People. 9 株式会社アタッチメント 販売部 銀座店店長 松永芳真さん|カナダワーホリを超えて30代になった今

海外に行ったからといって、学ぶものは必ずしも語学や異文化でなくても私は大いに結構だと思う

 ワーキングホリデーでトロントに行ったら、語学学校で手っ取り早く英語を習得し、日本人とは関わらずに現地人だけと交流し、現地採用の英語環境で働いてスキルアップしつつ、休日はホームパーティかBBQでリア充!そんな意識の高い目標を掲げていた。

 最初は日本人とは関わらないように意固地になっていた。しかし、BE動詞すら怪しかった私は、現地人とのコネクションもないので、コミュニケーションを取れる相手がいない。語学学校が終わるとホームステイ先にこもって、悔しさと切なさが入り混じった気持ちを持ちながらにひたすら机に向かって勉強をしていた。

そう、夢のトロントの地に来て孤独なのだ…。そこで気がついてしまったのである。「これ日本でも出来るじゃん!」と。

 そこから自分のバリアを解放し、トロントで出会った日本人留学生とも積極的に交流するようにした。東京で普通に生活していたら出会えなかった年齢も職業も出身地も異なる人と繋がることが出来たし、そのツテで外国人との出会いもあった。

 そこから毎日が少しずつ充実し始めたと思ったのもつかの間、無事語学学校を卒業し、「現地採用の英語環境で働くぞ!」と思ったのだが、私の英語は高校卒業レベルくらいにまでしか上達していない。応募する勇気もなかったのだが…。 結局知人の紹介を断ることがうまく出来ず、流れに任せて従業員の9割が日本人という居酒屋のキッチンで働くこととなった。

 その居酒屋は「超」が付くほどの人気店で、一息つく暇もないほどの鬼のような忙しさ。飲食店勤務が未経験の私は、使い物にならず、日本語で叱咤され、日本語で謝り、汗をかき、声を枯らし、火傷を負いながら、黙々と日本食を作る。仕事が終われば従業員と日本語を話しながら賄いを食べる。

 そこで気がついてしまったのである。「これ日本でも出来るじゃん!」 トロントに来てまでこのままでいいのだろうかと自問自答する日々だった。

~後編へ続く~