サステナブルなライフスタイル|カナダ・ニューノーマルの時代

サステナブルなライフスタイル|カナダ・ニューノーマルの時代

 新型コロナによって注目が増したキーワードが「サステナブル」だ。人間・社会・地球環境の持続可能な発展を意味するこのコトバはコロナ前からライフスタイルやビジネスで注目されてきた。アフターコロナ・ウィズコロナ時代のキーワード「サステナブル」がどのように注目されているか事例を紹介。

01.
観光の「ニューノーマル」

 世界観光機関(UNWTO)による「One Planet Vision」が公開され、「観光」におけるサステナビリティ、そして「ニューノーマル」が注目を浴びている。今回公開された「One Planet Vision」は、これからの観光業がどのように発展していくべきかをまとめた提言。今回のコロナウイルスの感染拡大を受け、世界各地で大打撃を受けた観光業。このような危機に対する耐性に重きを置いたサステナブルな成長を可能にする要素が中心となっている。

 中には、「健康」や「コミュニティーへの貢献」など、「人」に関するものもあれば、「自然保護」や「環境保全」など、「自然」に関するものもあり、サステナブルな観光業を創り上げるために二つが共存する大切さが窺える。

02.
食料品デリバリーサービスに見る可能性

 自粛期間中に様々なデリバリーサービスを利用した人も多いのではないだろうか。中でも、最近需要が急増しているのが、食料品のデリバリーサービスだ。これを「消費者がより健康的なライフスタイルへとシフトしている証拠」だと見るギレス・ハンフリーズ氏。彼は、イギリスで人気の食料品デリバリーサービス「マインドフル・シェフ」の創業者の一人だ。

 「マインドフル・シェフ」は、デリバリーでありながら地元の農家や生産者から食材を調達。彼はコロナウイルスの感染拡大が引き金となった「ニューノーマル」を前向きに捉えている。「多くの街がロックダウンに入ったことで、より多くの人が食や健康について考え直すようになった。それをきっかけに、料理をする人も増えた」と語り、健康的なライフスタイルへシフトする人が増えることに対して期待を寄せている。

03.
パンデミックにより広まる「セルフケア」

 需要が増加しているのは食料品のデリバリーサービスだけではない。アメリカの機関が行った調査によると、コロナウイルスの感染が拡大して以来、アメリカにおけるビタミンの利用率が28%増加。さらに、サプリの利用率も25%増加したそうだ。中でも人気なのが免疫に効果をもたらすサプリやビタミンCだという。この増加は「コロナウイルスが収束した後も続くだろう」と長期的な変化を期待する声もあった。

 自粛期間が長く続き、心と体の両方にストレスを感じている人も少なくない。そんな中、自分を労る「セルフケア」が大きな注目を浴びつつある。サプリやビタミンを買う動きも、その一環ではないかと考えられている。

04.
「ファスト」から「サステナブル」へ

 自粛期間中、服や靴などを購入する回数が減った人も多いのではないか。そんな中、より「サステナブルなファッション」への移り変わりが注目を浴びている。ある調査によると、コロナウイルスの感染拡大以来、28%の人が今まで以上に服を再利用・リサイクルしているという。また、女性の35%がこの先、購入する服を減らす意思を示したそうだ。

 今までは、流行を取り入れながら低価格で購入することができる「ファストファッション」が主流であったが、コロナウイルスの感染拡大により訪れた購買行動の変化により、「ファストファッション」から離れていく消費者が増えるのではないかと考えられている。お財布だけではなく、環境にも優しい「ニューノーマル」がファッション業界に訪れる日もそう遠くはないのかもしれない。

05.
食品ロスに対する意識変化

 コロナウイルスの感染拡大による消費者の行動が変化したのは、「食品ロス」に関しても言えることだ。「食品ロス」は先進国を筆頭に世界的な問題になっている。現に、トロントだけでも年に9万1000トンもの食品が廃棄されているという。

 イギリスのWRAP(The Waste and Resources Action Programme)とIGD(Institute of Grocery Distribution)は以前から食品ロスを減らすべく、スーパーやサービス業など食品の余剰を必要としているところに配布する取り組みを行なっている。

