【第25回】国際離婚: 配偶者の扶養義務|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方

 国際離婚に瀕する時、様々な不安が頭をよぎります。なかでも子供のこと、お金のことは、最大の問題でしょう。オンタリオ州では、離婚に伴う扶養義務が確立されています。養育費の値は親権やペアレンティングなど子の養育に関する取り決めに伴い決定されますし、配偶者の生活レベルを保つための支払も定着しています。これらは事実婚カップルの場合も同じです。

 そこで今回は、離婚に伴う扶養義務について、エキスパート弁護士、ケン・ネイソンズに聞いてみました。

養育費は子供の生活費

  養育費は子供に対する扶養義務です。養育費ガイドラインでは、支払親の年収と支払対象となる子供の人数のみが考慮されます。子供と暮らす親の収入が高かろうと低かろうと、同じ額の養育費を受け取ることになります。

 しかし、カナダで最も一般的な50/50共同親権では、養育費が相互に発生します。例えば、母親の年収が父親より高い場合、母親が支払うべき値から父親が支払うべき値を引いた金額を母親が父親に払うのです。

 養育費ガイドラインに使用される年収は、手取額ではなくグロスと呼ばれる総収入です。

衣食住以外の費用「養育経費」

 子供への扶養義務としては、他にも養育経費があります。子どもの学費や医療費など、衣食住にかかわる生活費以外の経費は、それらを支払った親が、他方の親に対し、収入比率に応じた額を請求するというものです。

 養育経費のそれぞれの親の負担額は、両親の年収比によって決まります。例えば、母親の年収が4万ドル、父親の年収が12万ドルで、子供が父親と暮らしており、父親がすべての養育経費を立替えていた場合、母親はその25%を父親に払うことになります。ただし養育経費を受け取るためには、相手にその負担額を請求しなければなりません。

配偶者の扶養義務

 カナダでは、配偶者への金銭サポートが確立されており、養育費同様ガイドラインが存在します。受取側の年収、子の有無、子の年齢や人数などを考慮して、きめ細かい数字が指し示されています。

 扶養義務の基本的な考え方は「年収の高い配偶者と年収の低い配偶者の手取り収入が、ほぼ均等になるように」というものです。これには様々な要素が考慮されますので、オンラインの「サポート計算ツール」ではその正確な数字は得られません。

 尚、養育費と異なり、配偶者サポートは収入です。その値は、支払側の総収入から差し引かれ、受取側は収入として申告します。配偶者サポートを支払うことで納税額を軽減することができるという事実は、時に扶養義務の交渉時のポイントともなります。

みなし収入ってなに?

 このようにカナダの扶養義務は、その強制執行制度と共に十分機能しています。つまり、現地法の下、弁護士の立会いで同意された扶養義務は、ほぼ確実に果たされるのです。

 扶養の値が支払側の年収に基づいていることから、以前は「養育費を支払うくらいなら失業したほうがいい」などというパターンがあったと聞いていますが、これは「みなし収入」の導入で解決されています。

 「みなし収入」とは、健康な配偶者が自分の意思で働かない場合、その学歴や職歴、スキルや経験を考慮し「これくらいの収入は得られるとみなす」値です。ですから、仕事を辞めたとしても、この「みなし収入」を基にその扶養義務を果たすことを求められるのです。
 「みなし収入」の適用は、受取側も同じです。別居時に無収入であっても、最低賃金でフルタイムで働いた場合の約2万5千ドル程度の収入を扶養義務の計算に用います。

 このように、オンタリオ州の扶養義務は大変複雑な上、セパレーション・アグリーメントが裁判所に登録されていない限り強制執行ができません。国際離婚のお金の問題は、一貫して日本語でお手伝いできるネイソンズ・シーゲル法律事務所へご相談ください。

 当事務所では次の手順でリモート相談を行っております。

hnoguchi@nathenssiegel.com (野口)宛に日本語でメール
 ↓ 
おふたりのフルネームと相談内容を明記
 ↓ 
顧客名簿を検索し、お相手が過去に当事務所の顧客でなかったことを確認後、オンライン(zoom)面談の日時決定
 ↓ 
面談の後は、メールなどで日本語での打ち合わせ

ケン・ネイソンズ: B.C.L, LL.B, LL.M(Family Law)

 日本人の国際離婚を多く手掛ける。ていねいに話を聞く姿勢は 移住者女性に好評。ネイソンズ・シーガルLLP設立パートナー。趣味はモデルカー収集。

野口洋美: B.A. M.A.

 ヨーク大学で国際離婚とハーグ条約に関する研究に携わる。国際結婚に関する執筆多数。ネイソンズ・シーガルLLP所属。趣味は日本語ドラマ鑑賞。