第15回 カナダ株式のパフォーマンスと景気サイクルの関係|みらいのカナダ株式投資大作戦

第15回 カナダ株式のパフォーマンスと景気サイクルの関係|みらいのカナダ株式投資大作戦

今回はカナダ株式のパフォーマンスと景気サイクルの関係について見ていきます。
 結論から述べると、過去の記事でも紹介したように、カナダ株式は物価やコモディティ(石油や金属などの資源や、農産物などの「商品」のこと)価格などと関連性があります。
 一般にコモディティ価格が上昇する時は、世界的に景気が加速し、インフレが生じやすい状況です。カナダ株が強いのはそのような状況です。
 では、一緒にみていきましょう!

1998年以降のカナダ株と米国株のパフォーマンス

 最初に、1998年以降のカナダ株と米国株(S&P500)のパフォーマンスを見てみましょう(図1)。カナダ株はEWC(iシェアーズMSCIカナダETF)という米ドル建てのカナダ株ファンドを使っています。

 パフォーマンスを見ると、2003年頃からカナダ株(青い線)は米国株(緑の線)を圧倒します。リーマンショック(2008年頃)時には一時大きく凹むものの、回復も早めでした。

 しかし、2011年頃以降は米国株が上昇し続けるのに対し、カナダ株は値上がりせずに推移し、2018年頃に逆転します。その後は米国株優位で現在に至ります。

 この図をもっとわかりやすくするために、カナダ株から米国株のパフォーマンスの差分をとったものが図2です。こちらは青い線が上昇するとカナダ株>米国株、青い線が下降するとカナダ株<米国株という関係を示します。

 前述のとおりに、リーマンショック前はカナダ株が優位な状況(青い線が上昇し続ける)にあり、リーマンショックから数年後はほぼ米国株優位となっています。

 ちなみに2020年以降は一時カナダ株が優位になったものの、一瞬で終わってしまいました(悲しみ)。

パフォーマンス差と生産者物価指数の関係

 カナダ株と米国株の成績差の理由を考えるために、次はアメリカの生産者物価指数(PPI)との関係を見ます。生産者物価指数とはアメリカの製造業者が出荷した製品や材料などの販売価格の推移を指数化したもので、コモディティ価格とも深く関連しています。

 ざっくりと言えば、生産者物価指数が上昇する時は景気が良くインフレ(お金の価値が下がり、物の価値が上がる)が生じていて、下落する時は景気が陰りデフレ(お金の価値が上がり、物の価値が下がる)が生じています。

 2016年以降を除き、カナダ株と米国株のパフォーマンス差は生産者物価指数とよく似た傾向を示します。カナダ株が強い時は生産者物価指数も上がり(景気が良い)、カナダ株が弱い時は生産者物価指数も下がる(景気も悪い)という関係です。

 特にリーマンショックやコロナショック(図中でグレーの影を付けているところ)では、急激に米国株のパフォーマンスが強くなります(がくんと崖になっているのがわかると思います)。このような景気後退期ではカナダ株は選ばれにくいと言えます。

 ちなみに2000年代には中国がWTO(世界貿易機関)に加盟したことで、世界的に貿易量が増えています。このような「世界で景気が良いタイミング」ではカナダ株は強くなりやすいです。

2016年以降のパフォーマンス差の原因は?

 2016年以降のカナダ株と米国株のパフォーマンス差と生産者物価指数は逆行しています。これはおそらくGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)の影響です。

 近年の米国株のパフォーマンスは特にGAFAMの影響が強くなっています。両者のパフォーマンスの関係は、両国でどんな企業が力を持っているかにも関係しそうですね。

まとめ

 今回は景気サイクルとカナダ株式のパフォーマンスの関係でした。

 ざっくりと「世界の景気が良い時はカナダ株の成績が相対的に良くなりやすく、世界の景気が冴えないときには米国株の成績が相対的に良くなりやすい」と考えると良いと思います。

 記事執筆時点では、世界的に景気浮揚策を縮小しようとしている状況で、未だコロナの影響が収まらないという難しい状況ですね。こういった不確実性が多い状況では相対的に米国株が選ばれやすいように感じます。