit: Courtesy of TIFF
注目#01 Special Presentations
『Next Goal Wins』
監督:タイカ・ワイティティ
主演:マイケル・ファスベンダー、エリザベス・モス、オスカー・カイトリー
サモアのサッカーチームが2002年のワールドカップで31対0の歴史的大敗を喫した12年後、オランダ系アメリカ人の指揮官がチームを叩き直し、再びワールドカップへの出場を目指す。ワールドプレミア。
注目#02 Gala Presentations
『Dumb Money』
監督:クレイグ・ギレスピー
主演:ポール・ダノ、セス・ローゲン、ピート・デヴィッドソン
GameStop社の株をめぐり、個人投資家とファンド投資会社の大富豪が巻き起こしたウォールストリートのスキャンダルを描いた作品。『アイ,トーニャ』(2017)のクレイグ・ギレスピー監督最新作。ワールドプレミア。
注目#03 Gala Presentations
『Sly』
監督:トム・ジムニー
主演:シルヴェスター・スタローン
ロッキーやランボーを演じたアクション俳優であると同時に、脚本家や監督として半世紀にわたり活躍してきたシルヴェスター・スタローンが、キャリアと人生を振り返るドキュメンタリー。ワールドプレミア。
注目#04 Special Presentations
『The Holdovers』
監督:アレクサンダー・ペイン
主演:ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、ポール・ジアマッティ、ドミニク・セサ
1971年のエリート寄宿学校。毎年冬休みには教師も生徒も帰省するが、帰る先がない生徒と嫌われ者の教師は、宿舎でともに過ごす。その間、互いに衝突しながらも理解を深めていく。インターナショナルプレミア。
注目#05 Gala Presentations
『Flora and Son』邦題『フローラとマックス』
監督:ジョン・カーニー
主演:イヴ・ヒューソン、ジャック・レイナー、オーレン・キンラン
シングルマザーが衝突してばかりの息子にギターを与えるが、息子は見向きもしない。そこで自らギターを習い始める。『シング・ストリート』(2016)のジョン・カーニー監督最新作。インターナショナルプレミア。
注目#06 Special Presentations
『Quiz Lady』
監督:ジェシカ・ユー
主演:オークワフィナ、サンドラ・オー、ジェイソン・シュワルツマン
クイズ番組マニアの物静かな女性に、母親が賭博で多額の借金をして逃げたと連絡が入り、愛犬も誘拐される。女性はクイズ番組の優勝賞金で母親の借金を返済しようと、破天荒な姉とともに旅に出る。ワールドプレミア。
注目#07 Platform
『Dream Scenario』
監督:クリストファー・ボルグリ
主演:ニコラス・ケイジ、ジュリアン・ニコルソン、マイケル・セラ
人が寝ている間に見る夢に入り込み、夢を目撃するようになった教授が、多くの人の夢に登場して有名人になってしまう。アリ・アスター共同製作のホラー・コメディ。プラットフォーム部門開幕作。ワールドプレミア。
注目#08 Special Presentations
『Hit Man』
監督: リチャード・リンクレイター
主演:グレン・パウエル、アドリア・アルホナ、オースティン・アメリオ
学生に哲学を教える傍ら、警察のおとり捜査に協力していた教授が、殺し屋に扮して潜入捜査することになる。殺し屋を演じて依頼人と接触していたはずが、死人が出て本物の犯罪に巻き込まれていく。北米プレミア。
注目#09 Special Presentations
『Knox Goes Away』
監督:マイケル・キートン
主演:マイケル・キートン、アル・パチーノ、マーシャ・ゲイ・ハーデン
急速に進行する認知症を患い、引退を考えていた殺し屋のもとに、犯罪に巻き込まれた息子が助けを求めて現れる。唯一考えうる打開策は複雑で、悪化する病状と闘いながら息子を救おうとする。ワールドプレミア。
