幸せのおすそわけ カナダで暮らす国際カップルの喜怒哀楽|特集「恋とか。愛とか。」

 育った環境も文化も違う二人が人生をともに歩んでいる。そんな二人の恋の話はこっちまで幸せを感じることができる。微笑ましい3組の国際恋愛・結婚に対する考えなどを聞きました。

ストレスフリーな環境で、家族と幸せになりたいと思ったんです。
ブレンダン・モンズさん、愛唯・モンズさんご夫妻
ブリティッシュコロンビア州ビクトリア在住

 ブリティッシュコロンビア州出身のブレンダンさんと新潟県生まれ宮城県育ちの愛唯さん。ブレンダンさんが英語教師として来日していた際に、マッチングアプリで出会い意気投合。2年の交際期間を経て、2020年の2月に結婚。そんなお二人にカナダ移住から国際恋愛の世間との認識のズレについて語ってもらった。

Q. お互いの第一印象

愛唯さん: 最初は少しシャイで頼りなく見えたんです。でも日本は彼にとっては異国の地で、私がカナダに来てなんかこれできない!とかなった時と同じだったんですよ。こっちに来たら、めっちゃテキパキやってるやん!って、そのギャップでより好きになりましたね。

ブレンダンさん: 新しいことを喜んで挑戦する、とてもオープンでクール人だなという印象でした。僕が山形の鳥海山に登りたいと言った時には、「私も一緒に登る!」と言ってくれて、一緒に10時間ぐらい登山したりして(笑)。

Q. カナダで暮らすという選択

愛唯さん: どっちを拠点にするかって話し合ったときに、私は断固日本に住みたくないって言ったんですよ。日本のストレスが溢れる環境での仕事が自分には合ってなかったのと、私の母はフィリピン出身で、日本ではハーフだからって出る釘打たれるっていう感じで、人に対してあまりいい経験をしてこなかったんです。もちろん家族や友達と別れるのは寂しかったんですけど、生活をしていく上で仕事は切り離せないし、そこでストレスが溜まってプライベート生活に支障が出てしまったら元も子もないと思ったんです。国のサポート体制も日本と比べてカナダの方が充実していると思います。コロナの状況下でのCERB(カナダ緊急対応給付)や、医療費無料、児童手当がしっかりもらえるとか、将来的な面も含めて、カナダの方が住みやすいという結論にいたりました。

Q. 国際恋愛をして変化したこと

ブレンダンさん: 前はよく冗談を言ってたんだけど、愛唯ちゃんは冗談を言うといつも怒るから、言わなくなりました。

愛唯さん: 彼は親父ギャグが本当に好きなんですよ。私がやっぱり英語を100パーセント理解できるわけじゃないから、英語の冗談を言われても…となってしまって(笑)!「ここは笑うとこだよー!」とか言われても、「ごめん、本当に理解できなくてわかんないや」みたいなことを続けてたら、冗談を言うこと自体をやめてしまった(笑)。

Q. 国際恋愛に向いている人/向いていない人

ブレンダンさん: 誰でも誰とでも関係を築けるはずだと思います。オープンマインドであれば誰でもできます。でもコミュニケーションをしっかり取ることが不可欠ですね。

愛唯さん: 国際恋愛って「すごい」とか「かっこい」という風潮があったりすると思うんですけど、向き不向きとか、国籍で決めて欲しくないっていう気持ちが強くあります。国籍関係なく人は人だし、その人自身を見て恋愛をしてほしいから、好きになった人が外国人だったら、それはそれでいいと思います。誰でも国際恋愛はできると思います。

Q. 国際恋愛の大変なところ

ブレンダンさん: 僕たちは経験が全く違うでしょ。小さい頃に見たテレビ番組とかカナダではだいたいみんなスターウォーズなんだけど、彼女は見たことないんです。

愛唯さん: スターウォーズは国籍関係ない!スターウォーズを好きな人は日本にいっぱいいるよ(笑)!でも幼少期に見てきたもの、遊んでたものも違うし、昔話をしてもこれ懐かしいって言う話はなかなかできないですね。

インタビューを終えて

 終始お二人の掛け合いが楽しく、あっという間の1時間の取材となりました。「伝わらなくて難しいなと思うこと、今でもあります。でもずっと付き合って行くにつれて何が言いたいのか、だいたい感じ取ってくれるようになるんです」という愛唯さん。これは、テレパシーではなくて、お互いを思いやる想像力の賜物であると感じました。同じ言語、文化の中で育っても、価値観が全く同じってことはないと思います。そんな2人がお互いの落とし所を見つけ、すり合わせていく、人と人が関係を築く上で、想像力って欠かせないものだなあと再認識をさせていただきました。

みんな根っこは同じ、どんな違いがあっても乗り越えられると思います。
ダスティン・シルバーさん 行本 良子さんご夫妻 / トロント在住

Q. お互いの第一印象は?

ダスティンさん: 第一印象は、“とても可愛い”(笑)。その当時からアジア諸国の文化や人々に興味があったのと、彼女が情熱を持って仕事をする姿を見て、とても気が合いそうと感じましたね。

