【日本とカナダが織りなす和食の新たな可能性】創立20周年となるカナダ日本レストラン協会(JRAC)が5年ぶり10回目となる和食まつり|第二特集「日加交流特別イベント」

【日本とカナダが織りなす和食の新たな可能性】創立20周年となるカナダ日本レストラン協会(JRAC)が5年ぶり10回目となる和食まつり|第二特集「日加交流特別イベント」

2024年11月11日、カナダ日本レストラン協会(JRAC)が創立20周年を記念し、「和食まつり」をトロントの日系文化会館で開催した。5年ぶり、第10回目の開催となる今回のイベントは、約250名の来場者を迎え、チケットは完売。日本食文化がカナダでどのように受け入れられ、進化していくのかを象徴するイベントとして大成功を収めた。食を通じた文化交流が生む未来への期待を感じさせる一夜となった。

和食まつりを彩るオープニングレセプション。
各ブースでの試食や展示が大いに賑わう


和食まつりの開場時間である午後5時30分に合わせ、商工会コートではオープニングレセプションが華々しく行われた。会場には、ジェトロと在トロント日本総領事館のブースのほか、2018年から和食まつりに協力している愛媛県をはじめ、長野県産コシヒカリの金芽米で知られる「東洋ライス」、加工水産物を取り扱う「綜合食品」など、日本から参加した食品事業者が勢ぞろい。さらに、地元企業「将軍まいたけ」も加わり、それぞれが食材の提供や展示ブースでのプロモーションを行い、来場者に日本食材の魅力をアピールした。

また、日本の観光の魅力を発信する日本政府観光局(JNTO)や、日本酒の販売振興に取り組む「小沢カナダ」、オンタリオ州産の地酒「泉」も参加し、日本の伝統的な食文化や観光地の魅力を発信。来場者たちは各ブースを回りながら、試食や試飲を楽しむと同時に、出展者の説明に熱心に耳を傾け、その情熱とこだわりに感銘を受けている様子が印象的だった。

圧巻のマグロ解体ショーで会場が熱狂

午後6時からは、レセプションの目玉イベントとして、トロントで知られる魚屋「Taro’s Fish」の秋山太郎氏によるマグロの解体ショーが披露された。

掛け声の「ワッショイ、ワッショイ」とともに、7~8人の男性たちによって担ぎ込まれたのは、なんと378ポンド(約171キロ)もの巨大なマグロ。その迫力ある登場に、会場内はどよめきと歓声に包まれ、一気に熱気が高まった。

秋山氏の見事な包丁さばきで解体されたマグロは、その鮮やかな赤身が目を引き、来場者たちを魅了。

特にマグロの中落ちがその場で配られると、会場に訪れた多くの人々がその新鮮な味に舌鼓を打ち、日本の魚文化の奥深さを改めて感じていた。

ライブパフォーマンスが生む一体感

イベントの中盤、会場中央に特設されたステージでは、トロントを代表する日本食レストランのシェフや寿司職人たちが登場。来場者の目の前で寿司を握るライブパフォーマンスが行われた。職人たちが手際よく握る姿は、和食の繊細さと高い技術力を直接体感させる見応えのあるショーとなった。
観客はその職人技に圧倒されると同時に、次々と完成する寿司に歓声を上げ、会場全体が盛り上がりを見せた。このライブ感あふれるパフォーマンスは、料理が単なる食事ではなく、エンターテインメントとしても楽しめるものであることを示す象徴的な瞬間となった。

ジェトロと在トロント日本総領事館による日本食材の魅力を伝えるプロモーションブース:
鹿児島のさつまいも、日本茶、そしてウイスキー

今回の和食まつりでは、ジェトロと在トロント日本総領事館が協力し、日本食材の魅力を発信するプロモーションブースを設置した。このブースでは、鹿児島県産のさつまいも、日本のウイスキー、そして日本茶(伊藤園とMomo Tea協力)を中心に、多彩な日本の食文化が紹介された。ウイスキーと日本茶の試飲のほか、さつまいもの試食も提供され、多くの来場者がその味わいを楽しんだ。

会場では、ウイスキーについては、小沢カナダの小沢氏が味わいや特徴を詳しく解説した。一方、さつまいもと日本茶については、総領事館と伊藤園が映像を駆使しながら、それぞれの栽培地や製造過程、健康効果などを丁寧に紹介。鹿児島県産さつまいも特有の甘みと風味、日本茶の奥深い香りと味わいは、来場者を引き込み、改めてその高い品質を印象付けた。

この取り組みは、近年高まる日本産食材の需要に応えるもので、ジェトロのビジネス短信によれば、カナダでは日本産ウイスキーの人気が急上昇しており、需要は今後も拡大が見込まれているという。また、日本産さつまいもと日本茶に関しても、日本政府の「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」に基づき、カナダが国別輸出額目標の設定対象国となっており、和食文化とともに日本の農産物が海外市場で浸透することを目指しているとする。