注目#10 Special Presentations
『North Star』
注目#11 Special Presentations
『Woman of the Hour』
監督:アナ・ケンドリック
主演:アナ・ケンドリック、トニー・ヘイル、ダニエル・ゾヴァットム
1970年代に強姦殺人を犯しながらテレビ番組『The Dating Game』に出演し、優勝して出演女性とのペア旅行を勝ち取った連続殺人鬼ロドニー・アルカラを描く。アナ・ケンドリックの監督デビュー作。ワールドプレミア。
注目#12 Special Presentations
『Poolman』
監督:クリス・パイン
主演:クリス・パイン、ジェニファー・ジェイソン・リー、アネット・ベニング
日々プールの点検と清掃につとめながら市議会に参加するプール清掃員の男が、ロサンゼルスの街にはびこる陰謀に気づき、街を守るために奔走する。クリス・パインの監督デビュー作。ワールドプレミア。
注目#13 Special Presentations
『Anatomy of a Fall』原題『Anatomie d’une Chute』
監督:ジュスティーヌ・トリエ
主演:サンドラ・フラー、サミュエル・タイス、スワン・アルロー
フレンチアルプスで暮らす作家の夫が、屋根裏の窓から転落死。息子には視覚障害があり、妻に嫌疑がかけられるが、自殺か他殺か判然としないまま裁判が始まる。今年のカンヌ映画祭のパルムドール。カナダプレミア。
注目#14 Special Presentations
『Fingernails』
監督:クリストス・ニク
主演:ジェシー・バックリー、リズ・アーメッド、ジェレミー・アレン・ホワイト
2人が恋愛関係にあるか否かを機械で判定できる世界で、恋人との愛の証明書を持つ女性が同僚への恋愛感情を疑い始める。『林檎とポラロイド』(2020)のクリストス・ニク監督初の英語作品。インターナショナルプレミア。
注目#15 Special Presentations
『The Dead Don’t Hurt』
監督:ヴィゴ・モーテンセン
主演:ヴィゴ・モーテンセン、ヴィッキー・クリープス、ソリー・マクラウド
1860年代に出会った男女がネバダ州で暮らし始める。男性の南北戦争出征後、残された女性は地元の有力者や腐敗した政治家からの支配に立ち向かう。ヴィゴ・モーテンセンの監督第2作。ワールドプレミア。
注目#16 Special Presentations
『Ezra』
監督:トニー・ゴールドウィン
主演:ボビー・カナヴェイル、ローズ・バーン、ロバート・デ・ニーロ
医師の勧めに従い自閉症の息子を特別学級に入れようとする母に対し、ニュージャージーで話芸を生業にする父は、LAでのトーク番組出演に合わせて息子をアメリカ横断の旅に連れ出してしまう。ワールドプレミア。
注目#17 Special Presentations
『Wildcat』
監督:イーサン・ホーク
主演:マヤ・ホーク、ローラ・リニー、フィリップ・エッティンガー
1950年代を舞台に、米国南部の短編作家フラナリー・オコナーが最初の小説を出版するまで奮闘する姿を描く。娘のマヤ・ホークを主演に据えてイーサン・ホークが監督を務める。インターナショナルプレミア。
注目#18 Discovery
『Gonzo Girl』
監督:パトリシア・アークエット
主演:ウィレム・デフォー、カミラ・モローネ
原作の著者シェリル・デラ・ピエトラが、ジャーナリストのハンター・S・トンプソンの秘書をしていた経験をもとに描いた自伝的小説の映画化。パトリシア・アークエットの監督デビュー作。ワールドプレミア。
注目#19 Centerpiece
『Fallen Leaves』原題『Kuolleet lehdet』
監督:アキ・カウリスマキ
主演:アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネン
