【数字で見る】春と言えばやっぱり…世界が愛する春の風物詩 “SAKURA”|特集「桜とお餅」|数字で見るシリーズ

【数字で見る】春と言えばやっぱり…世界が愛する春の風物詩 “SAKURA”|特集「桜とお餅」|数字で見るシリーズ

いまだ寒さの残るトロントだが、春が近づいてきたのも事実。3月というと日本人にとっては桜の季節でもある。トロントでも毎年4、5月には桜を楽しむことができ、早くその時期になることを楽しみにしている方もいるのではないだろうか。その季節がやってくる前に、今回は少し早めに世界の桜事情について見ていこう。

#01. 100種類以上ある桜

日本国内 10種 / 世界100種以上

野生種 : ヤマザクラ、エドヒガン、クマノザクラ(NEW!)など
栽培品種 : シダレザクラ、ソメイヨシノなど

「桜」と一言で言っても、実は日本国内に10種類、世界には数十種が分布している。人の手によって作られ栽培された品種まで含めると100種類以上が存在しているとされる桜。例えば桜の代表格とも言えるソメイヨシノやシダレザクラは栽培品種だ。野生種として代表的なのは、文字通り山に咲くヤマザクラがある。

シダレザクラは下向きに枝が伸びるのが特徴的で、桜が流れ落ちるように咲く。観賞用として神社や寺、公園などでよく見られる。桜と聞くと思い浮かべる人も多いだろうソメイヨシノは、明治時代以降に日本全国で植えられるようになった。それぞれ接木によって栽培されるため、全国のソメイヨシノは全て同じ木から生まれたクローンだという。

さまざまな種類がある桜だが、2018年には紀伊半島で約100年ぶりに新しい野生種が発見された。「クマノザクラ」と名付けられた桜は、三重県、奈良県、和歌山県にまたがる山間部(熊野地方)で見ることができることから、クマノザクラとの名前がつけられた。桜を見にいく際には、その桜がどんな種類のものでどんな特徴があるのかじっくり鑑賞するのもおもしろそうだ。

#02. ヒマラヤが起源?数百万~数千万年の歴史

世界中で春を美しく彩る桜だが、その発祥の地はどこだろうか。やはり桜で有名な日本、かと思いきや、実際はヒマラヤ山脈地方だと言われている。ヒマラヤから東へと広がり、中国、朝鮮半島と流れて日本に入ってきたと言われていて、それがヤマザクラやエドヒガンといった日本有数の野生種の始まりである。

では、日本よりも中国もしくは韓国が先に桜を有していたのだろうか。今から約10年前、一部の韓国メディアが「桜の起源は韓国」だとする主張をし、日本を含め大きな論争に発展したことがあった。さらにそこに中国も参戦し、「中国が桜の起源だ」と主張。中国の言い分としては、日本で出版された桜の専門書「桜大鑑」という本の中に、「桜の原産地は中国で、日本の桜は中国のヒマラヤ山脈から伝来した」と記載があり、それは唐の時代だったとまで記されているという。

しかしそれに反対の意を唱える中国の専門家がおり、確かにヒマラヤ地域から日本へと広がっていったが、それは国も人間も存在しない数百万~数千万年前のことだと語っている。また、野生の桜の起源は中国なのかもしれないが、現代において一般的に考えられている「桜」は人工的に栽培されたものであり、栽培品種は日本から生まれたと強調。さまざまな説があり、桜の起源論争は終わりが見えないようだ。

#03. 花びら5~300枚まで!名前もさまざま

桜の花びらは一般的には5枚で、その咲き方を「一重咲き」と呼ぶ。しかし中には6枚以上の花びらを持つ桜もあり、これを「八重咲き」と呼ぶ。実は八重咲きと一括りに言うものの、例えば花びらが6~15枚だと「半八重咲き」、花びらが20~70枚だと「八重咲き」、花びらが100枚以上になると「菊咲き」とそれぞれ細かくわかれている。牡丹のように八重咲きするから「牡丹桜」と名付けられた桜もあれば、石川県・金沢市の兼六園にある「兼六園菊桜」は、300枚以上の花びらをつけることから菊桜として有名だ。

ちなみに「八重」と言うのになぜ花びらが6枚以上なのかというと、そもそも「八重」という言葉には「数多く重なっている」という意味があるから。縁起が良い数字だともされ、日本人の愛する桜でも美しい花びらが重なる様子を「八重」という言葉で表現したかったのかもしれない。豆知識だが、桜にも花言葉がある。「高潔」「優れた美人」という美しい言葉が込められており、そのイメージに合う人にプレゼントしてみるのも良いかもしれない。

