【数字で見る】もっと知りたい!カナダの多様な”ワイルドライフ” 魅惑の大自然|特集「 オンタリオ大自然と文化を辿る 」

【数字で見る】もっと知りたい!カナダの多様な”ワイルドライフ” 魅惑の大自然|特集「 オンタリオ大自然と文化を辿る 」

広大な土地を誇るカナダには、私たち人間が到底立ち入ることができないような深い魅惑の大自然があちこちに広がっている。そこは世界的に貴重な動物や植物の生きる場所であり、もしくは未知の生物を隠し持っている場所かもしれない。それ以外にもオンタリオ湖のような大きく美しい湖や長い時間をかけて作られた巨大な氷河などは、自然の偉大さと神秘性を感じさせる。 私たちを癒してくれる存在でもある大自然。今回はカナダの魅力的な自然へと、数字を見ながら足を踏み込んでみよう。

1. 国内都市の60%以上は自然

出典:Statistics Canada「Census of Environment: Urban greenness, 2022」

Statistics Canadaが昨年末に公表したデータによると、カナダの都市のうち3分の2は自然(緑地)であると分類されている。例えばケベック州のサン・ジェロームという地域は93.2%が緑地であり、ニューファンドランド・ラブラドール州のセントジョンズは緑地が92%を占めるなど土地のほぼ全てを自然が覆っているという場所もある。州別(準州除く)で見ると、カナダ東部のニューブランズウィック州が最も自然が占める割合が多く95.3%、2番目は94%のプリンスエドワードアイランド州、そして93.8%のノバスコシア州と、大西洋側の地域に自然が多いことがわかる。トロントのあるオンタリオ州は71.4%、最も自然の面積が少なかったのはサスカチュワン州で44.3%という結果になった。

2. 自然を楽しめる大都市トロント2位

出典:The Body Shop「The Best Canadian Cities to Connect with Nature」

カナダで1番の大都市であるトロントだが、大都市らしくコンクリートや高層ビルであふれた都市でというわけではなく、実は自然豊かな場所としても人気のようだ。ボディクリームなどの販売で知られるThe Body Shopが発表した「カナダで自然を楽しめる都市」ランキングにおいて、トロントは堂々の2位を獲得した。このランキングは、同社がカナダの20都市を対象にして自然のあるエリア、コミュニティーガーデン、空気のきれいさなど複数の項目を数値化したもの。

ランキングによると、1位のオタワに次いでトロントが2位に挙げられた理由は、ウォーキングトレイルの数が国内最多で全75コース計496kmあること、また自然を楽しむのは人間だけではないという点でドッグパークの数が国内3位である点が高く評価されたからだという。

またトロント市内には8096ヘクタールの自然エリアがあり、これはユーコン準州のホワイトホース(12000ヘクタール)、カルガリー(8412ヘクタール)に続いて3番目に多い。大都市とはいえ、多くの自然に囲まれているのはトロントの大きな魅力といえよう。

3. 紅葉見るならカナダで!世界イチにオンタリオ州

出典:CheapOAir

世界第2位の面積を誇るカナダ。しかしその大部分を占めるのは、森や湖などの大自然だ。カナダには3億6200万ヘクタールの森林があり、これは世界の森林の9%を占めている。3億6200万ヘクタールという大きさは、アルバータ州、ケベック州、オンタリオ州の3つの大きな州を合わせた大きさ以上というから驚きだ。そんな自然豊かなカナダにあって、秋の紅葉は圧巻の美しさを誇る。実はカナダの秋というのは、世界的に見ても高く評価されているようだ。オンライン旅行会社「CheapOAir」が2022年秋に公表したランキングを見てみると、紅葉を含む秋の景色を楽しむのに最適な場所としてオンタリオ州が世界1位に選ばれた。そして2位はカナダ西部のカナディアンロッキー、さらに3位にはハリファックスなどの東岸が名を連ね、トップ3をカナダが占めるという結果になった。オンタリオ州では特にアルゴンキン州立公園の紅葉が有名だ。毎年9月中旬~10月中旬にかけて、ポプラ、バーチ、メープルなど20種類以上の落葉樹·広葉樹が赤や黄色に色を変え、見る人を楽しませる。

