【数字で見る】カナダで働きたい人注目!もっと知りたいキャリア事情|特集「わたしはTIFFも楽しんで就活も頑張る!」

【数字で見る】カナダで働きたい人注目!もっと知りたいキャリア事情|特集「わたしはTIFFも楽しんで就活も頑張る!」

カナダに住む日本人の皆さんの中には、就職を目指してカナダにやって来た人、すでに現地就職をかなえた人などさまざまだろう。働くということは、生きるためにどうしても必要なこと。カナダで働くのであれば、現地の就職・転職・福利厚生などが日本と違ってどうなっているのか知りたいところだ。今回は多角的な視点からカナダのキャリア面について数字で見ていこうと思う。

01. カナダ生まれと移民で違う就業率85%

カナダの雇用率、失業率からまずはカナダの労働市場を見てみよう。カナダの2022年の就業率(25~54歳)は84.7%。これはカナダ生まれの労働者と移民では若干異なり、カナダ生まれは全体の数字よりやや高い86.3%、移民は82.2%である。移民の中でもカナダに来てから5年未満だと78%にまで数値は落ち、これだけで比較すると移民は若干就業率が低いのが事実だ。一方の失業率を見てみると、こちらも2022年では移民から5年未満の人が7.7%と最も多く、カナダ生まれは3.9%と移民の半分程度に収まっている。2020年にはパンデミックの影響で移民の失業率が10%前後の高い数字を出しており、ある意味氷河期の時代を経験したと言える。ちなみに学生(20~24歳)の雇用率では、2019年に52.4%を記録した後パンデミックにより一時45%に減少。昨年2022年には52%と元の水準に戻っている(Statistics Canadaによる)。

離職率はどうか。終身雇用制などほぼないように感じられるカナダ社会だが、産業によって離職率が極端に異なる。Statistics Canadaによると農業など1次産業はあまり職を離れることはしないようだが、ホテルや飲食業などサービス業は平均して4年で離職する傾向にある。全産業の平均としては、おおよそ8.5年の在籍を経て離職する人が多いようだ。

02. 女性就業率過去最多の81.5%

女性の社会進出は今や当たり前のこと。カナダでは2022年、雇用されている女性の数が過去最高になったことがStatistics Canadaの労働力調査で明らかになった。25~54歳の女性のうち81.5%が雇用状態にあり、これは1976年の統計開始以来最高の水準だった。また今年1~7月平均は81.8%と微増。この増加の一因は特に6歳未満の子どものいる女性の割合が増えたことにあるとされ、2019年より3.3%多い75.2%が仕事や事業をしていることがわかっている。また過去5年以内に入国した移民の女性の就業率は69.3%で、2019年より9.7%も増加した。移民は特に労働市場に入る傾向にあるため、移民増の波を受けてこのような結果になったとみられている。

出典:World Economic Forum「Global Gender Gap Report 2023」

働く女性が増える一方、男性との賃金に差があると指摘する声もある。World Economic Forumの2023年レポートによると、カナダは男女平等において146カ国中30位。労働市場への女性の参画は世界21位と悪くはないが、賃金の平等性は52位と良くない。OECD加盟国と比較した場合、他国より17%も男女間の差が大きいこともわかっている。それ以外にも、マネージャーなどの高官に就く女性の数でも世界65位と高くない評価を受けた。

03. カナダの月収世界15位の約$3000

やはり知りたいのはお金、ということで気になるカナダの給料事情だが、さまざまな世界の統計データを紹介している「World of Statistics」によると世界の平均月収を比較したときにカナダは15位の2988ドル(USドル、1ドル=1.34カナダドルで計算すると4015カナダドル)だと発表されている。

1位のスイス(6298ドル)や4位のアメリカ(4664ドル)と比べるとほぼ倍近い差があるが、16位のイギリス(2958ドル)や26位で2271ドルの日本よりはわずかに月収が高い。

これに加えて、職業によって給料に大きな差が出ることにも触れておきたい。カナダ政府が公表している437種の職業別の月収と時給(トロント地域をベース)を比較すると、最も高い給料がもらえるのは弁護士で月収11890ドル(中央値)。最高で35636ドルにもなるというから驚きだ。