良子さん: 私は「この人身長、高!!」でした。彼は身長が187センチあるんです。

Q. カナダで暮らすという選択

良子さん: 当時彼は日本語が全然話せなかったのと、私は日本で働いていたのですが、独特の会社文化がなんだか自分には合わないなと思って“それだったらカナダに行こう!”っていうのが決めてでした。カナダは多文化が混ざり合い、みんなうまいこと暮らせてるのがすごいなって感じますね。

ダスティンさん: 豊かな自然もカナダの素晴らしいところです。もし僕が日本に住むことになったら絶対に北の方!雪が恋しくてしょうがなくなってしまうと思います。

Q. 言語や文化の壁を感じること

ダスティンさん: 全ての日本人がそうなのかはわかりませんが、私が今までに出会った日本人はとても静かで、英語を使う私たちと比べて気持ちのシェアをあまりしないんです。そうすると私たちは相手がすごく怒っているのか、話したくないのかなと不安になります。たまに彼女も静かすぎて、何か怒らせてしまったかなと心配になったりします。

良子さん: 面倒くさいから言わんとこって自分で決めてしまって、あとで後悔することはたまにありますね。私は、英語で細かいニュアンスを完璧に伝えられないときに難しいなと思います。

Q. 国際カップルの良さ

良子さん: 国際恋愛はお互いの文化のシェアを純粋に楽しむことが大切だと思います。相手の文化を理解し、尊重できる人が国際恋愛に向いているのかなと思いますね。

ダスティンさん: 相手と長く一緒にいたいなら、オープンマインドであることが大切だと思います。みんな根っこは基本的には同じ、どんな違いがあっても乗り越えられると思います。

インタビューを終えて

 普段は英語75%日本語25%で会話をしているというお二人。ダスティンさんは2年前から日本語を学び始め、ステイホーム期間中にかなり上達したそうで、ところどころ日本語を交えて取材の質問に答えてくれました。良子さんが留学を終え帰国した際の2年間の遠距離恋愛について伺うと、「お互いに自立することで、遠距離を成し遂げたことを誇りに思っています」というご回答。短い取材時間の中で、お二人のコツコツと積み上げられた確かな信頼関係を垣間見ることができました。

ぶつかり合うことで、理解できることがあるんです。
バンクーバー在住マシュー・ハンターさん、日本に一時帰国中の茉保・ハンターさんご夫妻

Q. お互いの第一印象

茉保さん: 最初に感じた子供っぽい可愛らしい人だなあという印象は今も変わらずです。

マシューさん: 社交的で可愛いという印象でしたね。初めてのデートでたくさん話をしたのを覚えています。

Q. 国際恋愛の良いところ

マシューさん: 自分の世界が広がると思います。特に自分の国のシステムがあまり好きではない人は、全く違う文化を持つ相手と時間を過ごしてみるべきだと思います。

茉保さん: マシューと出会えたからできた経験、成長がたくさんあリます。言葉の壁など大変な面もありますが、「いつもお互いに正直でいよう」と言い合って、喧嘩はそのせいで多いんですけど(笑)、その分しっかり相手を理解できてるのかなと思ってます。

Q. カルチャーショックだったこと

茉保さん: カナダでは恋人を家族に紹介するタイミングが早くて驚きました!クリスマスなどのイベント以外にもマシューのお母さんと二人でお昼ご飯を食べたり、散歩をしたりと一緒に過ごす機会がたくさんありました。

マシューさん: 茉保は一緒に住んでいるときに、家事をほとんどしてくれたんです!カナダ人女性だったら、「平等じゃない、手伝ってよ!」って絶対に怒ってしまうと思うんです。でも彼女は、僕が仕事に行っている間に家事を進んでやってくれていて、本当に驚きましたし、感謝しています。日本人がみんなそうなのかわからないですけど、そこはカナダ人女性と違うなと思いましたね。

茉保さん: 日本では女性は家で家事をする文化がまだまだ根強くあると思います。私もそういう形で彼をサポートしてましたね。

Q. 言語、文化の壁について

茉保さん: 最初の頃、ほとんど英語が話せず、直接的な言い方で彼を傷つけたり、彼の言葉を直接的に受け止めすぎて勝手に傷ついてしまうことが良くありました。「帰ってきたら、靴下脱いで、足洗わないとご飯あげないよ!」とか言っちゃったりして、喧嘩が続く時期があり、カップルカウンセリングを受けることにしたんです。そこで学んだ、意見を伝えつつ言い方を工夫するコミュニケーションを実践したことで今はすごくいい関係になれたと思います。

インタビューを終えて

 マシューさん、茉保さんとお話をさせていただいて、言語、文化の壁の壊し方にも色々な方法があるのだなと感じました。本音で話すのは結構エネルギーが必要で、でも一緒に暮らしているとどうしても見逃せない部分があると思います。国際カップルの場合、そこにさらに言語と文化の壁が立ちはだかっています。コミュニケーションを取るためにはそれを、強行突破しなければならない。彼らはそんな時に、その壁をハンマーで打ち砕くように、お互いが納得するまでぶつかり合う、違和感をスルーしないで「正直でいる」ことが良い関係を維持するためには不可欠である、そんなお二人の哲学が深く印象に残りました。