4. 自然と動植物の宝庫アルゴンキン州立公園へGO


カナダで最も有名な公園といえば、アルゴンキン州立公園ではないだろうか。1893年に作られたカナダ最古の公園で、国内外から毎年80万人以上の旅行者が訪れる観光地でもある。カナダではアルバータ州にあるバンフ国立公園がその自然の美しさで有名ではあるものの、国内で最も価値のある公園として2位にランクインしたこともあるほどアルゴンキンも評価されている(Northern Edge Algonquinによる)。

カナダでトロントから北へ2時間半、オタワから車で4時間の場所に位置する公園は、面積が7630平方km、1300の湖と計3700km以上の川(小川含む)などの大自然が特徴。数多くの動植物の生息地としても知られ、53種の哺乳類、272種の鳥類、約7000種の昆虫、さらに1000種以上の植物や菌類が生息している。例えばオオカミ、ツキノワグマ、ムースなどのたくさんの野生動物、ラッコ、キツネといった哺乳類を見ることができるため、公園を訪れた際に探してみると良いかもしれない。夏はビーチやキャンプ、ハイキングを楽しみ、冬になればスノーシュートレッキングや犬ぞりなど、1年を通して数多くのアクティビティを楽しむことができる点も大きな魅力だろう。

5. カナダに住む“仲間”は 5万種以上

出典:Canadian Endangered Species Conservation Council National General Status Working Group「Wild Species 2020」

カナダには多くの“仲間”が人間と共生している。カナダの絶滅危惧種保護のためのワーキンググループが発刊した2020年の生物に関するレポートによると、カナダには約8万種の動植物(ウイルスとバクテリアは除く)が生息している。そのうち5万534種は野生種(栽培や飼育化されているもの)と呼ばれる。内訳としては、危機的状況にある生物が873種、絶滅危惧種は1245種、脆弱な状態にある種は2765種、安全な状態にあると考えられている生物がおよそ2万種。すでに絶滅した、もしくは絶滅した可能性のある種が135種であり、残りの約2万2000種はカテゴリー化が難しいとされた。これらは全てカナダにもともといた固有種とされているが、カナダ外から偶発的、もしくは意図的に持ち込まれた外来種として3919種がリストアップされている。

出典:Canadian Endangered Species Conservation Council
National General Status Working Group「Wild Species 2020」

これだけでも相当数の動植物がいることがわかるが、実は5万534種という数字は今後も増えていく可能性が高い。というのも、初めてこのレポートが公開された2000年にはたった1670種しか掲載されていなかったが、5年に1回の調査によりその数を増やし続け、2020年には初版の30倍である5万種まで増やした経緯がある。つまり、次の調査がある2025年にはよりその数を伸ばす可能性が高く、カナダに住む未知なる生物が新しく見つかる可能性があるといえよう。

6. カナダでしか見れない!絶滅の危機にある308種

出典:NatureServe Canada

カナダで有名な動物といえばカナダオオヤマネコ(ネコ科)やビーバーなどがある。特に、体長2~3メートルで体重が最大800㎏にもなるというムース(シカ科)はカナダを代表するといっても過言ではない。カナダでの生息数はかなり多く、主にニューブランズウィック州などの地域ではかなり多いとのことだが、ノバスコシア州では絶滅の危機に瀕していると自然保護組織のNature Conservancy Canadaは伝えている。同組織はムースの数を守るための活動を精力に続けている。

ムースのように生息数が豊富な動植物ばかりではないのが現実だ。安全な状態にはない動植物が3千種以上あるカナダだが、その中でも世界でもはやカナダにしか生息していない絶滅危惧種というものも存在する。NatureServe Canadaが2020年に発表した最新レポートによると、カナダでしか生息が確認できていない種は308種ある。例えば哺乳類ではシンリンオオカミ(アルゴンキン公園に生息)や、ピアリー・カリブー(北極圏に生息)、鳥類ではノコギリフクロウ(ブリティッシュコロンビア州に生息)やカナダでのみ繁殖する唯一の鳴禽類(スズメなどの鳥の総称で、美しい声でさえずる小形のものが含まれる種類)であるハリスズメなどが挙げられた。動物以外にもセントローレンス湾のアスター(キク科の植物)など花や木々もリストに入れられている。