#04. 世界最古の桜樹齢2000年

桜は一般的に1週間のみしか花を咲かせない。桜を種から育てると5~10年、またはそれ以上かけてやっと花を咲かせるまでに成長するが、1年にたった1週間程度しか花を咲かせてくれないのもまた桜の魅力なのかもしれない。桜の種類によってどのくらいで成長するかは異なり、例えばソメイヨシノは桜の中では成長が早く、苗を植えてから2、3年で花を咲かせるまでに大きくなるものもあるとか。ソメイソシノの寿命はどのくらい手入れしたかによって変わるが、大体は60年ではないかという説があった。実際はそれ以上、例えば100年以上もずっと花を咲かせ続けるものもあり、正確にはわかっていない。他の桜の品種もそもそも寿命というものが存在するのかさえ不明だが、樹齢50年を超えてくると老木と分類されるようになり、花の咲く時期が早くなる傾向がある。

世界最古の桜!山梨県北杜市「山高神代桜」=推定樹齢2000年

そんな中、世界最古の桜の木が日本の山梨県にある。山梨県北杜市にある「山高神代桜」は推定樹齢がなんと2000年だ。標高約550mにそびえ立つ日本最古の一本桜として知られている。神話の時代から存在しているかのように見える大木ということで神代桜と名付けられたといい、2000年という長い間私たち人間の生活をずっと見届けているとは、自然の偉大さを感じざるをえない。

#05. 青森にある世界一長い20kmの桜並木

津軽富士

青森県弘前市「岩木山南麓」=世界一長い桜並木(約20km、約6500本)
地元住民が10年かけて植樹

桜の名所は世界中に多く存在するが、「世界一長い桜並木」を紹介しよう。青森県弘前市にある岩木山南麓では、総延長約20kmにわたって見事に咲き誇る約6500本の桜並木を見ることができる。県道沿いに植えられた桜並木の始まりは、1985年に地元住民が記念植樹した1000本だったという。そこから「世界一の桜並木を作りたい」という地元民の思いで毎年植樹が続けられ、1995年までの10年間でオオヤマザクラ6500本を植えたというから驚きだ。

この桜並木は青森県にあること、さらに山麓の標高200~450mの地点にあることから、開花時期は例年4月下旬ごろ~5月上旬。桜並木のある岩木山は別名「津軽富士」と呼ばれるほど富士山に似た姿をしていて、“富士の山”と桜のコラボレーションは壮観だ。

#06. ワシントンD.C.には3000本以上の桜

 世界中で愛される桜。日本以外で有名な桜の名所といえば、まず思い浮かぶのはアメリカ・ワシントンD.C.ではないだろうか。ポトマック河畔にある桜並木は世界から観光客が集まる桜の名所で、3000本以上の桜がある。毎年3月末~4月中旬まで「全米桜祭り」というのも催されるほどのにぎわいぶりだ。

おしゃれな街、フランス・パリでは「SAKURA」「HANAMI」という言葉が通じることもあるようで、パリ市の統計によると3600本以上の桜の木が市内にはあるという。その多くはサクランボのなる果樹とのことだが、八重桜を見ようと多くの人が集まる観光地にもなっている。

同じくヨーロッパのスウェーデンにも桜があることを知っていた人は少ないだろう。ストックホルム市の中心にあるクングストレードゴーデン王立公園では、毎年60本以上の桜が咲き誇る。1998年に日本からスウェーデン王への贈り物として植樹された歴史がある。

アメリカ
  • ポトマック河畔
  • 3000本以上の桜
  • 毎年「全米桜祭り」開催
フランス
  • 市内に3600本以上の桜の木
  • 「SAKRUA」「HANAMI」は通じる
スウェーデン
  • クングストレードゴーデン王立公園に60本以上の桜
  • 日本から王様への贈り物

#07. トロントにも20箇所近い桜の名所

出典:トロント市

トロントで桜の名所として知られているのはハイパークだろう。日本とカナダの友好の証として数多くの桜が贈られ、毎年4、5月になりトロントにも春が訪れた頃、多くのトロント市民が公園内で花見を楽しむ様子が見られる。実はハイパーク以外にもいくつもの桜の名所が存在するトロント。トロント市のウェブサイトでは、トロントエリアで桜を見ることができる16箇所が地図とアクセス方法などの情報とともに紹介されている。

地図を見ると、東西南北のいずれにも桜の木が存在していることがわかる。例えば日系文化会館(JCCC)には、駐車場と建物の北側を囲むように桜の木が植えられている。木は2002年、2004年、2012年にそれぞれ植えられた。ノースヨークにあるヨーク大学のキールキャンパスには、250本の桜が植えられている。オンタリオで2005年までに3000本の桜を植えようとした「サクラプロジェクト」に参加した初の大学で、その一貫で多くの桜をキャンパス内で見ることができるようになった。この他にもトロントアイランドやストリート上で桜並木を楽しめる場所もある。