フィンランドのヘルシンキで、日中は単調な職場で働き、生気のない顔の常連客が集う酒場で過ごす孤独な日々を送っていた男女が、偶然出会って関係を深めていく。カンヌ映画祭の審査員賞受賞作。カナダプレミア。
注目#20 Centerpiece
『Fitting In』
監督:モリー・マクグリン
主演:マディ・ジーグラー、エミリー・ハンプシャー、ジュリエット・アマラ
交際中の彼とのセックスを迷う10代の少女が、避妊薬を処方してもらおうと受診した婦人科で稀な女性器疾患を診断され、それまでの世界が一変してしまう。モリー・マクグリン監督の半自伝的作品。カナダプレミア。
注目#21 Midnight Madness
『Aggro Dr1ft』
監督:ハーモニー・コリン
主演:ジョルディ・モリャ、トラヴィス・スコット
精神を苛まれる殺し屋が、魔の化身を倒そうとする。赤外線カメラによる幻想的な映像で、ジャンルを超越して暴力や愛を描く。『スプリング・ブレイカーズ』(2012)のハーモニー・コリン監督最新作。北米プレミア。
注目#22 Gala Presentations
『Finestkind』
監督:ブライアン・ヘルゲランド
主演:ベン・フォスター、トビー・ウォレス、トミー・リー・ジョーンズ
退屈な学生生活から逃れようと、漁師の兄に頼んで弟が漁船で働くことになる。弟は地元になじみ、漁師仲間と漁を続けるが、借金が膨らんだことで兄弟は危険なドラッグの取引に手を出してしまう。ワールドプレミア。
注目#23 Special Presentations
『In Restless Dreams:The Music of Paul Simon』
監督:アレックス・ギブニー
主演:ポール・サイモン、ウィントン・マルサリス、ローン・マイケルズ
「サウンド・オブ・サイレンス」や「グレイスランド」の名曲を世に送り出し、81歳の今なお最新アルバムの制作に励むポール・サイモンの、60年以上にわたる活躍を追うドキュメンタリー。ワールドプレミア。
注目#24 Special Presentations
『The Zone of Interest』
監督:ジョナサン・グレイザー
主演:サンドラ・フラー、クリスティアン・フリーデル
アウシュヴィッツ強制収容所に隣接する地に居を構え、ホロコーストのすぐ外で日常を送っていたナチス司令官ルドルフ・ヘスと妻の暮らしを描く。カンヌ映画祭のグランプリ受賞作。カナダプレミア。
注目#25 Special Presentations
『Shoshana』
監督:マイケル・ウィンターボトム
主演:ハリー・メリング、イリナ・ストラシェンバウム、ダグラス・ブース
1938年、パレスチナ人とユダヤ人の緊張が高まる英国統治下のテルアビブ。英国人警官と恋仲にあった娘は、独立のため蜂起した反政府勢力の同胞と、鎮圧しようとする恋人との間で選択を迫られる。ワールドプレミア。
注目#26 Special Presentations
『Seven Veils』
監督:アトム・エゴヤン
主演:アマンダ・サイフリッド、レベッカ・リディアード、ダグラス・スミス
カナダのオペラカンパニーで、偉大な演出家の死後、彼に師事していた若い女性演出家が戯曲サロメの舞台を引き継ぐ。演出を手がけるうち、過去のトラウマと向き合わざるを得なくなる。ワールドプレミア。
注目#27 Special Presentations
『Pain Hustlers』
監督:デヴィッド・イェーツ
主演:エミリー・ブラント、クリス・エヴァンス、キャスリーン・オハラ
バーで働くシングルマザーが製薬ベンチャー企業の社長と出会い、依存性の高い疼痛緩和薬のオピオイドを世に広めることになる。「ハリー・ポッター」シリーズのデヴィッド・イェーツ監督作。ワールドプレミア。
注目#28 Special Presentations
『Mother Couch』
監督:ニクラス・ラーソン
主演:ユアン・マクレガー、リス・エヴァンス、テイラー・ラッセル
家具店で母がソファーに座り込み、動きたくないと言い始める。母の奇行を気に留めない弟妹に苛立ちながら、息子は母をなだめて連れ帰ろうとする。ニクラス・ラーソンの監督デビュー作。ワールドプレミア。
