「30歳を前にカナダ親子留学を決めたこと」 日髙奏美さん(カナダ滞在歴1年8ヶ月)|私のターニングポイント第10回

 現在トロントのカレッジでInteractive Media Designを勉強している日髙さん。20代前半で結婚・出産・離婚を経験し、シングルマザーとして子育てをしながら、親子でカナダに留学中だ。今年8月には卒業予定で、ポストグラデュエーションビザを利用してトロントで就職を予定している。

20代前半で結婚・出産・離婚を経験

 私は20代前半で結婚・出産・離婚を経験し、シングルマザーとして娘と一緒に生活してきました。離婚する際自分に誓ったのは「絶対に娘を幸せにすること。お金等で娘に不自由のない生活をすること」でした。

 しかし、離婚当時の仕事の時給は850円の営業事務。フルタイムで働いていても貯金する余裕はなく、当時は実家から遠いところに住んでいたため誰にも頼ることができず、一人で仕事・育児・家事を抱えて精神的にもいっぱいいっぱいになり、週末はよく体調を崩して寝込んでいました。

24歳のときに決めた「30歳までにスキルを身につけて経済力をつける」「いつか海外に住む」という2つの目標

 世間ではシングルマザー=貧乏で「苦労している人」というイメージが強いですが、私はそうあるべきではないと思っています。シングルマザーでもフルタイムで仕事をしていれば家族を養うことができ、人並みの生活ができるべきだと思います。しかし今の日本社会でそれは難しいのだと気づき、この頃ちょうど注目されていた北欧の福祉や教育など海外の社会制度について書かれた記事や本を読み漁って、日本でダメならいつか海外に住んでみたいと思うようになりました。

 24歳のときに決めたのが、「30歳までにスキルを身につけて経済力をつける」ことと、「いつか海外に住む」こと。そのために時給850円の仕事をやめて地元戻り、家族に支えられつつその目標を達成するために動き始めました。

28歳のとき子どもを連れてカナダへの留学を決意

 海外への留学が現実味を帯びてきたのは2018年ごろ、28歳のとき。両親がまだ健在で介護等の心配がないこと、娘が小学校中学年で海外生活や英語になじみやすい最後のチャンスになるであろうと思い、翌年の2019年にカナダへの留学を決意しました。そこからは留学エージェントとやりとりしつつ、英語を勉強してなんとかカレッジの入学基準をクリア。カナダに来てからも到着早々車上荒らしにあって新生活用品一式盗まれたり、入学トラブルで予定していたプログラムに入れなかったり、クラスメイトの英語が分からなすぎて泣いたりといろいろありましたが、周りの支えもあってなんとか卒業できそうです。

 留学前と比べると自分がひと回りもふた回りも成長した気がしますし、自信もつきました。24歳のときに掲げた「30歳までにスキルを身につけて経済力をつける」は予定を少し過ぎてしまいましたが、スキルは身につけることができたし、これから無事に仕事を見つけることができれば経済力の点もクリアできそうです。

■ いまの自分に点数をつけるとしたら?

80点 カレッジ卒業間近なのですが、この留学でできることがグッと増えました。でも100点にできない理由は、全財産をこの留学に費やしたので貯金がすっからかん。入学トラブルやパンデミックもあり貯金だけでは足りなくなってまだ親のスネをかじっている情けない状態なので、仕事が見つかって貯金できるようになったら100点です。

■ もし人生をやり直せるとしたら、いつ?

 娘のことを思うと離婚したことはちょっとやり直したいことですが、素晴らしい娘と大好きな家族、大切なパートナーに囲まれてとても幸せなのでやり直したいとは思いません。

■ 学生時代のエピソード

 小学生の頃の通知表に「ALT(外国語指導助手)の先生を前にしてみんながもじもじしている中、かなみさんは物おじせず話しかけに行っていたのを見て驚きました」と書いてある通り、昔から変わったことや人と違うことが大好きで、中学生のときも異文化を経験したくて親に頼み込んでオーストラリアにホームステイに行かせてもらいました。この頃から海外に憧れていました。

■ 人生で大切なことは?

 自分の好きなことをすることです。自分がやりたいと思わないことを文句を言いながら続けるほど人生は長くありません。やりたくないなら何か変える、変えることが難しくてもそれに向けて少しずつ何か行動を起こしていくことが大事だと思います。

■ 将来の夢・ライフプラン

 まずは自分で生計をたてられるようになって、自分の仕事で誰か困っている人を助けられるようになったら最高です。あとは娘が英語で苦労したので、日本の子供たちに英語を教える教室を立ち上げたり、英語を学べるアプリを開発したいなど夢は広がるばかりです。最大の夢は大金持ちになってシングル家庭向けの海外留学奨学金を出したいと割と本気で思っていますが、いつになるやら…(笑)

-座右の銘: 明日死んで後悔するなら今すぐやる
-好きな本: 『ドラゴン・タトゥーの女』(スティーグ・ラーソン)、『自由への手紙』(オードリー・タン)、『大奥』(よしながふみ)
-尊敬する人:
-感謝している人と一言メッセージ: まずは日本を離れたくなかったのに一緒にカナダに来て頑張ってくれている娘。本当に頑張り屋さんで聡明な彼女を誇りに思います。それから私の1番の親友であり、恋人であるパートナー。彼もすさまじいストイックさで医学を学んでいて尊敬しています。あとは全面的に私と娘を支えてくれて、いつも味方になってくれる両親と姉。あとはカナダで出会った在加日本人の皆さん(主にTwitterの方々)には応援してもらったりカナダの情報を教えてもらったりとたくさん助けられています。もちろんTORJAさんも!

-カナダの好きなところ: 自分らしくいても悪目立ちすることなく受け入れてもらえるところ。トロントでは英語が第二言語である人が多いので私の下手な英語でも即拒絶されることもなくありがたいです。それから冬の雪は美しく、夏の大切さを教えてくれました。