「GPAが悪すぎてトロント大学のプログラムから追い出される」ワトソン・ ジリアンさん 大学生 / カナダ在住歴通算10年|私のターニングポイント第12回

 現在トロント大学で数学と統計学のダブルメジャーを専攻中のジリアンさん。来年卒業を予定しているが、彼女がそこまでにかけた道のりは6年。 決して順風満帆な滑り出しではなかったが、ターニングポイントを機に自分なりの歩みを見つけ清々しく今を生きる。

父親の教育方針で、会話や読書・テレビなどすべてが英語での生活

 私は富山県の八尾町という小さな町で育ちました。小学校までは普通の市立の学校へ通っていましたが、父親の教育方針で学校が終わった後は、英語でさらに勉強をしていました。家ではテレビ、本、会話すべて英語で生活をするなど、 あまり友達と遊べる環境ではなかったため、当時子どもだった私は結構つらい生活を送っていると思っていました。

 ですが、この父の教育指導のおかげで私は高校まで英語の授業では勉強をしなくてもほぼ満点をとり良い成績を残していました。さらに、高校時代は勉強熱心であったため、在学3年間を通して学年トップを維持することができました。高校では、好きで得意な教科は英語以外に数学でしたが、大学で数学を勉強する人は頭がおかしいと当時は思っており、卒業後の進路は関西学院大学の国際学部や一橋大学の商学部を視野に入れていました。

 高校の先生からも期待されていましたが、センター試験で想定以下の成績を出したため、滑り止めの滑り止めのさらなる滑り止めであった大学へ進学することになりました。3ヶ月その大学のフランス語学科へ通ったものの、「何か物足りない」「自分にはここはもったいない」と思い、通っていた日本の大学を秋学期が始まる前に中退し、カナダの大学に進学することを決心しました。

課題と生活費のためのバイトの日々に追われ、気づいた時には・・・

マネジメント学科のCase Studyをした時のグループ写真
マネジメント学科のCase Studyをした時のグループ写真

 高校の成績が優秀であったため、トロント大学へは難なく入学でき、スカボローキャンパスの「co-opマネジメントプログラム」を受講することになりました。高校の時みたいに、予習復習をしっかりとやれば、難なくいい成績を取れると思い込んでいた私は、あまりにも多いリーディングや、次から次へとくる課題に頭を抱えていました。

 さらに、私の家は経済的に豊かではなかったため、親からの仕送りは受け取らず、バイトをしながら生活費を稼ぎ大学に通っていました。気づけば、悪い成績を出し続けており、終いには「co-opマネジメントプログラム」から成績が悪すぎるため追い出されることになってしまいました。大学で作った友達には恥ずかしくて顔を合わせることができず、家に引きこもることが多くなっていました。当時の私は友達からのメッセージに返事をする精神的な余裕もなかったので、気づけば大学での友達はみんな離れていってしまいました。

大学の学生団体に所属していた時
大学の学生団体に所属していた時

もう失うものがない!どうせなら楽しく大学の授業に取り組みたい

 卒業するためには専攻を選ばなければいけなかった私は、GPAが下がりきっていたためもう失うものがないと思い、いい成績が取れなくとも、楽しく大学の授業に取り組みたいと思い、高校生の時好きな教科であった数学を専攻することにしました。常にいい成績ではありませんでしたが、初めて大学で楽しく授業を受けられました。さらに新しい友達と出会い、一緒に苦しんでくれる友人を作ることができました。

大学のオリエンテーション
大学のオリエンテーション

 いろんな友人に私はいつも同じことを相談しました。

「私は成績が悪すぎて、正直すごく恥ずかしいんだよね。周りはいつも何をやればいいかわかっているし、輝いて見えるんだよね。私なんていつもその場しのぎで卒業後もちゃんと仕事が見つかるか不安だよ。」

 そして、みんなからの返事に私はいつも心を打たれました。

「たとえジリアンの成績がトロント大学の数学科で悪くて、いま底辺にいたとしても、トロント大学の他の学部と比べて上位にいるんだよ?数学でいい成績を取れる人なんてあまりいないからね。この狭いコミュニティーで見ると成績は悪いかもしれないけど、広い目で見るとジリアンは頭がいいんだよ!」

 上にはさらに上がいる。私は頭が悪くないと励ましてくれる友人に在学中の今でも助けてもらっています。

 数学科に入ってから、何事も常に完璧でなければいけないという考えを捨てました。自分なりに常に全力を注げば、必ずいつか成功すると思います。それが周囲の「成功」という定義でなくても、自分なりの「成功」であればそれでいいと思います。いま私は6年間かけてゆっくり卒業に向かっています。それは周りと比べれば遅いのですが、ゴールすることには変わりないと思いますし、自分を焦らせることはやめました。

■ いまの自分に点数をつけるとしたら?

70点 今を精一杯楽しむとともに、卒業前の休暇中は自分なりにオンラインで勉強をしているし、新しい出会いをたくさん作り、卒業後の就職にもつながる可能性が確実に上がってきていると思います。ただ、パンデミックのおかげで貯金がほぼないという状態でストレスを感じているので、結構点数が下がっています。

■ もし人生をやり直せるとしたら、いつ?

 小学生。当時極度な人見知りだった私は、友達を作る機会をたくさん失っています。あと、もっとスポーツや習い事、行事に参加していたらよかったなと思います。

■ 学生時代のエピソード

 高校入学するまでは極度な人見知りでしたが、高校入学した初日に勇気を振り絞って、手が震えながらもクラスの学級委員長に立候補しました。この小さな行動が実は私の小さなターニングポイントであり、この日をもって人見知りを克服しました。そこから新しい友達を作りやすい性格になったと思います。

-座右の銘: やらずに後悔するなら、やってから後悔しろ
-好きな本: 『テメレア戦記』『アモス・ダラゴン』『赤毛のアン』
-尊敬する人: 祖父
-感謝している人と一言メッセージ: 両親。大学に入ってからあまり会えていないけど、いつでも帰れる家があるから、1人でも頑張ってトロントで生活できていると思えています。元気で生きてくれていてありがとう!
-カナダの好きなところ: 私生活を大事にしていて、仕事終わりには目一杯楽しんだり、家族と過ごしたりできるところ。