「カナダで初めての一人暮らし」白石 莉子さん カナダ滞在歴4年|私のターニングポイント第16回

日本ではずっと母親と二人暮らしをしていた白石さん。高校卒業後、トロントという新しい土地で始めた一人暮らしは、それまでの人生に一番大きな変化を与えたが、同時に自身を一番成長させてくれた経験でもあったという。現在は、移民法律事務所でアシスタントとして働いており、学生の顧客などには昔の自分の苦労と重ねて話を聞いたりしているそうだ。

自分は他人より優れていると過信していた幼少期

 もともとあまり人と関わるのが得意ではなく、幼馴染のような友人はいましたが、新しい人間は避ける傾向にありました。当時の自分は、一人で何でもできる、自分は他人より優れている、と過信していたからだと思います。物心ついた時から母と二人暮らしでしたが、母は仕事で忙しく家に一人でいることも多かったので、自分は他の子よりずっと自立しているはずだと幼い頃から思っていました。

カナダに来て感じた初めての恐怖

 およそ4年前にカナダに来たのですが、数週間は不思議と寂しい気持ちや怖いといった感情はありませんでした。見るもの全てが新鮮で楽しく、毎日何キロも散歩しました。

 ですが、生活に慣れてきた頃に突然恐怖を覚えました。「孤独」、朝起きてもおはようと言い合える人がいない、どんなに勉強しても褒めてくれる人もいない、夜ヘトヘトになって家に帰ってきてもご飯は待っていない、たとえ事故にあっても誰も気づいてくれない、など一言も声を発しない日さえ何度もありました。

自分の存在が小さく思えた

働き始めの頃
働き始めの頃

 また、英語は中学生くらいから独学で勉強していたので、周りよりはできるほうでした。しかしトロントに来ると、同じ年くらいのインターナショナルの子たちが自分より流暢に英語を話していて、自分の存在が小さく思える時期もありました。昔から負けず嫌いで一番しか許せない節があり、自分の方が遅れているという感覚は私にとってとても辛いものでした。

カレッジに進学、はじめての友達、人と関わることの大切さ

カナダでできた友人たち
カナダでできた友人たち

 そうこうしているうちに、トロントにあるカレッジに進学し、初めて友達ができました。韓国人の女の子でした。その子は出会ったばかりなのに、私の引っ越しを手伝ってくれました。一人じゃ到底不可能だったので、心から感謝しました。また、休日は遊びに誘ってくれたりもしました。そこでようやく、少しずつ人と関わることの大切さが理解できました。

 それからというもの、自ら友達を作り、一緒に勉強し、一緒にジムに行き、休日は出かけました。新しい友だちの話をすると、日本にいる母も嬉しそうでした。「莉子はカナダに行ってから優しくなった」と言ってくれたのが印象的です。

 知り合いが誰もいない土地で崖っぷちの一人暮らしをしていなかったら、私はあのまま一人、自分の能力を過信して唯我独尊していたかもしれない。そう思うとぞっとします。

100%ではなく85%にしたら全てうまく行くようなった

 英語力に関しても、嫉妬や挫折をせず、純粋に周りの努力や能力を尊敬することに徹底しました。自分も追いつけるようにと前向きに自分の歩幅で前進する事で、同じくらいのレベルに到達することができました。

 昔から勉強、運動、家事、人間関係など常に100%にするように努力していました。しかし、最近になって全てを100%にすると精神的な負担が大きくなるということに気づいたので、85%くらいにしたら全てがうまく行くようになりました。それぞれ人生において大切な要素ですが、成功するには何より心身の健康が一番だと感じています。

■ いまの自分に点数をつけるとしたら?

70点 やれることは全力でやってきたつもりですが、まだまだ成し遂げたい事がたくさんあること、人間として経験が浅い分野もたくさんあるので。

■ もし人生をやり直せるとしたら、いつ?

 色々な積み重ねや決断があって今の人生があると思うので、何もやり直したくはないです。しいて言うならチョコレートをドカ食いした3時間前に戻ってやり直したいです。

■ 人生で大切なことは?

 何より自分を大切にすることだと思います。自分が愛せない人は他の人にも良くできないと思うので。自分のやりたいことを強い意思を持ってやりきりたいです。もちろん時には大切な周囲の人の意見も取り入れて。

■ 学生時代のエピソード

 小、中はあまり勉強が好きではなく、常に趣味に没頭している子でした。そのせいか周りの生徒からからかわれる事ことも日常茶飯事でした。その悔しさからか、高校に入ってからは負けず嫌いな性格になり、テストの点数や容姿に力をいれるようになりました。放課後は数時間勉強をし、ジムに通うという日々を繰り返していました。自信過剰で、おかげで友人は最小限しかいませんでした。
 カナダでも勉強や運動に力を入れていましたが、一人で生きることの厳しさを痛感したので、ネットワーキングにも力をいれました。カレッジ卒業後はパンデミックが始まってしまい、当時同棲していたパートナーと引き籠るような生活になってしまいましたが、他人と共存すること、思いやる事の良い勉強になりました。幾分か人間らしくなれたので良い経験だったのかなと思います。

■ 将来の夢・ライフプラン

 明確なライフプランはまだなく模索中ですが、夢は自分が納得した方法で富豪になることです。お金を稼ぐことは、自分の成果を見る一番分かりやすい方法なので好きです。母と祖母に親孝行もしたいです。

-座右の銘: あまり知らないですがそのうち自作します。
-好きな本: ファンタジーやミステリーなど想像ができてワクワクするものが好きです。湊かなえさんと村上春樹さんの作品はどれもかなり好きでした。
-尊敬する人: 母と祖母
-感謝している人と一言メッセージ: 母と祖母。尊敬する二人の誇りになれるよう一生精進します!
-カナダの好きなところ: 自分の意見をしっかり発信しつつ、人への配慮ができる人が多いような気がします。人の目も気にならないし、住んでいて楽なので好きです。