カナダCOVID-19パンデミックダイアリー ファンフェーン庸子さん

コロナ禍のなかで過ごした日々と気持ちの変化、見つめ直されたライフスタイルや仕事の価値観、家族との過ごし方などそれぞれの人生観について綴ってもらう。
〝大変な状況に置かれている方々の事を考えると生活ルーティンの変化は全く苦になりませんでしたし、社会の一員として出来ることはやっていこう、と前向きな気持ちでいました〟

ファンフェーン庸子さん

感染者数推移や他国の状況を踏まえ、カナダ政府も緊急事態の措置を取ると予想

 カナダで緊急事態宣言が出された当時は、様々な情報が溢れ、生活に関わるルールが日々更新される中、どのように本当に必要な情報を効率的に得られるのかと試行錯誤していました。息子が2人いるため、特に教育関連に関わるアップデートは見逃す訳にはいきませんでした。常にアンテナを張るようにはしていましたが、情報を追うだけで疲れたのを覚えています。

ストレスを感じる子どもの近くにいて心の変化に気付けるように努めた

 すぐに学校が閉鎖になり、オンライン学習に切り替わりました。しかし学校側も前例のない事なのでその環境が整うのに何週間もかかりました。私自身は在宅勤務になり、普段の仕事量をこなしながら子どもの勉強を見て僅かな隙間時間に家事、という分刻みのスケジュールがずっと続き、全てのタスクが中途半端のままです。夫婦二人が同じ時間に会議が入ってしまうと、6歳の次男を一人にしなくてはなりませんでした。そんな時は罪悪感でいっぱいでしたが、気付くと一人で本を読んでいたり、庭で昆虫を探したりと自分自身をエンターテイメントする術を学んでくれた様です。

 14歳の長男は難しい年齢でそれまでは親と衝突する事が多々あったのですが、自粛期間で家族とのコミュニケーションが必須だと悟った様で前より思いやりの気持ちが育ちました。今では日本語での会話が復活し、一緒に料理をしたりしています。彼の中学の卒業式はキャンセルになってしまい残念でしたが、オンラインの卒業式で友達と再会出来た様でそれはそれで思い出になったと思います。

人との繋がりで感じる事や学ぶ事など自粛生活を通してたくさんの気付き

 友人とは普段よりも意識的に連絡を取り、お互いにアップデートをすることでポジティブな気持ちや向上心を維持出来ていたと思います。それでも辛い時はありました。普段あまり弱音を吐かない私ですが、今回だけはと勇気を出して友人に辛い気持ちを話し、それを誠実に受け止めてもらった時には凄く救われました。周りに頼れる人がいる素晴らしさを実感出来た貴重な期間でした。

 それから人との繋がりと関連して「コミュニティー」の存在意義とその活用法を以前よりも深く考えた時期でもありました。社会は経済活動ではなく、人々の共感や協力を核として成り立っているということを今回の件で痛感しました。

そのため、積極的に自分の属するコミュニティーへの参加を心掛けました。個人的には日系企業の異業種の方々と毎朝「雑談会」を企画・運営し、日系コミュニティーの方との繋がりを温めていました。

 We’re all in this togetherという言葉通り、この大変な状況から脱するためには誰一人として競争をすることを考えず、全員が同じ方向を向いて責任を持って行動することが大切なんだとウイルスから教えられた期間でした。

日系の異業者の方々との朝の会
日系の異業者の方々との朝の会
ママ友とのウェブ会
ママ友とのウェブ会

パンデミックありきではなく自分の人生は自分が主体だという事を子どもには知っていてほしい

 ニューノーマルの生活に慣れてきたので(たまにマスクを持ち運ぶのを忘れますが)、これがいずれ新ノーマルとなっても違和感を感じなくなるでしょう。人とのコミュニケーションに関してはおそらく今後オンラインが主流になりそうですね。特にビジネスの会議は一過性のものでなくこれがスタンダードになるのではないでしょうか。オンラインですと微妙なタイムラグがあったり、その場の雰囲気や空気を読みにくいのが難点ですので、それを埋めるために各自がより明確で簡潔な言葉で相手に伝える努力する姿勢が求められると思います。

 伝えたい事を言語化してアウトプットする、その際に相手を思いやったりリスペクトしながら相手に渡す、というプロセスが以前よりも丁寧に扱われていくことになると思いますし、そうあるべきだと思います。それと同時に実際に人に会えるという事がどれだけ貴重なのかを認識し、その人と過ごせる時間に心から感謝して楽しめるようになり、貴重な時間をより濃いものにするようと務めると思います。

 この先何が起きるかは分からないですし、我々の子ども世代までこのウイルスと共存しなければならない可能性もあります。けれどもパンデミックのせいで人生が味気ないものになるのは寂しいですよね。パンデミックありきではなく自分の人生は自分が主体だという事を子どもには知っていて欲しいです。行動範囲は制限されていますが想像範囲は誰にも邪魔されません。意識的に物事をいい方向に捉える癖を付け、制約のある中でも人生をどうやって楽しめるのかというマインドを持っていればニューノーマルの生活も楽しめると信じています。