このプロモーションブースに立ち寄った来場者によると、その場で食材を味わうことで、日本の伝統や品質へのこだわりを直接感じることができたそうだ。また、これらの試飲・試食を通じて日本の食材が日常生活に取り入れやすいものであることを実感したという声も聞かれた。

2024年の和食まつりは、5年ぶりの開催ながら、和食文化の魅力と可能性を存分に感じさせる特別な夜となった。登壇者たちの言葉からは、和食を通じた日本とカナダの絆、そして和食文化が世界で果たす役割への熱い思いが溢れていた。

JRAC会長 木村重男氏
情熱を込めた一年以上の準備

イベントの始まりを告げるのは、JRAC会長・木村重男氏からの挨拶だ。

「2024年の和食まつりにお越しいただき誠にありがとうございます。今年、JRACは設立20周年を迎え、この記念すべき年にこうして和食文化を祝う場を持てたことを大変光栄に思います」と感謝を述べた木村氏は、和食まつりのために長期にわたる準備を進めてきたことに触れた。

本日のディナーは、約50名のシェフが腕を振るい、皆様に和食の魅力をお届けします。この特別な夜が、和食の奥深さを味わうだけでなく、日本食文化をより深く知る機会となれば幸いです。」

その言葉には、日本食の未来を見据えた確かなビジョンと、カナダで和食文化を発信することへの情熱が込められていた。

在カナダ日本国大使館 山野内勘二大使
歴史に見る日本食の進化

続いて登壇した山野内・駐カナダ大使は、和食まつりの開催を祝福し、挨拶の中で日本食がカナダで愛され続けている背景に触れた。

「和食まつりの成功、誠におめでとうございます。今日はカナダにとって重要なリメンバランス・デーですが、この特別な日に皆さんと日本食を祝い、共有できることを光栄に思います」と述べ、日本食がカナダ文化にどのように根付いてきたかを語った。

「1970年代、ジミ・ヘンドリックスがスタジオのオープニングセレモニーで日本食を提供したエピソードがあります。当時は一部の人にしか日本食は知られておらず、今日カナダでこんなにも愛されていることは感動的です。また、1976年にはピエール・トルドー元首相が来日し、日本本食に魅了され、カナダ帰国後もオタワにて日本食を楽しんでいたそうです。さらに、1974年にはバンクーバーでカリフォルニアロールが誕生し、カナダと日本食文化の融合が始まりました。」

こうした歴史を紹介することで、現在のカナダで日本食が多様性の象徴として愛されていることを改めて強調し、カナダの日本食市場が持つ可能性に期待を寄せた。

在トロント日本国総領事館 松永健総領事
和食の健康面と文化的価値を再認識

松永総領事は、和食まつりが持つ文化的意義を強調した。

「5年ぶりの和食まつり開催、誠におめでとうございます。JRACの皆様、そしてイベント実現に向けて準備を進めてこられた皆様に感謝申し上げます。」

松永総領事は、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されてから11年が経過し、その健康面や美しさが広く知られるようになったことに言及。

「和食が健康に良いという認識が広がったことが、人気のさらなる高まりを後押ししています」と述べ、カナダ国内での和食の需要がますます高まることを期待した。

JETRO 幡野裕一氏
日本食を広めるアンバサダーの役割

最後に登壇したのは、JETROの幡野裕一氏。「日本企業が世界市場で成功するための支援を行う中で、和食が果たす役割は非常に大きい」と述べ、和食文化が日本とカナダの架け橋となっていることを強調した。

「本日のイベントは、和食が世界でどれほど需要が高まり、愛されているかを示す証拠です。日本のウイスキーや日本茶なども試飲できますので、ぜひ料理と合わせて楽しんでください。そして本日ご来場いただいた皆様には、日本食のアンバサダーとしてその魅力を周りの方々に広めていただけることを期待しています。」

幡野氏の言葉には、和食文化を世界に広げるための期待が込められていた。

ラッフル抽選会が生んだ熱気のフィナーレ

ラッフルの目玉、日本行き往復 ペア航空券(4000ドル相当)の 当選者Filip Jovanovicさん

イベントの終盤には、豪華景品が用意されたラッフル抽選会が行われた。長野県から提供されたお米やりんごジュース、小沢カナダによるお米と日本酒のセット、Taro’s Fish提供のマグロ尽くし刺身の盛り合わせのほか、Zenからは松坂牛といった魅力的な商品が当選者に贈られた。

司会を務めた小沢さんとNicoleさん
イベントを楽しむ来場者の皆さん
クリスホープ日系文化会館理事長

さらに、Zen、Mye、Ginko、Izakaya Ju、Ramen Raijin、Namiからは、それぞれのレストランのギフトサーティフィケートが提供され、会場を沸かせた。