時給で見ていくと、金融、通信系などのシニアマネージャーは64.6ドル(中央値)、最高で97.44ドルを1時間で稼ぐ(月収に換算すると約16370ドル)。

シニアマネージャー業は建設や貿易などどの業界においても時給が高い。人気のエンジニアやデータ分析系もトップクラスに入り、時給は45~90ドルほど。

日本人学生に特に人気のマーケティング系は、ポジションにもよるが時給35~75ドルほどのようだ。

04. 今年中に転職したい人 10人中4人

「終身雇用」という言葉が日本でも少しずつ古く感じられるようになってきたが、欧米諸国ではジョブチェンジが盛んに行われているイメージがある。もちろんカナダも例外ではない。

カナダ最大都市トロントで働く1000人以上を対象にしたRobert Half(人材紹介会社)による調査の結果、対象者の41%が2023年の間に転職を希望、もしくは予定しているという。

特にZ世代と呼ばれる25歳以下の若い世代では64%が、勤続2~4年の社員では56%が転職を前向きに考えており、年齢が若いことや1社に在籍した期間が短いことがなんの足枷にもならないということだろう。

マーケティング・クリエイティブな職場に務める人の51%、子どものいる親のうち56%の人も職を変えたいと思っているようだ。

転職を検討する理由としては、より高い給料、福利厚生、リモートワークを希望するからという3つが主に挙がった。自分の将来を見据え、より良い条件があればいつでも新しい環境へ身を置くことが当たり前の風潮になっている。

05. ワークビザとポスグラ発行数が過去最多

カナダには世界中から多くの学生たち、労働者の集まる移民大国だ。国内で働くとなると一般的にはワークビザ(ワークパーミット)を取得することになるが、昨年その数が2000年以降で最多の11万件以上であることがStatista2023の統計でわかった。2008~2009年にかけて一度ビザ発行数が11万以上に増えたがその後緩やかに減少し、2017年に4万6055件にまで落ち込んだ過去がある。しかしそこから右肩上がりに数を伸ばし、パンデミックの影響で一時増加率は下がったものの昨年11万9825件にまで急増した。

また、特定のカナダの大学やカレッジを卒業した学生であれば一定期間の就労許可がおりるPost Graduate Work Permit(PGWP)、通称ポスグラについても同様、過去最多ペースで受給者が増えている。IRCCのデータによると、2018年以降ポスグラ発行数は増え続け2021年に13万2937件、2022年はそれより約2000少ない13万897件だった。今年2月までの発行数は約3万5000件で、昨年より27%多いペースだという。カナダは積極的に移民を受け入れ、移民政策も次から次へと出ている状態だ。その政策にしたがって多くの学生や労働者がカナダで働く機会を増やしてきたと言えるだろう。

06. 永住権取得 1位IT系 2位医療系

カナダ永住を目指している人にとって気になるのは、どんな職業なら永住権に近づけるのかではないだろうか。カナダ永住権に関する情報を発信するLinkedIn上の「Canada Immigration News」が公表した永住権をゲットしやすい職業ランキングを紹介しよう。

1位はITプロフェッショナル、2位は医者や看護師などの医療系、3位はエンジニア。やはり昨今のIT系職業の需要は依然として高いようだ。医療従事者や介護系など、カナダに限らずどの国でも必要とされる重要な職である。4位に金融アナリスト、5位に電気技師などの熟練工がランクインしているのを見るに、当然ではあるが手に職をつけている方が有利である。

ではどんなスキルが求められているか。総合人材サービス会社のランスタッドによると、雇用主側が求めるスキル1位はデータ分析。ビッグデータの価値の高さや人工知能分野の盛り上がりを受け、その方面の知識を持つ人材の需要は高い。

