数字で見るカナダのLGBTQ+第二弾

数字で見るカナダのLGBTQ+第二弾

 カナダの目キーワードやトレンド、社会・時事問題などを数字から調べて理解する「数字で見るカナダ」シリーズ。今回はプライド月間を迎えたカナダの「LGBTQ+」第二弾をお届けします。


トルドー首相がLGBTQ2差別について演説した時間

 2017年11月28日、カナダのジャスティン・トルドー首相が、首都オタワの議会でLGBTQ+の差別禁止について公式に謝罪しました。演説では、二度とLGBTQ2への差別や抑圧を二度と繰り返さないと、涙ながらに宣言した。スピーチの終わりには、その場にいた議員全てが首相に賛同し、総立ちで拍手を送った。


パスポートに3つ目の性別
「X」が加わる

 2017年8月31日に施行した新たな制度として、パスポートの性別欄に「Male」「Female」のほかに、「X」欄が追加。LGBTQ+にとって、より生きやすい環境作りに積極的に取り組むカナダだからこその制度と言える。また、世界で初めての試みとして、ブリティッシュコロンビア州では、ヘルスカードの性別欄で、「U(Unknown)」を選択することが可能。


北米企業で初めて、同性婚
カップルに異性カップルと同様の手当給付

 カナダ五大銀行の一つで、トロントに本社を置く、TDバンクは、1994年に北米企業で初めて、同性婚カップルにもほかのカップルと同様の手当の給付を決定した。TDバンクは、LGBTQ+への社内全体の意識改革に取り組んでおり、また、社外的な取り組みとしては、バンクーバー、トロント、モントリオールなどの、北米50以上のプライド・フェスティバルを後援するなど、金融機関として先進的な活動をしている。


10代のおよそ4%が
LGBTQ+であると回答

 カナダ国内の調査で、10代の約4%がLGBTQ+であると回答している。10代の子供たちは、いじめ、セクシュアルハラスメント、そして性的虐待の被害者になりやすい傾向があり、社会的に孤立する可能性が高い。LGBTQ+の若者が経験するいじめ被害としては、性的嫌がらせ、友人からの孤立、ネット上のいじめなどがある。それに伴い、うつ状態やドラッグ・アルコール依存症につながったりするケースがある。周囲の人々は、LGBTQ+に否定的なメディアを支持したり、すべての人が異性愛者であると思い込んだりせず、LGBTQ+の若者が自分らしく生きられるような社会づくりをすることが必要だ。


カナダに住む15歳以上の
セクシュアルマイノリティの数

 2018年のカナダ政府の調査で、カナダに住む15歳以上の人々の内、約100万人がセクシュアルマイノリティに属すると回答した。近年では、「LGBTQIA2」と呼ばれることもあり、

Lesbian
レズビアン:性自認が女性で、性的志向も女性である人々
Gay
ゲイ:性自認が男性で、性的志向も男性である人々
Bisexual
バイセクシュアル:男女どちらにも性愛感情を持つ人々
Trans Gender
トランスジェンダー:心と体の性が一致しない人々
Queer / Questioning
クイアまたはクエスチョニング:自身の性自認や性的志向が決まっていない、もしくは定めたくない人々
Intersex / DSD
インターセックス:身体的性が男性・女性の中間、もしくはどちらとも一致しない人々
Two-spirit
トゥースピリット:様々なジェンダーロールを持ち生きる人々

を指す総称である。その他にも様々なセクシュアリティがある。理解を深めるためには、正しい知識を身につけることが大切だ。


職場で差別を経験している
LGBTQ+の割合

 LGBTQ+の内、約30%が職場で何らかの差別を経験したと回答しているのに比べ、LGBTQ+ではない人々は、約3%が差別を経験したと回答した。LGBTQ+であることで、差別を受ける機会が10倍にも増えることになる。別の調査によれば、LGBTQ+の労働者の約81%が雇用機会に不満を抱いており、半数以上が、雇用主がよりLGBTQ+が居心地よく働ける環境を作るべきだと回答している。


カナダ全土で同性婚が可能になった日

 1859年にイギリスのソドミー法(反自然的性行為)禁止法をカナダ法規として採用し、罰則として死罪を設けられた。1892年には大幅に内容が改訂されたが、男性の同性愛行為はすべて「品位に欠ける淫らな行為」とされていた。しかし、その後1969年には同性愛行為が合法化、1977年にはケベック州で性的嗜好による差別が世界で初めて法的に禁止された。1999年には最高裁がセクシュアルマイノリティのカップルが、年金や税金などの面で異性カップルと同様の権利を受けるべきと述べた。2005年7月20日にはカナダ全土で同性婚が合法となった。


