2020年を振り返るカナダニュース18

 令和三年の幕が開けた。昨年はコロナ関連のニュースが常に注目されていたが、それ以外にも様々なニュースがあった。ここでは2020年に起きたコロナ以外のニュースを振り返りたい。

1.元・英王室ヘンリー王子とメーガン妃カナダ移住を計画(1月)

 1月8日、英王室はヘンリー王子夫妻が「シニアロイヤル」と呼ばれる主要王族の立場から引退すると発表。二人は「高位」の地位から辞退し、経済的に自立をし、年の半分ずつをイギリスと北米で過ごすことを公式の「Sussexroyal」インスタグラムに綴った。エリザベス女王から、王室の「パートタイム」のメンバーになる承認を得た上で、1月下旬にはブリティッシュコロンビア州バンクーバー島で息子のアーチー君と新生活をスタートさせていた。しかし、3月にはカナダを離れ、メーガン妃の故郷でもある米カルフォルニア州のロサンゼルスに移住した。

2.カナダ、開催予定だった東京五輪に不参加を表明(3月)

 3月22日、カナダのオリンピック委員会とパラリンピック委員会(COC)が、7月24日に東京五輪が開幕されるのであれば、アスリートを日本に派遣・出場させることを拒否することを発表した。COCは、世界は「スポーツよりも重大な地球規模の健康危機の最中」にあるとし、新型コロナウイルスのリスクの深刻さを訴えた。カナダに続く様に、発表数時間後にはオーストラリアも辞退を公表し、後にイギリスも同じ判断を下した。その約1ヶ月後に、2020年東京オリンピックを2021年に延期することが決定された。

3.カナダ出身人気俳優エリオット・ペイジ、トランスジェンターであることを発表(12月)

 12月6日に「X-MEN: ファイナル ディシジョン」や「インセプション」などの人気作品に出演している、カナダ出身の人気実力俳優、エレン・ペイジが自身のSNSに一通の文章を公開した。その冒頭には、自分がトランスジェンダーであること、名前をエレン・ペイジからエリオット・ペイジへと改名したこと、そしてPronouns(代名詞)が主に男性を指す「He」ではなく男や女など特定の性別を固定しないノンバイナリージェンダーが主に使用する「They」であるということなどが綴られていた。強いLGBTQコミュニティーを持つカナダでは多くの歓迎の声が聞かれた。

4.ノバスコシア州で起きた「カナダ史上最悪」の銃殺傷事件の衝撃(6月)

 ノバスコシア州約16各所で、4月18日未明から19日にかけおよそ13時間にも及ぶ、「カナダ史上最悪」とされる銃殺傷と放火事件が起きた。ガブリエル・ウォートマン容疑書(51)を含む23人の死亡者数はカナダ国内で発生した銃乱射事件最大規模となった。当初は、事件現場の多さ、範囲の広さ、そして多数の目撃者がいたことから、連邦警察の対応が問題視され、多くのマスコミに取り上げられた。これを受け、トルドー首相は「非道な暴力事件に胸を痛めている」と声明を発表し、即座に銃の規制強化を執行した。それに加え、オンタリオ州ナイアガラの滝が犠牲者を偲んで赤いイルミネーションに照らされ、カナダ各地ではコロナ禍の中で追悼式が行われた。

5.カナダ各地でアジア人に対するヘイトクライムが増加(4月)

 新型コロナウイルス感染拡大と共に、カナダも含めた世界各国でアジア人に対する人種差別によるヘイトクライムが多く報じられた。新型コロナウイルスが発生源が中国にあることだけを理由に、カナダ各地ではアジア人への人種差別行為の増大が見られた。ブリティッシュコロンビア州バンクーバーのショッピングモール駐車場で中国系カナダ人に向け「お前らがコロナウイルスをまき散らしたんだ」と唾を吐いた白人男性の動画が撮影されたり、オンタリオ州キングストンのクイーンズ大学では「コロナウイルス」がテーマの人種差別的パーティーが開催されるなど、カナダ内に存在する深い偏見が明るみにでた。

6.チャリティーイベント「Stronger Together」でカナダを代表するアーティストが集結(4月)

