第17回 カナダドルと米国のテーパリング・利上げの関係|みらいのカナダ株式投資大作戦

第17回 カナダドルと米国のテーパリング・利上げの関係|みらいのカナダ株式投資大作戦

今回は米国のテーパリング・利上げとカナダ市場の関係について見ていきます。

 テーパリングや利上げって、経済ニュースではよく聞くけども、説明しようとするとなかなか難しい、そんな言葉だと思います。

 本記事執筆時点(2021年11月)で、アメリカはテーパリングの開始を表明しています。加えて2022年か2023年には利上げを行うのではないかとの憶測も出ています。これらの金融政策はどんな影響を与えるのでしょうか。

 そこで今回はリーマンショック後のテーパリング・利上げ時に起こったことを見ながら、今後のカナダドルの予想をしてみたいと思います。

なぜテーパリング・利上げを行うの?

 最初にテーパリングと利上げについておさらいしましょう。端的に述べれば、テーパリング・利上げは以下のようなものです。

  • テーパリング: 国債などの資産の購入量を減らすこと
  • 利上げ: 政策金利を上げること

 2021年11月現在、アメリカでは金融緩和政策を行っています。この政策は2020年のコロナ感染症の拡大に伴う景気へのダメージを抑えるために実施されました。

 この金融緩和政策では、FRBによって米国債など債券の購入が行われました(量的緩和政策などと言います)。債券を購入、市中に出回るお金の量を増やします。

 なお、お金の量が増えることで、将来のインフレ期待が高まる、または金利水準が低く保たれ、お金が借りやすくなるなど、景気が良くなる効果があるとされています。

 金融緩和は長く続けると、市中のお金が増えすぎてしまい、物価高騰などのインフレを招きます。景気回復の効果を期待できますが、悪影響もあるというわけですね。

 テーパリングや利上げは、この金融緩和策を縮小・止めるための政策です。

リーマンショック後のテーパリングから利上げまでに起こったこと

 というわけで、リーマンショック後のテーパリング・利上げについて振り返ってみます。ざっくりと以下のような流れで行われました。

  • 2013年5月: テーパリング示唆
  • 2014年1月: テーパリング開始
  • 2014年3月: 利上げ示唆
  • 2014年10月: テーパリング終了
  • 2015年12月: 利上げ開始(その後2019年まで段階的に利上げ)

 この一連の政策が特に影響しているのが為替です。

 掲載している図をご覧ください。青い線が米ドルとカナダドルの為替レートの推移を示したもので、上方にいくほど米ドル高・カナダドル安、下方にいくほど米ドル安・カナダドル高を示します。

 2014年1月のテーパリングが始まる少し前から、カナダドルは米ドルに対して弱くなり始めました。利上げが示唆された2014年3月頃からはさらに弱くなり、実際に利上げが始まった2015年12月に最も米ドル高カナダドル安になっています。

 意外なことに利上げが段階的に進められた2015年以降はさほど変化がありませんでした。為替が大きく動いたのはテーパリングが示唆されてから、実際に最初の利上げが行われるまでです。

 この為替の一連の変化は「アメリカでテーパリング・利上げが行われる = 緩和策が終わって相対的に米ドルが強くなる」という投資家の意識と関連があると個人的には考えています。

まとめ

 今回はアメリカのテーパリング・利上げをテーマにカナダの為替との関係を紹介しました。気になるのが今後ですよね。

 もし、これからの相場が過去と同じような経緯をたどるならば、今後数年かけて米ドル高カナダドル安に変わっていく可能性があります。

 冒頭で述べた通り、現在はテーパリングが始まったばかり。ちょうど2014年1月頃の状況に近いです。

 ちなみに日本円との関係は日本の経済政策などにも依存するのでもうちょっと複雑です。ですが、資源価格が下がってくれば、今の円安カナダドル高は一段落するかもしれませんね(って以前も書いた気がします笑)。