国家資格の潜水士の免許を取り行方不明の娘さんを探し続ける宮城のご夫婦の話|東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い【第118回】

 今年のゴールデンウィークの日本は、3年ぶりに政府から緊急事態宣言などの行動制限が一切出ていないお休みとなりました。外国では多くがすでにコロナの行動制限を撤廃して日常を取り戻し、コロナと共存する世界に入っていますが、日本もこのゴールデンウィークは久しぶりに日常に戻ったようなまちの賑わいや人との交流をすることが出来ました。

ゴールデンウィーク子供の日。泳ぐこいのぼり
ゴールデンウィーク子供の日。泳ぐこいのぼり

 しかし、まだ日本は恐れているものが多く、すぐに日常に全てが戻るとは言えないことも残念です。ゴールデンウィークは私の住む岩手県も昨年までとはガラッと変わり、多くの帰省客や観光客が来ていました。特に帰省はこの3年我慢していた人も多く、たくさんの家族が岩手の祖父や祖母に会いに来ており、そんな姿を見ると本当にうれしく思いました。

 しかし、このゴールデンウィーク、実は日本では地震も多く起こりました。大きな被害は出ませんでしたが、被災地では揺れが来るたびに驚きや恐れに悩まされました。また、宮城の被災地では、行方不明のままの娘さんを自ら探すために、父親が国家資格の潜水士の免許を取り、自ら海に潜って娘さんを探し続けているというお話も今回聞く機会がありました。

 娘さんは就職していた、という事でお父さんの年齢もそれほど若くないのに、自ら潜水士の資格を取り、自ら行方不明の娘を探し続けている。奥さんは、それを支えて、毎日娘さんとの思い出をノートに書き続けている。奥さんが言った言葉で印象的だったのは、前に進んでいくと、娘との思い出が薄まってしまい怖い。だから前に進んでいくだけが復興ではない、という言葉でした。

 私たちは、被災した人に「前を向きましょう」「未来を生きましょう」など、ポジティブな言葉をかけがちです。そして、それが「正しい」と思い込んでいます。確かに、立ち止まったままでは何も出来ない、という現実はあるのかもしれませんが、あえて自らの意思で立ち止まり、亡くなった方との思い出を前に進めない選択をしている家族もいるのだと、衝撃でした。

 10年を超えても、あの日から前に進めない、いや「進まない」人もいる。また、あの日から前を向いて歩き続けている人もいる。復興のスピードや状況はみんな一緒ではなく、個人差、家族差が必ずあるのです。それをひとまとめにして「復興」という言葉で括る事がどれだけ愚かか、このゴールデンウィークで思い知りました。被災地は色々なスピードで動いています。そのスピードをしっかりと尊重した復興計画を進めていきたいと思います。

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