 4月26日にフードバンクカナダのチャリティーイベントとしてカナダ出身のアーティストや著名人が集結した「Stronger Together, Tous Ensemble」がテレビ各局やラジオ局で放送された。そこで、ジャスティン・ビーバーやマイケル・ブーブレ、セリーヌ・ディオンなど総勢27名のカナダ出身のアーティストが「ArtistsCAN」という新プロジェクトを元に、名曲「Lean On Me」のカバーをチャリティーソングとしてリリースをした。募金活動や心に響くストーリー、メッセージなどを通して、最前線でコロナウイルスと戦う医療関係者へ敬意とエールも伝えられ、多くのカナダ人が元気付けられた。

7.カナダ中でも見かけた。黒人コミュニティーの正義と平等を求めた「BLACK LIVES MATTER」デモ運動 (5月)

 5月25日、米ミネソタ州のミネアポリスでアフリカ系アメリカ人であるジョージ・フロイド氏が白人警察官に首を押さえつけられ亡くなる事件が起きた。フロイド氏の「息ができない」と訴える様子を撮影した動画がSNS上で拡散され、カナダも含めた世界中で「BLACK LIVES MATTER」と題した大規模な抗議活動が行われた。オンタリオ州トロントやブリティッシュコロンビア州バンクーバーをはじめ、各地で数千人規模のデモ行進が行われた。また、オンタリオ州オタワではトルドー首相もデモに参加するべくパーラメント・ヒルに姿を現し、膝をつく光景が撮影された。これらのデモは、国民が、カナダにも存在する人種差別問題について日頃から何ができるかを考えるきっかけになった。

8.オンタリオ州で公的証明などをデジタル化構想へ(11月)

 11月上旬、オンタリオ州が、保険証や運転免許証・出生証明などの情報のデジタル化を発表し、2021年内の開始に向け準備中だと公表した。「デジタルウォレット」というアプリを介してスマホなどでも身分証明書の情報をまとめて保存できる様になり、医療健康情報を共有できるとともに、身分証明にも活用できる様になるそうだ。この政府サービスのデジタル化は、コロナ対策も踏まえた、とても画期的なものになっている。

9.カナダ政府、2021年末をめどに使い捨てプラスチックの禁止を目指す(11月)

 2030年プラスチック廃棄量ゼロ計画(#ZeroPlasticWaste)に向けたカナダ全土での取り組みのもと、ファーストステップとなる使い捨てプラスチックの禁止を法令化する予定が発表された。ジョナサン・ウィルキンソン環境・気候変動大臣が2021年末をめどに、スーパーで使用されているプラスティックバッグや、レストランやフードコートのテイクアウトなどに利用されている飲食容器やストロー、マドラーなどの6種類の使い捨てプラスチック製品の使用禁止の決定を公表した。新しい規制は最終的に2021年末までにまとめる予定だ。

10.カナダ首相ジャスティン・トルドー三度目の倫理規定違反の調査対象に(8月)

 8月上旬、新型コロナウイルスパンデミックで影響を受けた学生のために用意された9億ドル以上の助成金制度において、トルドー首相やビル・モルノー財務相とカナダを代表する非営利団体「WE Charity」との間で利益相反疑惑が取り沙汰された。トルドー政権に対し野党や他の慈善団体からこの制度を第三者管理機関に委託すること、そしてそれがトルドー首相や他の閣僚の家族と関係のある機関であることが問題視され批判の声が上がっていた。現在すでに政府と「WE Charity」はこの契約を破棄し、連邦政府側はこの決断は「WE Charity」によるものでその意思を尊重すると述べている。トルドー首相が倫理規定違反の調査対象となるのは今回で3度目となった。

11.カナダで社会現象を起こしたゲーム、AMONG USとは?