15歳以上のLGBTQ+の内、
性的または身体的な暴行を経験した割合

 カナダ政府の調査で、およそ10人に6人のセクシュアルマイノリティの人々が性的または身体的な暴行を経験していることが分かった。セクシュアルマイノリティではない人々の場合は、10人に4人(約39%)だった。また、過去1年間で同様の被害を受けたと報告したセクシュアルマイノリティは、10人に1人(約11%)であったのに対し、セクシュアルマイノリティではない人々は、25人に1人(約4%)だった。全体的に、セクシュアルマイノリティが被害を受ける割合が高いことが分かる。


カナダが西欧諸国で初めて
LGBTQ+難民の認定をした国の一つになる

 様々な国や地域で、セクシュアルマイノリティの人々は、迫害の対象となり続けており、いくつかの国では、彼らへ難民の地位の認定を与える動きが1990年代初めから活発になった。1991年、カナダはセクシュアルマイノリティを難民認定した西欧諸国の中の最初の国の一つになった。2013年から2015年の間には、1万8,221件の難民認定のうち、2,371件(約13%)がLGBTQ+関連だった。


ゲイであることで収容された最後のカナダ人

 カナダ人のEverett Klippertさんは、1965年にカナダ最高裁判所から「危険な性犯罪者」として終身刑を言い渡された。彼は、ゲイであることを理由に逮捕された最後のカナダ人として知られている。1969年に同性愛行為が合法化されたにも関わらず、1971年に釈放されるまで、カナダ最高裁判所はこの判決を支持し続けた。


カナダの首相が初めてプライドパレードに参加

 2016年7月3日にトロントで行われたプライドパレードに、ジャスティン・トルドー首相が歴史上で初めてカナダの首相として参加した。2019年6月23日にトロントで行われたパレードにも参加しており、自身のインスタグラムに写真とともに「ハッピー・プライド、トロント!」と英語とフランス語でコメントした。トルドー首相はLGBTQ+の権利向上に積極的に取り組む首相としても知られている。カナダに住むLGBTQ+の人々にとって、心強い存在であることは間違いないだろう。


レズビアンのキャサリン・ウィン首相がオンタリオ州に就任

 カナダのLGBTQ+文化の中心地であるオンタリオ州。最大都市のトロントでは、毎年6月にはプライド・ウィークが行われることでも有名だ。同州では、LGBTQ+の議員数も多く、世界で初めてオンタリオ州の首相として、レズビアンを公表しているキャサリン・ウィン氏が就任した。州観光局やトロント観光局や、観光施設、レストランのウェブサイトでは、LGBTQ+の人々の利用を積極的に歓迎している。


カナダの6政党における
LGBTQ+の議員数

 CBCの調査によると、

の計87人がLGBTQ+議員数であると分かった。議員数の中では、ゲイ、レズビアンの人々が圧倒的に多く、トランスジェンダーを始めとしたそのほかのセクシュアルマイノリティの議員数は多くない現状がある。


65歳以上のLGBTQ+の人々が
社会からの孤立を感じている割合

 65歳以上のセクシュアルマイノリティの人々の内、約53%が社会的孤立を感じていると回答した。自身のジェンダーアイデンティティや性的志向を隠すためや、過去に経験した差別などから、社会的繋がりが不十分となっていることが要因である。その他、情報にアクセスすることが容易でなく、また都市部から離れて暮らしていることも関連している。高齢のセクシュアルマイノリティの社会的孤立に対応するためには、LGBTQ+コミュニティーがより友好的で包括的な環境作りを行う必要がある。


セクシュアルマイノリティが
心の健康状態が良くないと回答

 カナダ国内の調査で、セクシュアルマイノリティの人々が、「心の健康状態が良くないまたは普通」と回答した割合が約32%だったのに対し、セクシュアルマイノリティでない人々は約11%だった。さらに、約40%のセクシュアルマイノリティの人々が「過去に自殺を考えたことがある」と回答しているのに対し、セクシュアルマイノリティでない人々は約15%だった。メンタルヘルスの問題は、セクシュアルマイノリティを考える上で、切り離せない重要な事柄である。


被害を受けたLGBTQ+の人々が
ドラッグやアルコールを使用する割合

 アルコールやドラッグは、虐待や暴力被害の経験と関連付けられ、身体的トラウマから逃れるためにそれらが使用される場合がある。2018年のカナダ国内の調査で、過去12カ月間で、虐待や暴力被害の経験があるセクシュアルマイノリティの内、約10人に3人(29%)がドラッグとアルコールを使用したと回答している。これは、同様の経験があるセクシュアルマイノリティではない人々の約3倍の割合だった。その他、アルコール依存や、医療目的でない大麻やドラッグの使用などにも関連があると言われている。