7. カナダ東部·大西洋に浮かぶ2000個の氷山

カナダ東部ニューファンドランドの大西洋には、「アイスバーグ·アレー」という氷山通りがある。そこでは北極海から流れてきた約1万年かけてできあがった氷河をいくつも見ることができる人気の観光地だ。年によっては全く見えないこともあるようだが、多いときは2000個以上確認できる(過去最高は1984年の2202個)。天候に左右されるが、平均時速0.6kmで漂流し続けている。ニューファンドランドの海岸沿いの町から氷山の近くまで行くボートツアーがあり、面白い形の氷山を見たり氷山の崩れる音を聞いたり、さまざまな楽しみ方ができる。またこのエリアでは、1912年にタイタニック号が氷山に衝突して沈没したという歴史がある。今でもニューファンドランド島の沖合の海底3650mに眠っているというから、歴史の断片に触れることもできるかもしれない。

icebergfinder.comで検索すると、現在どんな形の氷山がどの位置にあるか詳しく紹介されている。

8. 56mを時速40kmで流れる圧巻のナイアガラの滝

出典:Niagara Parksなど

毎年2000万人の観光客が訪れる人気の観光地ナイアガラの滝。自然が作り出す圧巻の景色と大自然の偉大さを感じることができる人気スポットだが、実は世界で一番高さのある滝というわけではない。ナイアガラの滝よりも高い滝は500以上あるとされ、ナイアガラを有名にしたのはその幅の広さと水の量の多さだ。毎秒3160トンの水が最高時速40kmほどで下流まで流れている。滝はカナダ滝、アメリカ滝、ブライダルベール滝と分かれていて、カナダ滝はアメリカ滝より水量が9倍だといわれている。それぞれの滝の上から下までの落差はおおよそ56m。幅はカナダ滝が最も広くて約670m、アメリカ滝は330m、ブライダルベール滝は15mとなっている。

観光地としてだけではなく、私たちの生活を支える大きな役割も担うナイアガラの滝。夜から朝にかけて流れる滝の量は25%程度に減らされ、残りの75%は水力発電のために発電所へと送られるシステムになっている。滝の水はカナダとアメリカに住む100万人以上が飲料水や水泳などレクリエーションなどの用途で使用しており、貴重な電力源だ。

9. 【湖の数No.1】世界の淡水20%がカナダに?!

カナダには世界で最も湖の数が多く、300万近い数の湖があるという。特にオンタリオ州にはそのうち25万の湖がある。カナダ国内にある湖のうち563の湖は100平方km以上であるとされ、中でも世界5大湖に数えられるオンタリオ州とアメリカのウィスコンシン州、ミネソタ州、ミシガン州に囲まれたスペリオル湖は北海道よりも広い8万2200平方kmを誇っている。

カナダの湖は数だけでもなく大きさでも世界トップクラスであり、世界2位のスペリアル湖をはじめ、世界の湖の大きさランキングにおいてトップ20に8つもカナダの湖(一部をアメリカと接しているもの含む)が占めている。これは世界最多である。

カナダ単独の湖としては、ノースウエスト準州にあるグレートベア湖が3万1000平方km(九州より一回り小さい程度)で世界8位の大きさ、ウィニペグ湖が2万4514平方kmで世界12位の大きさとして知られる。

これだけ多くの湖を持つカナダだからこそ、世界の淡水のうち20%はカナダにあると言われている。水不足に悩まされる国もある中、カナダはひとまず安心できる国だと言えよう。

10. 少なくなる緑地、20年で最大20%減↓

出典:Statistics Canada「Urban greenness and normalized difference vegetation index」

自然豊かな国であるカナダだが、その自然が年々失われているという現状にも触れておきたい。

Statistics Canadaが2022年に出したデータによると、各州(準州など一部地域除く)の2000~2022年までの自然エリアの面積は全体として減少傾向にある。アルバータ州がその消滅率が最も多く2000年には66.2%だった緑地が2022年には47.1%にまで減った。

サスカチュワン州でも64.6%から20%減少している。オンタリオ州やブリティッシュコロンビア州は人口の割にもともと緑地スペースが多く、2000年から2022年にかけて10~15%減少したものの、今でも70%以上の緑地を保有し続けている。

より細かく都市レベルで比較すると、特に人口10万人以上の大都市でその傾向が著しく、過去20年で都市の自然は10.5%消滅した。カルガリーでは16.5%、バンクーバーでは14.2%減という高い減少率を見せている。森林伐採や気候変動の影響によるものと考えられる。