 今回、ロックダウンにより休業を余儀なくされたビジネスが持つ余剰の在庫もその対象となり、必要としている人々に再配布されたという。また、消費者の間でも自宅での食品ロスを減らすための動きが増えていると同組織はコメントした。

06.
オフィス不要論

 外出自粛により、在宅勤務が世界的に浸透した今、オフィスへ戻ることを必要としない企業も出てきている。その中にはツイッターなどの大企業も含まれる。

 実際、ビデオ通話サービス「ズーム」のCEOもこれについて言及している。アメリカでは、いくつかのスタートアップ企業は既にオフィスを撤廃する考えを示しているほどだ。

 オフィスを維持するコストや通勤する時間などを削減できるため、より「サステナブル」な働き方になるのではないかと期待されている。これらを考慮した上で、カリフォルニアに拠点を持つインターネット企業「ボックス」のCEOは、これからは人が集まる「オフィス」の魅力と通勤が不要になる「在宅勤務」の利便性を両立させた「ハイブリッド型」が浸透するのではないかと語っている。

07.
パンデミックにより見直される「交通の便」

 コロナウイルスの感染拡大により考え直されている生活の一部と言えば、「交通手段」だ。毎日何気なく使っていた電車やバス。在宅勤務がより一般的になった今、使用している人も著しく減っている。

 そんな中、車や公共交通機関による移動から離れていくライフスタイルを前向きに捉えている「ナショナル・ジオグラフィック」の記事がある。記事によると、こうした交通手段の見直しは「チャンス」だという。通勤・通学で多くの人が利用する満員電車のように混雑している場所は、コロナウイルスのような感染症が広まる恐れがある。

 また、環境へのダメージが大きいのも事実。実際、ロックダウンを実施した多くの都市では車やバスの数が減ったため、空気中の二酸化炭素の量が減ったという調査結果も出ている。これを機に、徒歩や自転車による移動へとシフトする人が増えることが期待されている。

08.
よりサステナブルな発電へ

 コロナウイルスの感染が拡大して以降、太陽光発電や風力発電をはじめとする再生エネルギーへの注目が高まっている。国際エネルギー機関(IEA)の調査によると、最近になり、今まで世界における発電の大半を占めていた石炭や火力などによる発電から再生エネルギーへのシフトが見られているという。その大きな理由として、一度発電所を設置した後に人の手がかからないということが挙げられている。その結果、ロックダウンにより人の移動が制御された時であっても、今まで通り稼働を続けることが可能になったということだ。国連が掲げている「SDG」にも含まれる、再生可能エネルギーへの移行。これをきっかけに、よりサステナブルなエネルギー源への移行が期待される。

09.
「サステナブル」な資本主義

 経済学者でありコロンビア大学の教授でもあるジョセフ・スティグリッツ氏が、現時点での資本主義のシステムの脆弱性について言及した。最近行われたインタビューでは、「今の資本主義の形による市場は思っていたほど耐性が強いものではなかった」と指摘。「アメリカではマスクなどの防具や検査などといった基礎的な部分で問題が発生した」と資本主義の脆さを非難した。そんな中、スティグリッツ氏は「より「先進的」な資本主義」の発展が鍵になると加えた。具体的には、より「コミュニティー」に寄り添った経済や企業のことを指す。また、「利益」を作り上げることが唯一の目標になってはいけない」と警鐘を鳴らした。

10.
「豆腐」が「ニューノーマル」の象徴に?

 世界的にも人気が高まっている「豆腐」が今回のパンデミックを受けさらに注目を浴びているという。最近では、肉の代替品としてアジア料理に限らず多くの料理で使用されることが増えた豆腐。健康的で低カロリー、さらに安いということでその人気は上昇し続けている。

 コロナウイルスの感染が拡大して以来、大きな打撃を受けた業界の一つが食肉業界だ。多くの人が一箇所に集まり勤務する工場などで爆発的な感染が起きて以来、肉の供給が減りつつあった。そんな中、多くの人が肉の代わりに「豆腐」に目をつけたという。実際、アメリカでの売り上げが急上昇しているのだとか。これを機に、菜食主義をはじめとするより健康的な食生活が広まることが期待されている。