「ピンチはチャンス」伊藤可奈さん カナダ歴:合計1年半|私のターニングポイント第24回

伊藤可奈さん
カナダ歴: 合計1年半

経歴 子供を持つ前はボストン、シカゴ、ロサンゼルスの美術館に勤務。妊娠・出産後、専業主婦に。現在は日本語講師、TORJAの記者、時々ヨガ講師。最近まではホームスクール教師も。

 伊藤さんのターニングポイントは、新型コロナウイルスによるパンデミックが中心にあるという。ターニングポイントが始まる直前、挫折のど真ん中にいたという伊藤さんのストーリーを聞いてみた。

ワンオペ育児と犬の世話で精一杯。
就活は面接にもありつけず

 2019年の秋、私の家族はロサンゼルスから主人の出身地のシカゴにUターン引っ越しました。主人はテレビ・映画業界のスタントコーディネーターで、仕事は大体アメリカ以外の国に半年から9ヶ月の勤務ばかり。私はワンオペ育児と犬の世話で精一杯で、せめて義家族の近くにいたら気が楽なのではと考え、引っ越しを決断しました。当時3歳だった娘をプリスクールに入れ、私は仕事探しを始めました。元美術館勤務だった私は同じ職種、または似た環境を探していましたが、全く面接にもありつけず。大学後も、大学院後も就活で苦労しましたが、やはり育児を選んだことが悪かったのかなと自分を責めたときは違うレベルの苦しさがありました。

「私が先生の代わりに教えられる」と
ホームスクールを開始

 その時ちょうどパンデミックが始まり、職探しも何もかも保留に。娘の学校から毎日善意で塗り絵などのプリントがメールで送られてきました。そのうち、「私が先生の代わりに教えられる」と思いホームスクールを本格的に始めたのがターニングポイントの始まりです。大学時代に教授のアシスタントやチューターをしていたので教えることは元から好きでした。その秋にはずっと計画していたヨガインストラクター資格習得コースをスタート。コロナのおかげでリモート学習になりベビーシッター代、交通費、移動時間も全て省けて喜んでいたとき、主人の仕事でトロントに滞在することも決まり、ラッキーな偶然が重なりました。

コロナという特別な状況を機に
家族みんな一緒にいようと決める

 以前は彼に同行しなかったのですが、コロナという特別な状況を機に家族みんな一緒にいようと決めました。初めてのトロント滞在で私はホームスクール教師と自分の学習を両立。娘にインスパイアされてキッズヨガ講師の資格も取りました。コロナ禍ならではの無料や低価格のリモートクラスなども「やって損はない」と思い、片っ端から受講しました。もちろんZoom授業の間ずっと娘が隣でおしゃべりやお絵描きをすることは日常茶飯事でしたが、娘から見て「お母さんも何か勉強している」という認識は彼女の学習のプラスになったと思います。

「キャリアチェンジしたんだな」と実感

 トロントからアメリカに帰国していた2021年の秋、また転機がありました。以前からお世話になっていたシカゴの日系団体がリモートで教えられる日本語会話の講師を探していることを発見。恥ずかしながら日本語講師の資格は持っていないのですが、興味があることを話したら「是非!」と背中を押されて、現在も週1で教えています。その後再び夫の仕事でトロントに戻ることになり、二つのリモートワークとホームスクールを掛け持ちしていました。給料はどうあれ、「キャリアチェンジしたんだな」と実感できるようになりました。

 そしてこの夏たまたまTORJAを見つけて感動して、記者や翻訳をやってみたいと思い応募しました。ずっと日本語で仕事がしたかったのですが自分は日本語力が弱いから、と避けてきました。でもこの数年間いろんなことを乗り越えて、カナダで見つけたこのチャンスは何かのサインだなと感じました。私のターニングポイントはまだ現在進行形で、常に新しい挑戦に恵まれています。

きっかけをくれたのは娘。
彼女が居たからこそ何でもやってみようという勇気が湧いた

 前職を離れ育児に専念したことを後悔したこともありましたが、育児をしてきたからこそ変われた自分もあることに気付かされました。最近娘はシカゴの学校に入学し、ヨガの仕事もリモートオプションがなくなりセーブすることになり、今は日本語の仕事に専念しています。この3年間のおかげで突如環境が変わっても、恐れずに前を向いていく自信がつきました。これからも自分のやってみたいと思ったことにたくさん挑戦していきたいと思います。

■ いまの自分に点数をつけるとしたら?

73点 夜更かししすぎ。細かいこと気にしすぎ。

■ 学生時代のエピソード

 小4まで田んぼに囲まれてのんびりと育ちました。それから親の都合でサンフランシスコに2年間住み、私の人生はがらりと変わりました。言葉の壁と習い事を全部諦めたのが辛かったです。帰国後、本当は日本の学校に戻りたかったのですが叶わず。親の強い希望で神戸にあるインターナショナルスクールに高校卒業まで通っていました。中高時代は周りの目ばかり気にして、周りに合わせるのに必死でした。大学進学直後、自分をもっと知るために休学。のちボストンにある大学に編入して美術史を学び、シカゴに移り美術館経営を知るため大学院でNPOマネジメントを学びました。

■ もし人生をやり直せるとしたら、いつ?

 高校生活の始まり。もっと大学進学のプロセスを早く知っておけば、周りに流されず自分に合った大学や専攻科目を早く考えられたかも。10代で自分の全てを知るのは無理ですが、19で出会った主人には人生をやり直しても出会いたいです。

■ 人生で大切なことは?

 好奇心。先入観にとらわれず、常に学ぶ姿勢でいることが大事だと思います。

■ 将来の夢・ライフプラン

 まずは日本語教師の資格習得。また大学院に入って日本語か翻訳の修士号、それか美術史の博士号を取りたい。高校レベルで止まっているスペイン語ももっと上手くなりたい。とにかく勉強したいことだらけですね。まだ海外で運転免許さえ取ってないですけど!

-座右の銘: やってみないとわからない
-好きな本: 村上春樹『ノルウェーの森』、原田マハ『暗幕のゲルニカ』、土井善晴『一汁一菜でよいという提案』
-尊敬する人:
-感謝している人と一言メッセージ: 私の最大の理解者の夫。いい日も悪い日もそばにいてくれることに感謝です
-カナダの好きなところ: 治安がいい。人が優しい。クラフトビールが美味しい