2位は顧客を中心に考えられる力。カスタマーサービス力とも言えよう。3位は業務を計画する力、4位は事業開発と営業力、5位はコーデイングとプログラミングと続く。

IT職の需要が高い中でITスキルが必要とされているのは当然だが、会社に勤める上では基本的な“仕事力”も同様に求められていることがわかる。

07. 女性の産休・育休率75%

仕事選びの際、福利厚生も気になるところ。例えば産休や育休は女性にも男性にも大きく関わる権利だ。カナダでは州や会社によっても異なるが、基本的には52週間(延長最大78週間)、収入の55%(最大週650ドルまで)を受け取ることができる制度になっている。

現在のような産休・育休の概念が出てきた1997年には母親の取得率は平均41.5%だったが、現在は育休の週数が増えたことや保険制度導入により約75%にまで増えた(Statistics Canadaより)。

父親の場合は、徐々にその率が高まっているものの平均7.3%で最も高いのはケベック州の11.7%だった。

州独自の保険制度などで出産手当に加えて親手当などをもらうことができるカナダの産休・育休制度は、決して悪くないと言えるだろう。

実際2022年のOECDデータによると、カナダは世界で7番目に長い出産休暇・育児休暇を得ることができるようだ。1位フィンランドと2位ハンガリーが160週という桁違いの長さを見せているが、カナダの52週というのは世界的に見ると多い方なのだ。

08. 有給少ない?世界ワースト20入り

働く上で有給休暇の数も気になるところ。なんと、カナダは世界的に見て有給休暇の数が少ない国であるという残念な事実が浮かび上がってきた。

求人検索エンジンResume.ioによる2022年の調査によると、法定有給休暇日数と有給の祝日数を足した合計数でカナダは197カ国中ワースト20位に入っている。カナダの法定有給数は10日、有給の祝日数は9日の計19日。世界1位のイランが53日、2位のサンマリノ共和国が46日であるのと比べるとその差は歴然だ。

世界ワーストの国々を見てみると、ワースト1位のミクロネシア(9日)や2位のアメリカ(10日)よりはカナダも2倍の有給数があるとはいえ、トップの国々を見ると残念な気持ちにもなる。もちろんあくまで法的なものであり、会社によってその数も異なるだろうから一概にカナダの会社員は有給が取りにくいというわけではないことは付け加えておきたい。

09. ワークライフバランス世界平均より下

仕事に一生懸命になることは大事だが、私生活も大切にしたい。ワークライフバランスの重要性が叫ばれる中、OECDが加盟国のワークライフバランスのランキングを作成し公表した。今年発表されたレポートによると、カナダは総合的に見ると加盟国平均より少し低いレベルだと評価されている。

例えばフルタイム労働者が1日に持つ私生活の時間(食事、睡眠、家族・友人との交流など)について、カナダは平均14.6時間(加盟国中30位)でOECD平均の15時間を若干下回った。しかし会社員の長時間労働の割合についてはかなり少なく、平均10%のところカナダは3%のみと発表されている(加盟国中14%)。

また、例えばオンタリオ州では4、5歳児を対象にした全日制の幼稚園制度が整っていて、そのおかげで親は仕事に行きやすくなるという面もあると評価されている。改善の余地は残されているものの、一部の側面では非常に働きやすいシステムが出来上がっているようだ。

10. リモートワーク週平均1.7日は世界一

2020年に始まった新型コロナウイルスによるパンデミックを経て、世界中でリモート勤務が1つの選択肢として登場した。

ドイツのシンクタンク「info Institute」によると、カナダ人が世界で最も在宅勤務の自由度が高いという調査結果がある。カナダの在宅勤務は週平均1.7日で、イギリスの1.5日、アメリカの1.4日などよりやや多い。

カナダの労働者が望むのは週2.5日の在宅勤務であり、現実はそれより少なくなってしまっているものの平均で他の国を上回っているのだ。

またオンライン学習プラットフォーム「Preply」によると、リモートワークに最適な世界の都市ランキングにおいてはカナダの4都市がトップ50にランクインしている。生活の質と安全性の高さからオタワが世界9位、モントリオール27位、バンクーバー36位、そしてトロントが47位にランクインした。在宅勤務やワーケーションなどさまざまな働き方が生まれている今、リモートワークに寛容な社会はありがたいものだ。