 2020年は人狼系アプリゲーム「AMONG US」で大ヒットした。リリースから2年近く経っているにもかかわらず、プレイヤーの口コミやユーチューバーの配信を通して話題のインディーゲームになり、9月には同時接続数が150万を超えた。操作の簡単さ、カジュアルなゲーム性、そして個性が反映されやすいスキンやコスチューム、が大きな反響を呼んだ。「AMONG US」は、4~10人のプレイヤーが宇宙船のクルーとなり、船の修理タスクの完遂、あるいは敵対者の全追放を目指す〝人狼系〟アドベンチャーだ。ライブ配信を通して多くのキャンペーンなどにも使用された。

12.連邦新民主党(NDP)ジャグミート・シンがアメリカ議員とAMONG USでコラボ(11月)

 アメリカ史上最年少の女性下院議員アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)とオンタリオ州連邦新民主党(NDP)ジャグミート・シン議員が11月28日にファンドレイジングでコラボレーションを開催した。二人はライブ配信で大人気ゲームAMONG USに挑戦し、食糧不安や住宅不安のために200万ドル以上の募金を集めることに成功した。

13.カナダを代表するアーティスト等がAmerican Music Awards独占(11月)

 11月22日に開催された「2020 American Music Awards」では世界中で高い人気を誇るカナダ人歌手のジャスティン・ビーバーとザ・ウィークエンドが受賞を独占した。ザ・ウィークエンドは最大ノミネーション数を誇り、ジャスティン・ビーバーは2016年以来のステージパフォーマンスを大成功させた。

14.米大統領選2020・バイデン氏僅差で勝利(11月)

 11月7日午前、投票日から五日後、民主党のジョー・バイデン副大統領(77)の当選が確実になった。バイデン氏は同日夜、勝利宣言をし、「分断でなく団結させる大統領になる」と誓った。今年の選挙はコロナ禍の中で行われ、郵便投票が普及したことにより、例年よりも高投票率になった。120年ぶりの投票率66%越え、バイデンは8000万票超を獲得した初の候補者となった。当選二日後にはトルドー首相と電話をし、「米国第一」の理念に沿ったトランプ大統領に打って変わり、外交政策で政権移行に向けた準備を加速させた。具体的には新型コロナウイルスや移民、気候変動などの分野での協力を申し合わせなどがされた。

15.先住民族ミクマク(Mi’kmaq)ロブスターフィッシング権利(9 月)

 9月中旬、ノバスコシア州の漁港カナダで先住民族ミクマク族が自身のフィッシングライセンスの実行に成功した。約二十年にも及ぶ、政府との権利争いの後、350のロブスタートラップのライセンスを獲得した。

16.エミー賞席巻のカナダ産コメディ・ドラマ「シッツ・クリーク」

 第72回エミー賞が新型コロナウィルスの影響により初のオンライン開催になった。カナダのコメディ・ドラマ「シッツ・クリーク」がコメディ部門の各賞を独占し、初の7部門制覇を達成した。「シッツ・クリーク」は小さな田舎町シッツ・クリークを舞台に、突然破産してしまったセレブな富豪一家のローズ家がかつて冗談で購入していたモーテルを拠点に再起を目指す姿をおもろしく描いたドラマである。

17.カナダ中で見かけた。ネオワイズ彗星(7月)

 ネオワイズ彗星は太陽系の最も遠い位置から未確認のまま飛んできて、3月も初めにNASA赤外線観測衛星NEOWISEによって発見された長周期彗星である。7月中旬にカナダ各地で尾を引いていた彗星を肉眼で見ることができた。アルバータ州カナナスキスではオーロラと一緒に観察された。次回この周期彗星が見られるのは約6700年後と言われており、一生に一度きりの観測チャンスとして話題を集めた。

18.コロナ禍の中、カナダを拠点とするスポーツ変更

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で3月上旬にレギュラーシーズンを中断したNHLが7月のはじめに、シリーズプレイオフに向けたハブシティ2都市を公表し、東カンファレンスはオンタリオ州トロントで、西カンファレンスはアルバータ州エドモントンで開催された。「バブル」として選手やスタッフは共に行動し、会場と宿泊先を移動する事が義務付けられ、観客なしで試合が行われた。また、唯一アメリカ国外でカナダを拠点とする大リーグチームのトロント・ラプターズ(NBA)とトロント・ブルージェイズ(MLB)が一時的に本拠地の変更を発表した。カナダとアメリカの移動は2021年1月まで制限されているため、今シーズンのラプターズはフロリダ州タンパ、そしてブルージェイズはニューヨーク州バファローを本拠地とすることが決定された。