最前線で公衆衛生の陣頭指揮をとる女性医師エキスパートに注目|COVID-19 パンデミック・カナダ

 新型コロナウイルス感染拡大を受けてパンデミック阻止のために最前線で陣頭指揮をとる政府・各州の公衆衛生のエキスパートを見てみると女性のドクター・プロフェッショナルが非常に多い。カナダらしい一面も垣間見えるそれぞれの責任者の横顔を紹介する。

カナダ全域

Dr.Theresa Tam

©U.S. Mission Photo-Eric Bridiers
©U.S. Mission Photo-Eric Bridiers

 カナダの最高公衆衛生責任者を務めるテレサ・タム医師。毎日のようにテレビで彼女の顔と名前を見る人も多いだろう。2017年から現在のポジションにいるタム医師は、カナダの医療従事者のトップとして、政府や国民に衛生に関するアドバイスを与える役割を担う。また、普段はカナダ全土にある公衆衛生機関を統括する立場にもある。

 そんな重大な役割を担うタム医師は、まさに新型コロナウイルスのような感染症、そして国際保健を専門分野とする医者。イギリスのノッティンガム大学を卒業したのち、アルバータ大学とブリティッシュコロンビア大学で医者としての経験を積み、公衆衛生の分野では20年という長い経歴を持つ。2003年に大流行し、カナダでも多くの死者をもたらした重症急性呼吸器症候群(SARS)や2009年に流行した新型インフルエンザウイルスが発生した際にも、感染拡大を抑えるべく、リーダー的存在としてプログラムを主導した。

オンタリオ州

Dr.Barbara Yaffe

©NCCID
©NCCID

 オンタリオ州の公衆衛生責任者であり、トロント・パブリック・ヘルスのディレクターも務めるバーバラ・ヤフィー医師。感染症に特化した医療機関としては北米トップクラスを誇るNCCID(National Collaborating Centre for Infectious Diseases)のトップも務める。彼女もまた、オンタリオ州の最高公衆衛生責任者であるデビッド・ウィリアムズ氏とともに、毎日のように州民に向け新型コロナウイルスの感染状況に関する報告会を行なっている。

 ヤフィー医師はトロント大学を卒業。以来、感染症が発生するたびに最前線に立ち、オンタリオ州における感染拡大防止に長年携わっている。タン医師同様、SARSや2009年の新型インフルエンザが大流行した際にはトップの一員として感染状況の調査や管理を担った。現在は感染症対策の企画や遂行、さらに評価などを一貫して行う。

 新型コロナウイルスがカナダに初めて上陸した一月末よりカメラの前に立ち、日々報告を行なってきたヤフィー医師。テレビで彼女の姿を見た人も多いのではないか。中でも最近の彼女の発言で印象的なのが、感染者数にまつわるデータの不確実性に関する指摘だ。オンタリオ州の検査数が他の州に比べ比較的少ないことを指摘した上で、感染者数や死者数などにまつわるデータは「完全でない」とコメント。市民にも、数字やデータを鵜呑みにしないよう日々呼びかけている。

ニュー・ブランズウィック州

Dr.Jennifer Russell

Photo: ニュー・ブランズウィック州政府ホームページ
Photo: ニュー・ブランズウィック州政府ホームページ

 ニュー・ブランズウィック州の最高医療責任者を務めるジェニファー・ラッセル医師。彼女もまた、新型コロナウイルスの感染状況を州民に伝えるべく、頻繁に報告を行なっている。彼女がこのポジションに着いたのはちょうど二年前の2018年4月。「彼女の公衆衛生における経験と知識は新しい視点となるに違いない」と期待を寄せられて抜擢された。公衆衛生の他にも、依存症などをはじめとしたメンタルヘルスの分野においても活躍。また、カナダ軍の医療スタッフとして従事していた経歴もある。

 そんな中、彼女は州民に直接向けたメッセージを発信するのが印象的だ。州政府の一員としてSNS上で新型コロナウイルスについてのメッセージを発信した際には、外出を自粛している際におけるメンタルヘルスの重要性についても言及。「他の人の面倒を見る前に自分の面倒を見ることが大切だ」とした上で、日々溢れている新型コロナウイルスについてのニュースばかり読むのではなく、遠くにいる家族や友達と電話をするなどして人とのつながりを保ちながら精神的健康に気を遣うことも重要であると州民に呼びかけた。

 4月7日の報告では、州民に手洗いや社会的距離を保ち続ける重要性を改めて強く強調。ニュー・ブランズウィック州は他の州に比べ感染者数が比較的少ないものの、「社会的距離を保たない限り最悪の状況を招きかねない」とラッセル医師は警鐘を鳴らし続けている。

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