【第23回】国際結婚における夫婦別姓|私、国際結婚します!! でもちょっとその前に知っておきたいお話

【第23回】国際結婚における夫婦別姓|私、国際結婚します!! でもちょっとその前に知っておきたいお話

前回、カナダで知り合った二人が国際結婚する時、結婚後二人が暮らす国について話し合われることがほとんどない、とお話しましたね。もう一つ、あまり深く考えずに決めてしまうことに「国際結婚後、夫の姓(氏)を名乗る」ことがあります。

国際結婚を目指してカナダで婚活する女性たちは、しばしば、カタカナの姓になることへのあこがれを口にします。そこで今回は、夫の姓を名乗ることと夫婦別姓について考えてみることにします。

日本人同士の結婚の場合

民法750条で、「夫婦は、婚姻の際に夫または妻の氏を称する」ことが定めています。つまり、日本人同士が結婚する時には、夫婦は夫か妻のどちらかの姓を名乗らなければならないのです。しかし、一般に「入り婿」「婿養子」などと呼ばれる「家督を継ぐ娘の夫となる男性が妻の姓を名乗る」時以外、婚姻に伴い夫が妻の姓を名乗ることはほとんどありません。「夫が妻の氏を称する」とする婚姻届は、たった4%なのだそうです。

ところで、名前が変わるということは、思いの外めんどうなことです。まず、銀行口座や免許証、パスポートなどの名義を変更しなければなりません。もちろんこれは想定内でしょうし、夫の姓の後に自分の名前を並べることに幸せを感じる女性も少なくないはずです。

しかし、会社の経営者や社会的に影響力のある立場にある女性たちが夫の姓を名乗ることになった場合、証券口座、株式などの名義変更のための複雑な手続きとそれに伴う多額の手数料がかかってしまいます。さらに、海外出張や株主総会などで、「旧姓の自分」と「夫の姓を名乗る自分」が、同一人物であることを説明しなければならない場面にも出くわすことになりかねません。

夫婦別姓裁判

こうした場合、女性は「結婚後も旧姓で仕事を続けたい」と望むかもしれません。これが夫婦別姓を求める裁判につながりました。婚姻時に女性が男性の姓に変わらなければならないのは不公平であり、民法750条は、「すべての国民は法の下に平等である」とする憲法第14条に反するものであるという訴えに対し、2015年、最高裁は「民法750条は合憲である」との判決を下しました。

国際結婚と姓の選択

さて、日本人が外国人と結婚する場合、「民法上の氏」が変わることはありません。つまり、国際結婚する日本人は「結婚後も生まれたときの姓をキープする」ことができるのです。また、当人が望めば、戸籍法上の届出をすることで、結婚した外国籍の配偶者の姓を名乗ることも可能です。

日本人同士の婚姻においては、離婚に伴い旧姓に戻ることが定められています(民法767条)が、外国籍の配偶者の姓を名乗っていた日本人が離婚した場合、離婚後3カ月以内に届出をしなければ、戸籍上旧姓に戻るチャンスを失ってしまいます。家庭裁判所に請求して旧姓を取り戻すことも出来ますが、煩雑な手続きに閉口することになるでしょう。

国際結婚には、「離婚すれば自動的に旧姓に戻る」というルールが当てはまらないことは、国際結婚する前に理解しておきたいですね。

夫婦別姓裁判パート2

さて、今年1月、新たに夫婦別姓を求める裁判が始まりました。これは、国際結婚なら夫婦別姓が可能であることから「日本人同士の結婚に夫婦別姓の選択肢がないのは不平等だ」というアプローチで、届出によって結婚前の姓を名乗ることができるようにしてほしいと訴えています。

国際結婚の場合とは逆に、日本人同士の離婚の場合、離婚後3カ月以内の届出によって「離婚前の(元夫の)氏」を保つことができる(民法767条2項)ことを考慮すれば、この要求は理にかなっていると言えるかもしれません。

日本国内における夫婦別姓の論争は、今後も追い続けたいテーマです。一方、国際結婚を考える女性たちは、国際結婚に与えられた夫婦別姓は、恵まれた選択肢であることを知っておいてほしいものです。