約4万人のホームレスのうち、
LGBTQ+であると回答した割合

 LGBTQ+の若者は、セクシュアルマイノリティでない若者に比べ、ホームレスになるリスクが高いと言われている。ある調査では、約4万人のホームレスの内、25%〜40%がLGBTQ+であると回答した。家族からセクシュアリティを受け入れてもらえないことが、ホームレスにつながる一つの要因であると考えられている。


LGBTQ+生徒のうち61%
学校で不安を感じていると回答

 2011年に行われた調査で、61%のLGBTQ+の生徒が学校で不安を感じると回答している。その他、74%のトランスジェンダーの学生、55%のLGBの学生が、ジェンダーやセクシュアルアイデンティティを理由に身体的な嫌がらせや暴力を受けたと回答した。これらの問題は、LGBTQ+の若者のうつ症状や自殺率の増加にも関連している。


LGBTQ+支援団体への政府予算

 2019年の政府予算の内、2000万ドルがLGBTQ+支援団体への資金として充てたられた。主に、LGBTQ+コミュニティーの活性化やセクシュアルマイノリティの人々の権利平等のために活動する団体への資金として使用される。多様性や包括的な社会を目指すカナダ政府は、LGBTQ+コミュニティーが重要な役割を果たすと考えている。2017年にジャスティン・トルドー首相が公式にLGBTQ+コミュニティーへの差別を謝罪するなど、積極的に支援をするカナダ政府だからこその政府予算の割り当てだと言える。


カナダ政府がLGBTQ2事務局を設立

 カナダ政府は、2017年にLGBTQ+に人々の平等を促進し、権利を守り、そして差別に対応するため、「LGBTQ2事務局」を設立した。LGBTQ2に関する調査を行うほか、YouTubeやTwitter等で積極的な情報発信を行っている。カナダ政府は、「LGBTQ2 Action Plan」を作成し、カナダ国内におけるセクシュアルマイノリティの人々の社会的、経済的な平等や健康状態の向上を目指している。


初となるオンラインの
プライドパレード
が開催

 2020年に、コロナ感染対策のため、プライドパレードがオンラインで行われた。1979年にカナダ初のプライドパレードが開催されて以来、初めての試みである。2021年のプライドパレードも、オンラインと現地開催が組み合わさったイベントになった。

バンクーバー発LGBTQ+オンラインイベント

 6月から8月にかけて、世界各地でパレードやLGBTQ+に関連するイベントが開催されている。今年は、昨年から続く新型コロナウィルスの感染対策のため、オンラインとフィジカルのミックスでの開催となっている。ここではバンクーバーからトロントの人たちも参加できるオンラインイベントをいくつか紹介したい。

LGBTQAI2S+コミュニティーをサポートする
NPO法人「The Vancouver Pride Society」

Pride Lounges

7月23日~25日、7月30日~8月1日

 Facebook・YouTube・Twitchなどを通じて、バンクーバー市内で行われるドラァグ・パフォーマンスのライブストリーミングサービスが行われる。屋外で友人、家族と集まりながら配信を楽しもう。

 Main Street(7月26日)、Commercial Drive(7月27日)、Yaletown(7月29日)、Davie Village(7月29日)など最新情報は、「The Vancouver Pride Society」のホームページで随時更新されるのでチェックしてみよう。

vancouverpride.ca

LGBTQAI2S+について理解を深められる動画が配信予定

Queer History Panel

 YouTubeのチャンネル「Queer History Panel」で、セクシュアルマイノリティの歴史について学べる動画が随時配信される。

https://www.youtube.com/channel/UCYhjfz4o_7S_lqTef6-w6LA

Symphonic Pride

 「Vancouver Symphony Orchestra(VSO)」と「Vancouver Pride Society」が共同で行う無料の音楽イベント。YouTube、Facebook、Twitchでライブ配信が行われる予定。

『Vancouver Queer Film Festival(VQFF)』

8月12日~8月22日予定

 「VQFF」は1989年に初めて開催されて以来、今年で32回目の歴史あるイベントだ。カナダ西部で最大規模と言われており、毎年8月にセクシュアルマイノリティに関する映画が上映されている。

 今年も、オンラインでの開催がメインで、NetflixやYouTubeで「LGBTQAI2S+」に関する映画の配信やワークショップなどが行われる予定。映画鑑賞チケットは、5ドルから25ドル前後。

queerfilmfestival.ca