注目#29 Primetime
『All the Light We Cannot See』
監督:ショーン・レヴィ、スティーヴン・ナイト
主演:アリア・ミア・ロバーティ、マーク・ラファロ、ヒュー・ローリー
1944年夏のフランスで盲目の少女がラジオ小説を放送。これを好んで聴くドイツ兵と、暗号と疑うナチス将校がいた。ピューリッツァー賞を受賞したアンソニー・ドーアの同名小説をTVシリーズ化。ワールドプレミア。
注目#30 Special Presentations
『Memory』
監督:ミシェル・フランコ
主演:ジェシカ・チャステイン、ピーター・サースガード、メリット・ウェヴァー
NYで社会福祉に従事する女性が、高校の同窓会で再会した男性に家まで尾行される。突然の再会から2人は過去に直面することになる。『ニューオーダー』(2021)のミシェル・フランコ監督最新作。北米プレミア。
トロント国際映画祭2023の楽しみ方
チケット料金
チケット料金は、通常上映(Regular Screenings)とプレミアム上映(Premium Screenings)の料金のみ。
例年、指定席制の会場(Roy Thomson Hall、Princess of Wales Theatre、Royal Alexandra Theatre)と自由席制の会場(TIFF Bell Lightbox、Scotiabank Theatre)があり、指定席制の会場では、スクリーンが見やすい1階席の中央辺りの値段が高く、2階席や3階席の端のほうの値段は安い。
なお、25歳未満のUnder-25 Free Pass所持者は、一部の通常上映の料金が13ドルからと割安だ。
レッドカーペット
コロナ禍が一段落した昨年から、2019年以前のようなレッドカーペットの賑わいが復活し、一般の映画ファンがレッドカーペットのスターからサインをもらって交流する光景が見受けられた。今年も一層、以前のような賑わいが戻るのでは、と思っていた矢先、ストライキの話が飛び込んできた。
脚本家や俳優の仕事に対する生成AI利用の規制や、動画配信事業における報酬の適正化といった問題をめぐり、2023年5月から全米脚本家組合がストライキを実施。さらに7月からは、米映画俳優組合もストライキに突入した。これにより、映画の撮影がストップしているだけでなく、完成作品の宣伝活動もできない状態になっていることから、例年ハリウッドスターで賑わうレッドカーペットや舞台挨拶の実施を危ぶむ声が上がっている。この状況への対応策だからかもしれないが、今年の上映作品にはハリウッドスターが監督として携わるものが多く見受けられる。
9月のTIFF会期中もストライキが継続していると、米映画俳優組合に加入しているハリウッドスターは、レッドカーペットに参加できない。この点で、今年は少し賑わいがスケールダウンするかもしれない。
来場ゲストの詳細について、公式サイトをこまめにチェックすることをおすすめする。
TIFF公式サイト→ https://www.tiff.net/
世界の映画を堪能できる映画祭
ストライキにより、今年は例年と少し様相の異なる開催になるかもしれないが、そもそもの始まりが、世界中の映画祭で話題になった作品を集めてくる「Festival of Festivals」だったTIFFには、例年と変わらず世界各国の素晴らしい作品が集まっている。
その証拠に、今年は日本映画初のTIFF開幕作品に選ばれた宮﨑駿監督の『君たちはどう生きるか』をはじめとして、是枝裕和監督や濱口竜介監督の新作など、日本の名だたる監督の新作が上映される。また、近浦啓監督の新作がコンペティション部門であるプラットフォーム部門に選出され、塚本晋也監督の新作もセンターピース部門で上映されるなど、日本映画がとても充実しているのは嬉しい。
日本映画を観てもよし、知らない国の知らない監督や俳優の映画を、前情報なしにふらりと観に行くもよし、ぜひこの機会に世界各地の映画を堪能しよう。