ワンオペ飲食店の光と影|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第61回

ワンオペ飲食店の光と影|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第61回

最近、ラーメン屋や中華料理屋のワンオペ動画にハマっています。ワンオペとはワン・オペレーションの略語で、仕込みから営業、そして閉店後の清掃まで、店主が一人でお店をこなす様子を追いかける動画で、なかなか中毒性があって延々と見てしまいます。日ごろからラーメンの動画なんかを見ているせいで、そういった動画をリコメンドされているのかと思いきや、異業種の友人と話していてもやはり見てしまうそうで、巷で流行っているのかもしれません。という事で、今回はワンオペ飲食店についてのお話です。

食店のスタイルとしてどう見るワンオペ営業

料理人のはしくれとして、自分もカウンター数席のラーメン屋を夢見たことがあり、全てが自分の目の届く範囲にある、という環境に対するあこがれもあります。店主の職人技だけでなく、仕事に対する哲学や生き様も垣間見え、そういった部分がウケてワンオペ動画が流行っているのだと思いますが、一方で、身体を壊してしまったら、という心配やそもそも飽き性なので自分は続かないだろうなという思いもよぎってしまいます。

そもそも、このワンオペの営業というのは、飲食店のスタイルとしてどう見れば良いのでしょうか。近年、飲食業界ではなかなか働き手の確保が難しく、そういった点では採用や教育の事を考えなくても良いのは大きなメリットです。
また、一人で営業を行うので、良くも悪くもすべてを自分で決めることができるため、極端な話、お店を開けるかどうかも気分次第と言えるかもしれません。ただ、当然商売ですので頻繁に臨時休業をしていては、お客さんが離れてしまいますし、生活がかかっているのでどんなに疲れていようとお店を開けなくてはいけないというようなプレッシャーも相当なものでしょう。

メリットとデメリットは表裏一体

腕一本で勝負できるという点では、もちろん一人で出来る範囲ではありますが、やりたい事をやりたいように出来るのでそれも魅力に感じます。裏を返せば、全てを自分一人でやらなくてはいけない上に、飲食店は体力仕事ですので、やはりメリットとデメリットは表裏一体です。

そういったメリットとデメリットをすべて飲み込んで、その上で覚悟を決めてお店をやって、仮にお店が繁盛すれば、利益は基本的にすべて店主の懐に入ります。しかし、売れなければその責任をすべて一人で背負わなくてはいけません。また一般論として、好況時には分業が進んで生産性が上がりますが、もしワンオペ飲食店が増えているのであれば、逆の現象が起こっている可能性もあります。

実際にワンオペの飲食店は増えているのか?

そば・うどん店と限定的ではありますが、厚生労働省の調査による2007年と2017年のデータを比較してみます。事業所数は減少傾向ですが、1事業所当たりの従業者数は増えているので、市場全体で見ると労働集約が進んで、より労働生産性が上がっていることが見てとれます。

しかし、より詳しく見ていくと1~4人で運営されている小規模店の割合が、なんと10年で23%以上も増えています。ワンオペの飲食店は5%増、夫婦など2人で営業されているお店は16.7%増という状況です。そば・うどん店に限ったレポートなので、飲食業界全体についての結論は保留になりますが、流行りの裏側には、やはりワンオペ飲食店が全体的に増えているのかもしれません。

これが先にあげたようなメリット・デメリットを見据えた上での結果であることを望みますが、後継者不足や人材不足の結果で仕方なくという状況であれば、必ずしも楽観視できる状況ではないでしょう。