#08. それぞれに名前ありアムステルダムの400本の桜

 日本や韓国、ワシントンなど桜並木で有名な国はあるが、オランダにもかなりユニークな桜並木がある。オランダのアムステルダム市、アムステルフェーン市、アールスメーア市にまたがる広大な公園である「アムステルダムセ・ボス公園」の中に、“桜公園”として知られる「ケルセンブルセム公園」がある。
2000年に日蘭国交400年を記念して、オランダの日本人女性ボランティア団体「JWC(The Japan Women’s Club)」が桜の木を寄贈した。国交400年ということで400本が贈られた。
この桜公園の桜の特徴は、400本1つ1つに別々の名前が付けられていることだ。200本には日本の女性の名前、残り200本にはオランダの女性の名前がつけられているという。ちなみに日本の名前としては、「Ai」「Hitomi」「Noriko」「Satsuki」といった比較的一般的なものが使われている。

ケルセンブルセム公園(桜公園)

  • 日蘭国交400年記念 → 400本の桜が贈られる
  • オランダ女性の名前200本+日本女性の名前200本(Ai、Norikoなど)

#09. 2100年には2週間早くor遅く開花の可能性

 地球温暖化の影響で、桜の開花時期が年々早まっていることを感じている人もいるのではないか。九州大学名誉教授の伊藤久徳氏の研究によると、なんと2100年には開花予想日が早くなる地域、逆に遅くなる地域が出てくることが予想されている。東北地方では2~3週間早く、九州の一部地域などでは1~2週間遅くなると考えられている。というのも、桜の芽が成長するには3~10℃前後の低温による「休眠打破」が必要なのだが、温暖化の影響で十分な休眠ができない地域が出てくると桜の開花が遅れる、または桜が咲かない現象が起きてしまう。

また、1971~2000年の鹿児島県の桜開花日は3月26日ごろで変わらない一方、福島県では4月11日ごろから4月7日へと開花日が若干早くなったデータがある。つまり東北と九州南部の開花日の差が時間によって縮まっていることになり、2100年になる頃には同じ時期、もしくは東北の方が早くなるというふうにも考えられている。実際、2020年には福島県の方が先に桜が咲いた事実もあり、驚くべき逆転現象は始まっている。2021年には開花を観測している日本全国にある観測地点48のうち、半数以上の28地点で開花日が観測史上最も早くなっており、温暖化の影響を受けているのは明らかだ。

このまま地球温暖化が進めば桜が咲かなくなる可能性もゼロではないと言われており、日本だけではなくトロントを含めどの地域でもありえる話だ。地球を守り、美しい桜の景色を100年後、そしてそれ以降にもつないでいくために、私たちができることをしていく必要がある。

【2100年開花予想】出典:COOL CHOICE

  • 東北地方開花2~3週間早まる
  • 九州の一部開花1~2週間遅まる
  • もしくは…桜が咲かなくなる可能性も?!

#10. 数え切れないSAKURAスイーツ&ドリンク

 世界的にも「SAKURA」として知られる桜。日本だけではなく、さまざまな国で桜を使った飲み物や食べ物が人気を博している。桜を使うと淡いピンク色をした可愛らしいデザートや飲み物が出来上がり、春らしい暖かさが手に取る人を楽しませる。桜色をした桜餅やバウムクーヘン、スターバックスの「サクラストロベリーラテ」のようにある程度知られたものも多い中、あまりみかけたことのないようなものまで数え切れないほどある。例えば桜おにぎり。ほのかなピンク色をし、上に桜の花びらを載せたおにぎりは、桜を塩漬けして塩を抜いた後にご飯と合わせるだけというシンプルなもの。桜を見ながら桜おにぎりを食べると風情がありそうだ。桜いなり寿司や桜酒、桜ビールなどこんなものまで?!と驚くようなものにまで桜が使われることがある。

また、トロントでは桜から作ったクリームをふんだんに使った桜ケーキや桜チーズケーキ、また桜からパウダーを作り桜ティーを楽しめるものまでさまざまなタイプがある。桜を使うということもあってほとんどは季節限定もののようだが、「花より団子」のように桜が咲くのを待ちながら桜スイーツやドリンクが世に出てくるまで楽しみに待つのも良いかもしれない。

【桜を使った食べ物】
桜餅 / 桜おにぎり / 桜バウムクーヘン / 桜いなり寿司 / 桜ケーキ
【桜ドリンク】
スターバックス「サクラストロベリーラテ」 / 桜ティー / 桜ビール