最大の注目を集めたのは、JRACから提供された合計4000ドル相当のエアカナダ日本往復ペア航空券。発表の瞬間には、会場全体が歓声と拍手で包まれ、イベントのクライマックスにふさわしい盛り上がりを見せた。

MENU

前菜鯛の昆布締め(柿とほうれん草白和え) / 帆立と北寄貝 / 黄身酢掛け / 合鴨ロース / 焼き茄子

刺身

鯛 湯引き / ヒラマサ / キングサーモン / 蛸

焼き物

鰤 唐草焼き(丸十レモン煮 酢取り茗荷)

煮物

大根大名蒸し 菊花飴(海老、鶏、鰤、椎茸、三つ葉)

強肴

和牛ローストビーフジャポネソース(秋茄子、里芋田楽、パプリカ甘酢漬け、松葉そば 将軍舞茸)

ちらし

鮪 / 日本産うに / いくら

寿司

とろ / 赤身 / ぶり / オーシャントラウト / 鯛

甘味

練り切り / みかんムース / 抹茶どら焼き

TORJA記者が話を聞いたところ、5年ぶりに開催された和食まつりは、日本食文化の奥深さを体感できる場となったという。東洋ライス株式会社の阪本氏は、精米技術を活かした健康的で美味しいお米を世界に広める情熱を語り、日本米の高品質をアピールした。山野内駐カナダ大使は、約250名の来場者を迎えるために行われた綿密な準備がイベント成功の鍵だったとし、関係者の情熱に大きな期待を寄せた。

さらに松永総領事は、日本食の美しさや健康面での魅力が多くの人々に伝わったことに意義を感じ、特にカナダでの日本米の受け入れが日本食全体の普及へと繋がることを期待していると述べた。

和食まつりは、日本食文化の再発見と未来を切り拓くきっかけとなった特別な一日であったといえるだろう。

東洋ライス株式会社
阪本哲生氏

今回、5年ぶりの開催ということでJRACの方からお声がけいただき、長野から参加しました。長野のお米の良さ、そして日本のお米がいかに高品質であるかを、このイベントを通じて伝えることができればと思います。

私たちは、精米方法にこだわり、美味しくて健康にも良い玄米を開発しています。これを通じて、皆様の健康に貢献したいと考えています。今年、日本では米騒動がありましたが、日本人が安心してお米を食べられる環境、そして生産者が余裕を持ってお米を作れる仕組みが重要です。多様な販路を持つことがその一助になると考えています。
私たちは、世界中の人々にお米を知ってもらい、食べてもらう機会を増やしていきたいと思っています。

山野内・駐カナダ大使のコメント

和食まつりに参加して、大変感動しました。参加されている方々の情熱が強く伝わってきて、自分たちが作っている料理や食品のクオリティーに確信を持っていることがわかりました。また、舞台裏についても話を伺い、250人のお客様に対して約100人の方々が料理を作り、サーブされていたと聞きました。さらに、半年前から準備を進めていたと知り、このイベントの成功はその準備の成果だと感じました。


このイベントには非常に大きなポテンシャルがあり、本当に素晴らしいものだと思います。ぜひ、国のリーダーがいるオタワでも開催してほしいですね。

松永総領事のコメント

たくさんの方が集まり、本当に素晴らしいイベントです。日本食の見た目の美しさだけでなく、食そのものの魅力をこれほど多くの方に発信できる機会は非常に貴重です。


特に、日本のお米の需要がカナダ国内で高まっていることを実感しました。今回、長野県から提供された金芽米や金芽ロウカット玄米は、とても美味しく、その上健康にも良いお米でした。これをきっかけに、日本のお米を食べる機会が増えることを期待しています。そしてお米だけでなく、日本食全体のこれからの広がりにも大きな期待を寄せています。

参加者の声:和食の魅力を再発見

和食まつりに参加した来場者からは、イベントの素晴らしさを讃える声が多く寄せられた。ある参加者は、「トロントにある日本食レストランを知る良い機会であり、和食を存分に楽しめた素晴らしい経験でした。日本酒の種類も豊富で、普段なかなか手に入らないような銘柄を購入できたのも嬉しかったです」と満足げに語った。

また、別の参加者は、日本滞在中に和食を好きになったと語り、「カナダに帰国してからも日本食が恋しかったんです。だから今日、こんなにも素晴らしい和食を味わえるなんて、本当に嬉しかったです」と感動を伝えた。

和食まつりは、参加者に和食の魅力を再発見させるだけでなく、その素晴らしさをより多くの人に知ってもらいたいという思いを共有する貴重な場となった。和食の奥深さと日本食文化の豊かさを広く伝える機会として、大きな意義を持つイベントであったと言えるだろう。

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